公的な保障と生命保険について

資産形成 上流社会 

勧められるままに生命保険に加入するのではなく、公的な保障を踏まえて無駄なく、自分に合った保険を選択するポイントについてお伝えします。

生命保険は専門用語が多く、契約条件については約款に細かく書いていますが、分量が多く契約前に確認することが困難です。

多くの人が、保険のセールストークを聞いて保険に加入しています。

ただ気を付けなければならない点があります。保険セールスは保険の契約高や保険種類に応じて、インセンティブが収入になる仕組みです。

来店型の保険の相談窓口も例外ではありません。

自分の補償内容について、月々の保険料について、適切なのかどうか悩んでいる人にとって、保険セールスに相談することは、必ずしも満足の得られる答えが返ってくるとは限りません。

保険のセールスの目的は、保険契約獲得による手数料収入を得ることだからです。

この矛盾は昔からあります。

筆者はMDRT成績基準達成者(全世界74か国上位1%の成績基準達成、年間手数料収入2000万以上達成)で、保険業界については精通しています。

確かにお客様の保険に関する課題解決を優先するように、保険会社もセールスに教育をしています。

しかし、自分に合った保障内容を知りたい顧客と、手数料収入で生計を立てている保険セールスとの利害関係の矛盾は存在しています。

現在、筆者は保険を一切販売していません。保険に悩んでいる人向けに、純粋に悩みを解決する情報を提供することがこの記事の目的です。

公的な保障について

まず、自分の加入している保障の内容の把握が必要です。保障を大まかにいえば3種類あります。

①公的な保障 ③損害保険 ③生命保険

意外と知られていないのですが、上記3つには重複している保障があります。保険を見直す場合のステップとして、すでに重複している保障を把握することが第一歩です。

公的な保障の主要なものは以下のものがあげられます

①国民年金②厚生年金③労災保険④健康保険⑤雇用保険

生命保険は生涯の買い物の中で、住居に次いで高額な買い物だといわれています。

人生のリスク対策に生命保険に加入するのであれば、まず最低限、概要であってもよいから公的に保障について知っておくべきでしょう。

公的な保障で足りない部分を生命保険で補う考え方が合理的です。

障害年金と遺族年金

①国民年金②厚生年金については、老後自分に支給される年金であることはご存じでしょう。

厚生年金や国民年金には、障害年金や遺族年金など生命保険と同じ機能があることは意外と知られていません。

障害年金

障害年金は、老齢年金支給の年齢に達していなくても、障害状態が認定されれば、年金や一時金が支給されます。労災や損害保険と違い、病気が原因の障害状態でも支給されます。

損害保険は、事故が原因などの一定の要件があります。

労災保険は公的な保障の一種です。業務上の事故による傷病に対して支給されます。従業員を対象にしていますが、特別加入制度があり役員や経営経営者、個人事業主も加入することができます。

遺族年金

遺族年金は、被保険者が亡くなった時に、生計を維持していた配偶者、子に支給されます。要件を満たせば、内縁の妻にも支給されます。

生命保険との重複について

障害年金も、遺族年金も、掛け捨ての生命保険と重複する機能があること知っておくと良いでしょう。公的な保障も万能ではないですし、場合によっては十分であるとは言えませんが、いざというときにも知らないがゆえにもらい損ねることもありますので、存在を知っておくべきでしょう。

生命保険に加入できない持病をもった自営業の方が、法人を設立して厚生年金に加入されました。その方は、持病が理由で亡くなったのですが、支給要件を満たしていたため遺族厚生年金が支給されることになりました。

厚生遺族年金には、生命保険が加入できない方(持病を持った方)の救済機能があります。

ただし遺族厚生年金には支給要件があります。(2020年8月時点の要件 変更の可能性あり)

遺族厚生年金の支給要件

年金の被保険者期間での疾病で、初診から5年以内の死亡などの条件があり、正しくは日本年金機構のサイトをご確認ください。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

国民年金と厚生年金

障害年金、遺族年金共に国民年金及び厚生年金にあります。

ただ、自営業であったり専業主婦がもらえる国民年金の支給額は、厚生労働省が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金が平均月額で5万5千円、厚生年金は14万7千円」という実績が公開されています。

特に国民年金は40年払ったとしても、月額支給額は65,141円です。(令和2年時点)これだけでは十分な額であるとは言えません。

また年金は世代間扶養であるため、現在の支給されている老齢年金の原資は、現役世代の保険料及び国庫負担です。

少子高齢化の中で、将来の給付について減額や、支給年齢の引き上げの不安は確かにあります。

国民年金のみの自営業の方は、そのほか自助努力が必要といえます。遺族年金や障害年金についても、厚生年金や共済年金からも支給される会社員や公務員の方よりも公的な保障は充実していません。

年金の3階建ての図
年金の3階建ての図

国民年金の損得計算

国民年金は払い損なのでしょうか?

国民年金の保険料は令和2年度16,540円です。国民年金を40年払ったとして、16,540円×12ヵ月×40年=7,939,200円です。これを月額支給額65,141円で割ると480ヵ月=121ヵ月、約10年です。

つまり60歳から10年もらえれば、元を取れる計算になります。

(国民年金の保険料と支給額は将来にわたって変動しますので、仮定の話です)

平均寿命が80歳を超えることを考えますと、平均すると得をするといえます。これは国庫負担があるからです。

厚生年金の損得計算

厚生年金は、そもそも会社負担分が自己負担と同額ありますので、多くの場合は、自己負担する厚生年金保険料に比べ、年金支給額はお得になります。加えて、厚生年金は国民年金と同様に経費になりますので、所得税の低減効果があります。

その他、障害厚生年金、遺族厚生年金などの保険の機能もあることを考えれば、現行の制度が続くと仮定するのであれば、厚生年金は会社員にとって加入すべき制度といえましょう。

労働保険

公的な保障はその他、労働保険があります。労働保険には2つあって、失業保険と、労災保険です。

失業保険

失業保険は、それほど多額の給付があるわけではありませんが、離職後、収入が亡くなった時には、かなり助かります。また、出産手当、育児手当など、一時的に職を離れて収入が下がるのをカバーしてくれる手当があります。

労災保険

労災保険は、条件によってはかなり多額の給付があります。注意点としては労働災害認定が必要であることです。特に通勤災害などは、条件がありますので注意が必要です。

健康保険の高額療養費

医療保険を検討する際に、知っておく必要があるのが、公的保障である高額療養費です。同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

自己負担限度額は、世帯収入にもよりますが、最大:252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1%)~最小35,400円までとなります。なお高額療養費が年4か月以上にわたる場合は、さらに負担額が減ります。

詳しくは以下のサイトをご参考ください。

高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

「協会けんぽ ホームページ」

この制度によって、医療費の自己負担限度額は、家計が破綻しないような水準にとどまるように配慮されていることがわかります。

高額療養費の適用範囲は、健康保険適用の治療行為に限定されます。保険適用外の治療行為には適用されませんので注意してください。

以上のように、いざというときのためのリスク管理で、実はかなり頼りになるのは公的な保障なのです。生命保険などの自助努力は、公的保障のあくまでも補完要素であることをまず認識すべきではないでしょうか。

医療保険の必要性

では民間の医療保険は必要なのでしょうか。ちょっとシミュレーションしてみます。

仮に、月に5000円の医療保険をかけていたとします。この水準の保険料だと、たいていは掛け捨てです。掛け捨てでない場合も、返金される割合は、かけた保険料よりも大幅に少ない場合がほとんどです。

医療保険は終身タイプだとします。20歳で加入して80歳までかけたとすれば40年です。

5000円(月の保険料)×12か月×40年=240万(生涯の支払保険料)です。

医療費は高額療養費の制度がありますので、入院で生涯で240万も医療負担はあるでしょうか。(医療保険は入院で給付がほとんどです。通院だけで出る場合はあまりありません)

240万も医療保険から給付を受ける機会はあるのでしょうか

昨今の健康保険の負担増から、保険点数の関係もあり病院側もあまり長い入院はさせてくれません。入院で保険給付が日額1万とします。手術で20万給付されるとします。2週間の入院でも10日×1万+20万=30万の医療保険の給付です。

10日の入院を、生涯で8回すれば240万です。生涯8回(1回手術あり10日)の入院は多いほうではないでしょうか。

すなわち医療保険は大半の人が損をするという見方もあります。

単純に、だから医療保険は不要だとも言えません。個人事業主にとってみれば、入院中は収入がないのが普通ですから、所得補償の意味合いもあります。

保険は、他人が不要だと断言することが難しい商品です。ある人にとっては不要でも、それによって助かる人もいるわけですから。

私ならばということになりますが、240万貯金が維持できれば、医療保険は加入しません。240万も給付を受けれるのは、がん保険など疾病を限定した医療保険を除いてあまりないからです。

生命保険の選び方のポイント

生命保険で公的な保障を補完する上で、人や状況によって優先順位が違いますし、価値観もあります。個別の事情や価値観をしっかりヒアリングして、無駄なく提案してくれるのが、良心的な保険の営業といえます。

保険の営業に頼らないで自分に合った保険をネットで探す場合でも、上記のような公的な保障を踏まえ、保険を検討すべきではないでしょうか。

次の投稿では、必要保障額(生命保険の被保険者の死亡保険金額)について書きます。

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