リーダーシップとは、組織をけん引する能力のことをさします。組織の目的を本質的に理解し、道しるべである目標設定を行います。目標達成へのシナリオや構想を考え、課題に対しては強い意志をもって組織を解決策に導きます。
ファシリテーションは、組織や参加者の活性化、協働を促進させるリーダーの持つ能力のひとつです。打合せや会議の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理します。参加者の認識の一致を確認し、合意の形成や相互理解を促進します。
本投稿では、組織をけん引するリーダーシップと、組織を活性化するファシリテーション力を駆使して、組織の成果を上げる方法について記載します。
組織とリーダーシップ
組織は、目的、協働の意思、コミュニケーションで構成されています。組織の目的のベクトルは、最終的には社会や顧客にあるべきです。
上の図ではトップダウンではなく、顧客に近いプレイヤーをマネジメントやトップが支える図にしています。
ピーター・ドラッカー(著名な現代経営学・マネジメントの発明者)は、リーダーシップを以下の3つに定義をしています。
フォロワーシップの存在
「リーダーは、フォロワーシップがいるということです」と定義しています。日頃の言動や仕事ぶりから他者から信頼され、評価されるものです。強制されるのではなく、主体的に付き従うものをフォロワーシップといいます。
リーダーシップは仕事
リーダーは「組織の使命・目的を明確にメンバーに伝えます。(目的の道筋に設けている)目標を定め、優先順位の基準を決めてその体制を維持していく者です」と定義しています。仕事を成し遂げる者こそ真のリーダーであり、その者の行動こそがリーダーシップです。
リーダーシップは責任
リーダーとは、「地位や特権ではなく責任です。優れたリーダーは、常に厳しいものです。事がうまくいかないとき、その失敗を人のせいにしません。」と定義しています。
リーダーシップはドラッカーの以上の定義によると、役職ではありません。組織を構成するすべてのメンバーがリーダーシップを発揮する機会がある組織が、素晴らしい成果を上げることができます。
ファシリテーション
ファシリテーションは、会議やプロジェクトの場で組織や参加者の意見を引き出し、まとめる手法です。合意形成や相互理解を通じて、自律的に課題解決を行うようリーダーシップの一つです。
ファシリテーターは、組織や参加者に対して情熱をもって、達成のためにファシリテーションを行う必要があります。
ファシリテーションの手法には以下のものがあります。
ブレーンストーミング(ブレスト)
アメリカの広告代理店BBDO社の副社長であるアレックス・F・オズボーンが考案しました。
創造性開発のための、会議形式の技法です。
あるテーマをめぐって、既成概念にとらわれず、自由奔放にアイデアを出し合います。
通常、5~10名のグループで実施します。
ブレーンストーミングに4つの決まりがあります。
質より量を意識する(数で勝負する。量の中から質の良いものが生まれる)
アイデアを組み合わせるためには、大量のアイデアが必要になります。ブレストでは「質より量」を意識してどんどん発言します。様々な角度から、多くのアイデアを出します。
一般的な考え方・アイデアはもちろん、一般的でなく新規性のある考え方・アイデアまであらゆる提案を歓迎します。
結論厳禁(どんな意見が出てきても、それを批判してはいけない)
実現不可能なアイデアが発言されることもありますが、それを批判してはいけません。なぜなら、別のアイデアに発展する可能性があるからです。自由なアイデアだしを制限するような、批判を含む判断・結論はしません。
判断・結論は、ブレインストーミングの次の段階でおこないます。ただし可能性を広く抽出するための質問や意見ならば、その場で自由に発言するようにします。
たとえば「人手が足りないので、できない」とこの段階では否定するべきではありません。「人手が足りないがどう対応するのか」と可能性を広げる発言はどんどん推奨します。
自由奔放(奔放な発想を歓迎し、とっぴな意見でもかまわない)
誰もが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視します。新規性のある発明はたいてい最初は笑いものにされる事がありますが、そういった提案こそを重視します。
結合改善(アイディアを結合し発展させる)
別々のアイデアをくっつけたり一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していきます。他人の意見に便乗することが推奨されます。
アイデアがある程度出てきたら、既存のアイデアを組み合わせて問題解決できないか考えてみましょう。どう考えても実現不可能だったアイデアが、意外な形でいきてくることがあります。
出てきたアイデアを結合し、改善して、さらに発展させます。
ブレストの効果
特定の問題や課題に対して、解決策が出せます。
創造性が開発されます。
チームワークが強化されます。
KJ法
KJ法は、1967年、文化人類学者の川喜田二郎氏が著書『発想法』の中で効果的な研究、研修方法であると紹介しました。
フィールドワークのデータや、ブレインストーミングにより様々なアイディア出しを行った後、創出されたデータやアイディアを統合します。系統ごとに分類、整理、分析し、図解などを用いて論文などにまとめていく方法です。
KJ法は川喜田二郎氏のイニシャルから来います。創造的問題解決や新たな発想を生み出すために行われます。
川喜田二郎氏が著書『発想法』に、プロセスが明確に記されています。プロセスの随所で細かい注意が必要であり、実際に使いこなすためには訓練が必要とされています。
ステップ1(データ化)
テーマについて思いついたことをカードに書き出します。1つのデータは1枚のカードに要約して記述します。(複数は書き込まみません)
ステップ2(整頓化)
集まったカードを先入観をもたずに分類します。多くのカードの中から、似通ったものをいくつかのグループにまとめます。ラベルカードを作り、それぞれのグループに見出しをつけます。グループの中の、グループを作り出してもよいです。
ステップ3(図解化)
グループ化されたカードを、1枚の大きな紙の上に配置して、図解を作成します。近いと感じられたカード同志を近くに置くようにします。カードやグループの間の関係を示したい時には、それらの間に関係線を引くようにします。
注意点としては、関係線は隣同志の間でしか引いてはいけません。隣に置かれたカードだけでなく、その他のカードとも関係を持つ場合があります。隣に置けるカードの数は限られるので、重要な関係だけを選び出す作業が必要となります。重要な関係を選ぶ作業を行なうことによって、問題の本質が認識されます。
ステップ4(文書化)
出発点のカードを1枚選び、隣のカードづたいに全てのカードに書かれた内容を、ひとふで書きのようにつらねていきます。この作業で、カードに書かれた内容全体が文章で表現されます。
ワールドカフェ
ワールドカフェは、1995年にアメリカ合衆国でファニータ・ブラウンとデイヴィッド・アイザックスの偶然の機会が、始まりとされています。
主体性と創造性を高める話し合いのエッセンスを、抽出してまとめたものを行う状況になったとされています。
フォーマルな会議よりも、移動も自由なオープンな話し合いのほうが発想が豊かになり、意見も活発になるという考え方を取り入れたファシリテーションの手法です。
ワールド・カフェとは、その名のとおり『カフェ』のようなリラックスした雰囲気の中で、少人数に分かれたテーブルで自由な対話を行います。
時間を区切って、他のテーブルとメンバーをシャッフルして対話を続けることにより、参加した全員の意見や知識を集めることができます。
ワールドカフェの進め方
1ラウンド
参加者全員にテーマとなる「問い」を発表し、共有します。小グループに別れて、「問い」についてディスカッションを行います。得られたアイデアは、どんどん模造紙に書いていきます。付箋紙に書いて貼り付ける場合もあります。
2ラウンド
1人を除いてほかのメンバーは「旅人」として移動しグループを再構成します。その際に残っていた1人(ホスト)は自グループがどういったアイデアが出たのか新しいグループのメンバーに説明を行います。新たなグループで議論を深める話し合いを行います。
3ラウンド
「旅人」が元のグループに戻ります。旅先で得たアイディアを話し合います。残っていた「ホスト」が中心となって議論をまとめます。2ラウンド、3ラウンドのプロセスを繰り返すことがあります。
4ラウンド
グループごとに発表を行います。そして、全員が良かったと思うアイディアを選んで、模造紙に記載して、全体の発表を行います。
ワールドカフェの準備
トーキング・オブジェクト
トーキングオブジェクトは石、小さなぬいぐるみ、お手玉など手に取りやすいものを選び、テーブルの中央に置きます。発言したい人がそれを手に取り、発言が終わったら元の位置に戻すという形で利用します。持っていない人はしっかり話を聴きます。
ひとりひとりの話を大切に扱い、繋げていくことの意味を感じさせるためにあります。
発言の少ない人に渡すことで、発言を促すこともでき、一人が時間を独り占めして話し続ける状況を避けることができます。
おもてなしの心の演出
おもてなしの心を込めて会場やテーブルの上に、簡単につまめるお菓子などを置きます。
カフェの雰囲気を演出するために季節を感じられる花や絵ハガキおいてもよいでしょう。
おもちゃなどを置いても開始時間まで参加者同士の話題にもなります
ワールドカフェのエチケット
話をよく聴きます
自分だけが話さないように気を付けます。他の人の話を素直な気持ちで聴きましょう。
質問して広げます
わからないことや理解できないことはどんどん質問します。質問することで理解が深まり、対話が広がります
テーマに集中します
テーマを意識して話をするように心がけます。著しい脱線は限られた対話の時間を浪費してしまいます。テーマにフォーカスした深い洞察と対話により、その場が活性化します。
否定しないで、受け止めます。
ワールド・カフェは対等な関係で行います。議論の場でなく、多様な意見を受け入れ、それに触発される自分自身を楽しむ場です。
アイデアや思いついたことを書く、描く、つなぐ
思いついたことや話したいことなどのキーワードを書いたり絵を描いたりしながら、対話を残します。
必要ならばそれらを線でつないで関係を示すと新しい発見があります。
対話を楽しみます
リラックスして話すようにします。その場に出てくる話と、参加者との対話を楽しように心がけます。
正解も間違いもなく、結論を無理にまとめる必要はありません。一人ひとりの発言が誰かの気づきや新たな視点の発見につながるようにします。
まとめ
組織をけん引するリーダーシップと、活性化するファシリテーションを見てきました。
どちらにおいても、特定の人が活躍するのではなく、個人個人の力を組織としてどう活用していくかが大事です。
みんなが主役となって、主体性を発揮するようにすることが組織力向上のカギとなります。
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