1on1ミーティングは事前にアジェンダを用意して、効果的に上司と部下が定期的に1対1で対話を行います。1on1ミーティングの目的は、部下のマネジメントと上司・部下の相互成長です。1on1ミーティングで活用できるアジェンダの事例を紹介します。
インテル、マイクロソフト、グーグル、ヤフーなどの外資系IT企業や、パナソニック、日清食品、ソニー、クックパッドなど日本企業にも導入されています。
本投稿では目的意識を明確にして、1on1ミーティングをマネジメントの有効な手段として活用し、部下と上司双方が成長につながるような方法と活用事例について考察します。
1on1ミーティング 目的 上司部下の相互成長 エンゲージメント向上
上司は人材育成のスキルを伸ばします、部下は、自らの気づきによる自発的行動を行います。上司と部下が相互に高めあうことが、1on1ミーティングの重要な目的です。

1 on 1ミーティングを行うと、上司と部下とのコミュニケーションが円滑となます。職場における人間関係がよくなり、社員エンゲージメント(忠誠心)が向上します。
そのためにも、上司の方は、部下のを指導の場と気負わず、部下の悩みを聞いたり一緒に業務課題を解決する支援をする姿勢が重要です。
社員エンゲージメントについては、下記投稿もご参考ください。
1 on 1ミーティングの目的
上司と部下の相互成長以外の、主要な目的は以下の通りです。
- 離職率の低下と生産性向上
- 公私における相互理解
- 心身の健康チェック
- モチベーションの向上
- 業務及び組織課題の改善方法の検討
- 業務目的の再確認、目標の設定と評価
- キャリアアップ支援、能力開発
- 会社方針及び経営戦略の伝達
1 on 1の効果を持続させるために、目的意識をもって記録を取り、上司と部下双方とって魅力的かつ意義のあるアジェンダ設定を心がけます。
1 on 1 ミーティングのアジェンダ事例
アジェンダ事例(業務について)
現状の業務課題について話し合います。互いの課題認識のすり合わせが重要です
・前回1 on 1 ミーティング取り決め事項の実施状況(部下)
・良かった点、今後さらに良くするためのアドバイス(上司)
・次回のミーティングまでの業務目標(部下)
・フリーディスカッション(上司・部下)
・次回ミーティングまでのコミットメント(部下)
シンプルですが、繰り返し使えます。上司はダメ出しをしないようにします。また業務の進捗を確認するときに、プレッシャーをかけないようにします。部下が委縮してしまい、1 on 1ミーティングの効果が薄れるからです。上司に対する要望事項や業務課題を聞き、前向きに部下を支援する姿勢を貫きます。
アジェンダ事例(キャリア・部下の成長)
ありたい姿、あるべき姿を思い描くことは、部下の成長にとって欠かせない要素です。
・自分の強みについて(部下)
・部下が認識している強みについての見解や助言
・将来のあるべき姿(部下)
・あるべき姿に対する助言、見本とすべき人物像について(上司)
・あるべき姿に対する現状の姿の認識(部下)
・客観的に見た部下の現在の姿と助言(上司)
・あるべき姿に対する現状の課題と今後の取り組み(フリーディスカッション)
・成長への取り組み(部下)
あるべき姿を引き出すために、上司は部下との信頼関係を結ばなければなりません。漠然としている場合は具体化するために、ミーティングを重ね、部下の意欲を引き出す必要があります。
あるべき姿の引き出し方については下記投稿もご参考ください。
アジェンダ事例(プライベートや価値観)
プライベートについては、すべて話したくない場合もあり距離感に対する配慮は必要です。部下の価値観を理解して、よりよい関係づくりを目指すという目的をお互いに認識することが重要です。会話をスムーズにするために「週末何をしていたのか」という事実があり、こたえられやすい事項からスタートする方法もあります。
・最近の楽しかったこと、悲しかったこと(部下)
・フリーディスカッション(上司・部下)
・趣味や、熱心に取り組んでいることについて(部下)
・フリーディスカッション(上司・部下)
・大切にしていること、こだわりについて(部下)
・フリーディスカッション(上司・部下)
フリーディスカッションは、できるだけ部下の目線で寄り添う形にします。但し、雑談に終わらないように、部下の価値観までの理解が重要です。そのため上司は部下の考え方を受容して、会話を深めていきます。部下の感覚や考え方の根源にある価値観を理解に努める姿勢です。
アジェンダ事例(心身の健康・モチベーションについて)
心身の健康・モチベーションの1 on 1は、部下自身の問題のアジェンダです。部下が主体的に話をするような場を心がけることがより必要です。
・業務過多になっていないか、体調の変化を感じていないか
・仕事は会社で完結できているのか、家に持ち帰っていないのか
・業務上不安や心配になっていることはないか
・社内で承認されていると感じられているのか、上司は見てくれていると感じられているか
上司は、部下の育成を行うために、部下に自発的に成長の意欲を持ってもらうためのコーチングと傾聴のスキルを身につけます。1on1ミーティングの目的は部下の育成ですが、部下を育成する上司こそが、人材育成の力をつけなければなりません。1on1ミーティングはそのための絶好の機会なのです。
傾聴のスキルについては下記投稿もご参考ください。
アジェンダ事例(目標設定・評価)
業務の目標に関する1 on 1ミーティングは、組織としての目的・目標と、部下の自発的な動機付けとの調整が必要です。決められた目標を押し付けるだけでは、部下の力を引き出すことにはなりません。部下が納得をして、前向きに取り組むことができる目標設定と評価を心がけます。
・部下自身が自律的に立てた目標のヒアリング
・目標に対する課題と助言
・会社・組織方針の伝達と意見交換
・組織目標と自律的な目標とのすり合わせ
・よりよく業務目標を達成するために、部下と上司のアクションプラン
部下の立場を理解しながら、組織としての要求事項に至る背景や必要性も伝え、双方がWin-Winとなれるような取り組み姿勢になるようにします。
1 on 1の背景
VUCA時代
Volatility(変動性・不安定さ)Uncertainty(不確実性・不確定さ)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとって、VUCA時代と言われています。
先行きが不透明で、将来の予測が難しい現代は、上司が必ずしも正解を持っているとは限りません。
また、インターネット社会においては、若者がより情報通である場合もあります。上司と部下が相互尊重し、力を合わせて課題解決に努めていく必要性が高まっています。
少子高齢化社会
出生率が低下し、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は、ピークであった1995年以降減少を続けています。経営を存続させるために、労働力確保と一人当たりの生産性を高めなければなりません。
上司と部下とのコミュニケーションにおける1 on 1 ミーティング
緊急度が高く、重要な事柄は、リアルタイムで報連相(報告・連絡・相談)を行います。緊急度が高いが重要でないものは、事後報告を行います。重要でも緊急でもない事柄は、部下に任せます。

重要度が高く、緊急度が高くないものは、定期的な1 on 1 ミーティングで上司と部下がコミュニケーションして、問題解決と育成を行う考え方です。
報告・連絡・相談については、下記投稿もご参考ください。

1 on 1 ミーティングの事例
インテルの事例(アジェンダの有効活用)
1on1ミーティングが注目されたのは、世界トップの半導体メーカ、インテルの元CEOアンドリュー・グローブ氏(インテルの3番目の社員)の著書「人を育て、成果を最大にするマネジメント」がきっかけでした。
以下参照文献:アンドリュー・グローブ氏「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」
アンドリュー・グローブ氏は、マネージャーの最も重要な仕事は「部下から最高の業績を引き出すこと」としました。1 on 1 ミーティングは、に部下の「訓練」を行い、キャリア開発の相談を通して部下の自己実現を支援して「動機」を高めることを目的としています。
標準的な頻度は隔週、時間は60分~90分程度ですが、上司部下の状況により適切な設定をします。以下実施のポイントを記載します。
事前のアジェンダを用意する(3つの切り口)
より重要な話題が出たときには差し替えるなど、アジェンダにこだわりすぎない柔軟性は必要ですが、無駄な時間を過ごさないために、事前に話す内容の項目は準備しておくべきです。
アジェンダは、ミーティングの目的を明確にするうえでも効果があります。議題を整理し、時間配分を見積もることができます。上司と部下双方は、アジェンダを見ながら進捗管理することによって、ミーティングの質を上げることができます。
アジェンダ例(業務について)
①今取り組んでいるテーマ②課題や困っていること③上司が力になれることがないか
直接的な業務についてです。上司は、指示するのではなく、共通の業務目標に向かって部下を支援するという立場を持つとより、前向きなミーティングになります。
アジェンダ例(キャリアについて)
①実現したいキャリア②直近で一番力をいれた業務③自身の強み・弱み④今の業務でのやりがいや、大切にしていること⑤今後のキャリアの希望や方向性、それに対する課題など
部下の将来像について、話し合います。上司は、部下のあるべき姿について、ビジョンを共有し寄り添う立場でいると、部下の成長意欲を引き出すことができます
アジェンダ例(プライベートや価値観について)
①プライベートに関する話を聞く(週末何をしたか等)②その出来事に対する感情を聞く(楽しかった?)③価値観を探る(何をしているときが楽しい?)
部下の価値観を知ることが、仕事観のすり合わせに役立ちます。また、ストレスによる精神疾患の予防にも役立ちます。プライベートにおける助言を行うことが、職場の精神安定につながることもあります。
キャンセルでなくリスケジュール
多忙を理由にキャンセルを繰り返すと、互いに1 on 1ミーティングの優先順位が低くなり、形骸化してしまいます。やむ得ない場合もその場でリスケジュールするべきです。
メモを取り、前回の振り返りを行う
メモをとり、ミーティングで話したこと、取り決めたことについて後日進捗を確認します。言っただけにならないように、ミーティングを効果的なものにするためには重要です。メモを取るのは、上司と部下と双方で、内容については相互確認すると認識違いを防止できます。
適切な質問を行い、上司の時間の8割は、話を聞く時間にする
1 on 1 ミーティングの意義は、適切な質問を行い、部下の深い情報を聞き出すことにあります。深い情報を把握していることによって、適切な相談や方向について協議が行えるのです。質問についての切り口は以下の通りです。
以上参照文献:アンドリュー・グローブ氏「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」
①目標について(長期・短期)②会社の改善について③自己改善について④マネージャーの改善について⑤幸福について⑥個人的な生活の問題について⑦チームリレーションについて⑧仕事の習慣について
参照:ジェイソン・エヴァニッシュ氏のブログ

ヤフー株式会社の事例
Misson:UPDATE JAPAN 情報の力で日本をもっと便利に
Vision:世界で一番便利な国へ
人材育成の基本方針:社員の才能と情熱を解き放つ
以下参照文献:間浩輔氏「ヤフーの1 on 1」ダイヤモンド社刊
1 on 1の定義:「部下のための時間」としています。
頻度、時間:毎週1回 30分
マネージャー(上司)はコーチング研修を受けて「傾聴」のスキルを学びます。部下の思いや考えを引き出すことを主眼としています。対話を通じて、進捗確認と問題解決をサポートし、目標達成支援と成長支援を行います。
コーチング
マネージャー(上司)は部下に、問題解決を促す行動をさせるような質問をします。「その根本的な原因はなにか」「どうして今回はうまくいったのか」「どうやったらもっとうまくいったのか」「今回の成功で学んだことはなにか」などを問いかけます。部下に考えさせることで、成長を促します。

ティーチング
部下にない知識を教えます。場面に応じて、コーチングとティーチングの使い分けを行います。
フィードバック
失敗を失敗だと認めさせたり、周りからはどう見えるかを素直に伝えたりする方法です。次の成長へとつながるようにし、人格の否定にならないようにします。
効果
ヤフーでは「経験学習の促進」と「社員が自分の才能を自分で発見する」ことができたといいます。
以上参照文献:本間浩輔氏「ヤフーの1 on 1」ダイヤモンド社刊
まとめ
1on1ミーティングは、上司と部下の相互成長が本質的な目的です。上司にとってコーチングや傾聴のスキルが大事であり、部下も自らの内面の気づきから、自発的に業務に取り組む心がまえを学びます。
通常半年に一回行う評価面談とは、切り分けが必要です。ただ最終的に、よい評価を得られるように、上司や部下が1on1ミーティングで双方協力し合うことは大事です。
目標管理と育成を考え、効率的に1on1ミーティングを計画的に、事前アジェンダを考えて行いましょう。そして最も重要なのは、上司と部下が共通の価値観をもって、相互に高めあう姿勢です。
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