KPI(重要業績評価指標)とは 事業繁栄させる3つのポイントと事例

営業 事業企画

KPI(Key Performance Indicator)は重要業績評価指標です。顧客提供価値へのシナリオにおける目標値とも言えます。KPIは事業の業績を進捗、管理するうえで、最も重要な指標です。しかし、業種や業態ごとによって設定は様々であり、本質的な活用をなされている例はあまり多くありません。本投稿ではKPIの設定方法のスキームや、その活用方法、事例について、3つのポイントをできるだけわかりやすく考察します。

KPI(重要業績評価指標)の歴史的背景

KPI(重要業績評価指標)の定義は、20世紀初頭のデュポン社における投資利益率を展開したチャートシステムにさかのぼります。

デュポン・チャート・システムは、事業ごとの収益性を比較したり、投資に見合った利益を出しているかを評価する指標であるROI(投資利益率)を、売上高利益率(利益÷売上高)、資本回転率(売上高÷資本)2つの要素に分解しています。

出典:KPIについての論点の整理 大西 淳也 福元 渉  財務省総合研究所

事業の目標をROI(投資利益率)におくとすると、ROIを向上させるためには、売上高利益率(利益÷売上高)、資本回転率(売上高÷資本)の各要素を向上させればよいという考え方です。

2つの要素を向上させるために、また、それぞれ分解して具体的なアクションまで落としていくのです。

その後、キャプランとノートンのバランススコアカード(後述)などの業績評価のフレームワークの出現により、KPI(ケーピーアイ)は多様な解釈を取られながら、注目を集めています。

KPI、KSF、KGIとの関係

KPI(重要業績評価指標)と並列でよく使われる用語に、KSF(Key Success Factor)重要成功要因や、KGI(Key Performance Indicator)重要目標達成指標があります。

KGI(重要目標達成指標)は事業の最終目標です。KPI(重要業績評価指標)はKGIを達成するためのプロセスの定量評価です。一方、KSF(重要成功要因)はKGI(重要目標達成指標)を達成するためプロセスの定性表現です。

KGI、KSF、KPIの関係 
KGI、KSF、KPIの関係 筆者作成

デュポン・チャート・システムでいうと、ROI投資利益率がKGI(重要目標達成指標)で、売上高利益率がKPI(重要業績評価指標)にあたります。KSF(重要成功要因)は、例えば、「販売チャネルの多様化による販売高向上」といった定性表現です。

KPI(重要業績評価指標)は、組織がどこにエネルギーを注ぎ達成を目指せばよいのかを表すプロセス指標として、活用されてます。

KPI(重要目標達成指標)とKSF(重要成功要因)はSWOT分析(外部環境分析と内部環境分析)を実施して策定します。

現在の強み・弱みについて原因追及のなぜなぜ分析を行い、現状を把握したうえで、外部環境における将来あるべき姿へのプロセスを導き出します。

営業利益〇億円というKGI(重要目標達成指標)があるとします。

「引き合いを効率的に受注に結びつける営業プロセスの合理化」というKSF(重要成功要因)や、「顧客ニーズに適合した新商材開発件数」、「引き合いから受注への受注率」といった、数値化されたKPI(重要業績評価指標)がKGI(重要目標達成指標)が達成のためのプロセスとなります。

KPI(重要業績評価指標)とKSF(重要成功要因)はバランススコアカード(後述)や知的資産経営(注)の価値創造ストーリーなどで、KGI(重要目標達成指標)へのシナリオを策定します。

注:知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。

これは、特許やノウハウなどの「知的財産」だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です。

さらに、このような企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。

引用:経済産業省 ホームページ

SMARTの法則

KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定する際に、SMARTの法則(目標のたてる方法論)を活用します。SMARTは、目標を達成し成功をつかむための以下の5因子です。

Specific(具体的)

 例えば、抽象的な「優秀な営業」ではなく「顧客満足度が高く、リピートオーダー率が平均よりも~ポイント高い営業」と表現します。

Measurable(計測可能)

主観でなく客観的に計測可能な目標とします。例えば人事採用における3年間離職率などです。

Achievable(達成可能な)

誰の目から見ても無理のある目標設定は、むしろモチベーション低下を招きかねません。高い目標だが努力次第で達成可能性がある目標を設定します。

Relevant(関連している)

何のために目標があるか、目的(経営理念やミッション)と合致しているかは、非常に重要です。関連性がない目標は、焦点の分散になり設定しない方が良い場合さえあります。

Time-bound(期限が明確)

目標には明確な期限が必要です。期限がないと、評価や進捗管理も行えません。

KGI、KIPの設定はSMARTの法則を活用し、目標としての妥当性を評価します。

BSC(バランススコアカード)

ハーバード・ビジネス・スクール教授のロバート・S・キャプランとコンサルタント会社社長デビッド・ノートンが1992年にハーバードビジネスレビュー誌上で発表した業績評価システムです。

成功事例として、業績を向上させるために、顧客の視点のプロセスを徹底したサウスウェスト航空が有名です。

同様の事例として、日本航空株式会社も定時到着率(顧客の視点)をKPIとして掲げています。

KPIは、シナリオと因果関係が大事です。下記は、バランススコアカードの戦略マップ例です。

財務の指標であるKGI(重要目標達成指標)に対して、プロセス指標及び要因である、KSF(重要成功要因)とKPI(重要業績評価指標)が因果関係をもって結ばれています。

バランススコアカード 戦略マップ例 筆者作成

KSF(重要成功要因)とKPI(重要業績評価指標)を組織や部門長評価にブレークダウンして、全社のKGI(重要目標達成指標)まで結び付けるシナリオができれば、KPI(重要業績評価指標)の本質的な活用といえます。

KPIと目標管理、人事評価

人事評価の公平性や納得性の向上は、経営における重要なテーマです。一つの解決策としては、人事評価を数値化する考え方があります。

2つの論点があります。一つ目は、数値の取り方、二つ目は業績評価の因果関係です。これがうまく機能すれば、人事評価と会社業績の連関が機能し、人の成長が会社の発展につながります。

人事評価における数値化は、評価の客観性担保という長年の課題に対する解決策となります。しかし、人の評価を数値化することは、困難であるのが実情です。

現実的な運用としては、賞与評価は全社のKGIや部門のKPI(重要業績評価指標)と連動させます。ただしこの場合も部門の連携を悪くしないようにチームワークを重視したり、KPI(重要業績評価指標)を共通の目標として共有化するなどの配慮が必要です。

もう一つの注意点としては、KPI(重要業績評価指標)は人や組織ごとに、せいぜい3つくらいにとどめておきます。あまり多いと焦点がぼやけてしまい、どこにエネルギーを注げばよいのか優先順位が付けることが難しくなります。

昇給評価についてはKPIは参考にしながらも、コンピテンシー(優れた社員の行動特性)、能力評価、情意評価などを活用します。

シリコンバレーの企業などで、人事評価に結び付かない運用をされることが多いOKR(目標と成果指標)については、下記投稿もご参考ください。

まとめ

KPI(重要業績評価指標)は組織の評価指標です。本質的か活用のための留意点は以下の3点です。

売上利益予算などの全社のKGI(重要目標達成指標)との因果関係のシナリオを策定すること

部門間や人との連携の阻害要因とならないように、目標の共有化すること

組織ごとに3つくらいまでにして焦点をしぼること

KPI(重要業績評価指標)の本質的な活用ができれば、モチベーションがあがり、組織の競争力向上の原動力となります。

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