中小企業診断士とは 資格の価値、合格率、転職、独立開業の実態

人事 キャリア

中小企業診断士は、経営コンサルタントの国家資格です。中小企業診断士の取得者として、また中小企業診断士として独立開業した経験から、合格率、転職、開業への道など、資格の価値と実態について書いていきます。

中小企業診断士の試験と合格率

中小企業診断士(Registered Management Consultant)は中小企業の経営課題の診断・助言を行う専門家という位置づけです。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。

試験には、マークシート、筆記、口述と3次試験まであり、15日間(3分割で受けられる)実務補習の後、正式に経済産業省に登録となります。

中小企業診断士一次試験の試験科目

1.経済学・経済政策2.財務・会計3.企業経営理論4.運営管理5.経営法務6.経営情報システム7.中小企業経営・政策

合計7教科となっています。

一次試験の合格率は下記のとおりです。

中小企業診断士1次試験合格率
出典:一般社団法人中小企業診断協会

1次試験に合格すれば、中小企業診断士登録養成課程(1年)を修了し、認定登録資格者となるコースもあります。

中小企業診断士 登録まで

中小企業診断士2次試験

出題は4事例(事例Ⅰ組織人事、事例Ⅱマーケティング・流通、事例Ⅲ生産・技術、事例Ⅳ財務・会計)です。

各事例ごとに、企業の概要と課題が書かれた問題文が2~3ページほどあります。4~5問程度の設問があります。解答文字数は指定され、100字前後となっています。

2次試験の合格率は以下の通り

中小企業診断士2次試験合格率
出典:一般社団法人中小企業診断協会

3次試験の口述試験はほとんどの方が合格します。

一次試験20%×2次試験20%=4%と計算すれば

試験の難易度としては、司法試験、公認会計士試験、税理士試験には及びませんが、社会保険労務士試験比べ同等といったところではないでしょうか。

中小企業診断士の資格の価値(転職、配属)と業務内容

弁護士、公認会計士、税理士などと違い資格による独占業務がほぼありません。

では、中小企業診断の資格の意義はなんでしょうか。

経営コンサルタントの国家資格とはいいながら、成り立ちから言うと、行政が実施する中小企業に対する経営支援サービスの補佐的な位置づけの資格というのが原点です。

民間企業の自己啓発としては、以下の場合は非常に有効な資格です。

経営企画や関係会社管理などの部署に異動したいときには有効なアピールになります。

また、信用公庫や銀行においては、企業診断のスキルがあるとみなされ、重宝されます。

中小企業診断士の転職

中小企業診断士は、IT業界、法人営業において転職の武器になります。企業の経営者や間接部門の顧客に対して、経営を体系的に知識を修得したことがアピールになるからです。

有名大学MBAほどではありませんが、経営コンサルティング会社への転職も有利に働きます。取得していることが、若干加点になることが多いです。

有名どころの経営コンサルティングファームになると、中小企業診断士の資格だけで採用されることはありません。

むしろ、著名な外資系戦略コンサルティングファームの採用は、有名大学のMBAとか、一流企業での優れた業績などの経歴を重視します。

国内系経営コンサルティングファーム、中小コンサルティングファームでは、書類審査で有利に働きます

そのほか、人事、経理、経営企画職についての転職にも効きますが、上記と同様に取得しているだけでは採用の決定要素になりません。

行政の仕事

中小企業診断士はその成り立ちから、比較的、行政補助の経営支援系の業務委託の仕事が獲得しやすいです。

どのような仕事があるというと、

①全国47都道府県に設置する経営なんでも相談所である「よろず支援拠点」

②地域経済の発展を目的として、法律に基づいた形で運営されている地域総合経済団体である「商工会議所」

③行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号)の定めるところにより、2004年(平成16年)7月に設立された独立行政法人「中小機構基盤整備機構」

以上の経営相談員、コーディネーターなど、常勤、非常勤職員の仕事です。

単価は様々ですが、一日1.5万~5万くらいが相場となっています。また行政の補助事業として派遣型の業務委託(専門家派遣)もあります。

その他は経済産業省管轄の事業再構築補助金、ものづくり補助金の作成支援、審査、事務局の仕事があります。

中小企業診断士の仕事の中で単価の高い(1件あたり200万ほどの売上になる)のは、中小機構基盤整備機構に設置された中小企業再生支援協議会が支援を行っている事業再生の仕事です。

これは、経営難に陥った中小企業の銀行の返済計画の見直しのための事業再生計画を作成する仕事です。中小企業には行政の2/3補助がでます。

あとは、セミナー講師の仕事です。商工会議所が開催する行政補助付きのセミナーの講師が多いです。

以上のように、中小企業診断士という資格周辺の仕事の基本は、行政の補助ありきです。事業再生はともかく、単価はそれなりです。

継続的に仕事をもらう営業力があれば、食べてはいけるかなといったところです。稼いでる部類の会社員には正直かないません。

民間の仕事

単価が高いのは、民間契約の企業研修の講師、企業顧問契約、経営改革PJ契約となります。

こちらは中小企業診断士の資格だけではなかなか受注するのは困難です。

単価の高い経営コンサルタントはむしろ、中小企業診断士を名乗っていない場合が多いです。

理由としては、中小企業診断士の単価相場がある程度決まっており、それ以上の単価の高い経営コンサルタントは名乗らない方がよいからです。

中小企業診断士の資格の意義

資格試験そのものは、経営を体系的に学べますので、自己啓発としては良い資格だと思います。

スキルとしては、一定のレベルの経営関連の知識をもって、論理的な文章が書けるという証明になります。

2次試験合格には、文書力が必要になるからです。経営に関する論理的な文書が書けることが必要になる業務については(単価は高くありませんが)資格は有効です。

中小企業診断士の資格取得にはさまざまな動機が存在します。

弁護士とか税理士とかと違う点は、比較的、会社員を続けながら中小企業診断士に登録している人が多いことです。およそ7割が開業をおこなわず、企業内診断士として登録されています。このことから言えるのは、

①自己啓発のためであり、開業するために中小企業診断士を取得したわけでない。

②中小企業診断士として開業するのは、他の士業に比べ難しい。どちらでしょうか?

①②どちらともいえます。このブログは、中立的な立場で、客観的に読者の判断のため、これまでのありのままの経験からくる事実を述べることが目的ですので、率直に現実を書きたいと思います。

私は、中小企業診断協会にも所属していますし、多くの中小企業診断士を知っています。

多くの開業した中小企業診断士の実態としては、単価の安い公的な仕事(行政の補助付き)やそのほかのスキル(ITスキルなど)で食いつないでいるのが実態です。

これは、中小企業診断協会の理事クラスでも多かれ少なかれ同じです。

中小企業診断士で稼ぐケース

中小企業診断士として独立して、成功者の部類は大きく以下の3つの場合です。

①事業再生の専門家として、仕事が継続するスキームを確立している。

②中小企業診断士以外で、セミナーの講師として優良なコンテンツや名声をもって、各地で引っ張りだこである。

③特定分野の専門領域を持っており、定評を獲得している。

①は確かに、社会的使命(経営困難な企業に対して、銀行融資返済の条件変更を行い、延命させる)があり、それなりの単価です。

中小企業診断士の仕事の中では、SWOT分析、実現性の高い事業計画作成など、いわゆる経営コンサルタントらしい業務が経験できます。

ただ、事業再生の案件自体は行政の方向から言うと、これから大きく伸びることは考えにくいです。

というのは、税金を投入して、経営困難な中小企業を救済するという政治的なフェーズはおわりつつあるからです。今後は、無理な救済を行わない方向だからです。

また、先行して実績を積んできている先輩が多くおり、彼ら自身も今後案件が減ることを予想して他業務へ手を伸ばし始めている段階です。

これから参入するのはよほどの仕事のルートがあるか(具体的には銀行や再生支援協議会)、重宝される業種に特化した専門性が必要になるでしょう。

企業再生の仕事を期待して、中小企業診断協会に所属するのは、かつてはともかく、現在はあまり有効な手立てとは言えません。

ただし、各地の中小企業診断協会には、事業再生を手掛けている独立中小企業診断士が在籍していますので、彼らから情報を聞くことはできるでしょう。

まとめ

中小企業診断士は、ビジネスパーソンが新たに取得したい資格 第1位となったこともあります。(日本経済新聞・2016年1月12日付)

中小企業診断士の資格取得の勉強自体は、ビジネスパーソンにとって有意義といえます。

資格だけを武器にすることはできません。資格以外のキャリア、マネジメント経験や技術的なスキルなどの強みと相乗効果が期待できます。

単価は安いと書きましたが、それでも他士業と比較しても弁護士を除くと見劣りするわけでありません。

中小企業診断士は、独学では取得が困難です。取得に興味があれば、専門の通信講座の以下のサイトもご参照ください。



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