コーチングとティーチング ビジネス活用スキル

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コーチングとは

「コーチング」とは、人の目標達成を支援することです。コーチングは人を観察して、質問し、話を聴き、時には提案をして、対話を通じて人の内面にある答えを引き出すことによって、人の目的・目標を達成します。本投稿ではコーチングとティーチング違いや、ビジネスの活用について記載します。

コーチングの根底にあるのは、以下の考え方です。

  • 人の可能性を追求して信じる。
  • 答えはその人の中にある」、解決策を導き出す能力開発を行う。
  • 人の主体性や自主性を尊重し、新しい価値観や答えを創出するため支援を行う.

コーチングでは、知識や答えを教えることはしません。対話や質問を通じて相手に気づきをもたらしたり、自律性や考えを引き出します。

コーチング

コーチングとティーチングの違い

ティーチングの定義

ティーチングは、経験や知識の豊富な人が、経験の浅い人に教える手法です。コミュニケーションとしては、先生から生徒への一方通行となります

ティーチングとコーチングの違いは以下の通りです。

コーチングとティーチング
コーチングとティーチング

コーチングの歴史・認証資格

「コーチ」は、中世ヨーロッパの交通の要所で馬車の産地だったハンガリーの「コチ」(Kocs)に由来し、馬車のことを指しました。馬車で人を望むところに送り届けることから、「人の目的・目標達成を支援する」意味となりました。

1950年代、ハーバード大学助教授のMyles Mace(マイルズ・ メイス)氏が著書「The Growth and Development of Executives」(1959年)の中で「マネジメントの中心は人間である」「人間中心のマネジメントの中でコーチングは重要なスキルである」としました。

日本においてコーティングは、1992年に設立されたコーチ養成機関の一つ「コーチ・ユー」を買収した「コーチ・エィ」が、日本初のコーチ養成機関として、体系的かつ体験的に学ぶ「コーチ・トレーニング・ プログラム (CTP)」の提供を1997年にスタートさせました。

以降コーチングは、マネジメント、教育、医療、各種専門職などさまざまな領域で学ばれ、活用されています。

コーチングを行う上で必須ではありませんが、体系立てたコーチングの理論やスキルを習得していることの証明として以下の資格があります。

  • 一般財団法人生涯学習開発財団認定資格(コーチ・エィ アカデミア)
  • 国際コーチング連盟認定資格(国内で1,098名の資格取得者 2023年6月時点)
コーチングイメージ

コーチングのメリット・効果

コーチングは先導や強制することなく、相手の中から新たな視点、気づきや答えを引き出し、自発的な行動を促すことができます。

適切な質問をいれながら相手の話を傾聴し、承認を行うことで、相手のモチベーションを高めることができます。

相手は、自分で導き出した答えであるがために、責任感をもって目標達成への施策を実行してくれるようになります。

コーチングのデメリット・注意点

コーチングは、対話を通じて行うために多人数に対して一斉に行うことはできません。個別に行うために、コーチを行う人に手間がかかります。

また、コーチングは相手の中にある英知や動機付けを呼び覚ますことに狙いにあるために、特に、相手側に知識や経験が乏しい場合には、効果が出るまでに時間がかかります。

コーチングは継続し徐々に効果を上げていきます。プログラムや人によって変わりますが、3か月から3年間の期間の中で、変化や成長を期待します。

1997年の研究結果(Baruch college researcher Gerald Olivero, K.Denise Bane, Richard E.Kopelman)によると、1回の研修では、マネージャー生産性の向上28%のところ、事後のフォローアップやコーチングを入れた結果、生産性は80%まで上がったといいます。

支援する

コーチングのビジネス活用

コーチングマネジメント 1 on 1ミーティング 

従来型のマネジメントは、上司のスキル、知識、成功体験を部下に指導するティーチング型が多くみられました。しかし現代においては、時代環境や技術変動のスピードが速く、過去の成功体験や知識が通用しなくなってきています。これからのマネジメントに求められるのは、ティーチングのみならず、部下の若い感性や、時代適応力を引き出すコーチング型のマネジメントです。

コーチング型のマネジメント実践には、上司と部下との対話を定期的に行う1 on 1ミーティングが有効です。1 on 1ミーティングについては下記投稿もご参考ください。

コンサルティング 経営支援

目標達成のためのPJ支援、新規事業開発、業務改善プロジェクトとコーチングが適用できるコンサルティングや経営支援のテーマは幅広く存在します。

コンサルティング及び経営支援においては、お客様の業種や企業ごとの特性に応じたアプローチが重要です。また固有の業務自体は、お客様のほうが熟知しています。客観的な視点や、他社事例を活用しながら、お客様自体の中にある解決策を引き出すコーチングが有効な手段です。

特に経営者が、経営や自分の業界のプロフェッショナルであると自負しているケースにおいては、こちらから知識を伝授するティーチングよりも、深く話を聴いて課題解決を行うコーチングを活用するとよいでしょう。

社員教育 

経営者、マネジメント研修において、コーチングマネジメントは、組織や部下の力を引き出すうえで有効です。

部下の管理のみならず、部下の持つ将来へのビジョン、能力、自発性を引き出し、組織のビジョンや目標との融合と相乗効果を生み出すことは、人材流出を防ぎ組織力を高めます。

これからの複雑化・高度化する時代においては、コーチング型マネジメントが求められています。

一般社員の立場からも、同僚や他部門、取引先との折衝において、コーチング力はビジネスを円滑にすすめるための有力なスキルとなります。

コーチングへの道

コーチングの習得・スキル

傾聴

コーチングの基本は、相手の話を聴くことです。聴くとは、あるがままに素直に相手を理解しようとする話の聴き方です。相手の立場になって共感し、受容する傾聴は、対人関係のあらゆるシーンにおいて有効な汎用的コミュニケーションスキルです。

コーチングの相手は、傾聴によってあるがままの自分の姿が共感され、受容されることに安心感を覚えて、心が開かれるようになります。

傾聴については下記投稿もご参考ください。

質問力

傾聴によって心を開き、相手自身の心の中にある答えや、モチベーションを引き出すために話を展開するうえで活用されるのが質問力です。

コーチングは、質問を通じて相手に気づきを与えます。質問によってコーチングの相手は視野を広げたり、別の角度から物事を考えられたりするようになります。

自分から答えを教えるティーチングと違い、相手から答えを引き出すコーチングは、時間をかけても、質問を通じてじっくり相手に考えさせ、答えを導くまで待つようにします。

外材化の質問

外在化とは、問題を外側から捉えられるように(客観視)することで、問題への対処可能性を上げ、解決しようとする取り組みです。

①「本年度の業績はどうだった」

①の質問は、質問者が聞きたいことを聞いているだけです。

②「どうして業績が悪かったのだ」

②の場合、原因を追究し、改善を図りたいとしても、質問された側は、非難されていると感じます。萎縮してしまい、成長の機会を失うこととなりかねません。

③「本年度の業績が悪かったのは、あなたはどのような原因だと分析しますか?」

③の質問だと、質問された側は気持ちの余裕をもって、業績悪化の原因を客観的に分析することができるでしょう。

不都合な事象や失敗を、客観的に分析できるよう導くことを「問題の外在化」と言います。コーチングは、問題の外在化の質問を行い、気付きの機会を与えます。

質問力については下記投稿もご参考ください。

承認

承認(Acknowledgement)」は、「存在に気づき、伝える」ことです。メンバーや部下は承認されることによって、自己肯定感を得られ、周囲との前向きな関係を築くことができます。承認は、コーチングの重要なプロセスです。

承認するためには、相手のことをよく観察し、話を聴き、強みや特徴を把握します。そして事実として伝えることによって、相手の自発性、やる気を引き出します。

コーチングにおける承認には以下のがあげられます。

存在承認

その人の存在自体を認めることです。その人は「私はここで受け入れられている」と感じられます。

存在承認としての例としては、「挨拶」、「名前で呼ぶ」、「いてくれて助かる」です。

行動承認

その人の行動そのものを承認します。結果や質ではなく、発言や挑戦する行動を承認を伝えることで、「私の行動を見てくれている」と感じられます。

行動承認の例としては、「積極的に発言してくれたので、会議が活発化したよ」「精力的に営業の訪問をしてるのは、すばらしいね」などです。

成果承認

その人の成果や結果を承認します。プロセスや行動を見ていなくても、結果がわかれば承認することができます。

成果承認の例としては、「予算を達成したね。おめでとう」「イベントは大成功だったね。アンケートも好評だったよ」などです。

成長承認

時間軸で、過去と現在を比べてその人がどのくらい成長できたかを承認します。他人と比較するよりも過去の自分と比べることで、進んでいる方向が正しいか確認することができます。

例としては、「料理の味が前よりも美味しくなったよ」「以前に比べて、イベント全般が任せられるようになった」などです。

まとめ

コーチングのアプローチは、コミュニケーションスキルの向上と多くの共通点(傾聴、承認等)があります。時代が変遷しても、場面が変わっても、対人関係を円滑にするコミュニケーション力は、常に求められています。相手の目的や目標を支援するコーチングスキルは、今後ますますビジネスや社会において重要視されます。

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