節税と脱税、租税回避の違いと事例

資産形成 上流社会 

生活している誰しも、税金のことを意識しない人はいません。目に見えて自分に還元されるわけではないので、できれば払いたくない税金ですが、税収がないと現在の形で社会が成り立たないのも事実です。

税金の支払いを節約したいと、一度も考えない人はまれでしょう。しかし、税金で成り立っている現代社会では、不正に税金の支払いを逃れれば罰せられます。金額や悪質性によっては、懲役刑さえあり得ます。

ここでは、合法的な節税と、刑事罰をうける恐れがある脱税についてみていきます。

なお、税金の個別案件については本サイトでの見解で判断するのではなく、国税庁や税理士などの専門家にご相談ください。

節税と事例

節税とは、税法が想定している範囲で、会計処理を行い、税負担の低減をはかることです。税法の想定している範囲とは、合法的であり、国税庁の通達の趣旨に反しない形であることを指します。

例としては、

認められる範囲での必要経費を計上し、課税所得を少なくする。個人事業主が複式簿記を採用して青色申告を行い、65万の税額控除を利用して納税額を低減することは、税法が予定した合法行為なので節税です。

例をあげると、生命保険について、通達に記載された範囲で損金算入し課税所得を低減する、同一生計の家族や親族を扶養にいれて、扶養控除を受けるなどがあげられます。

その他の節税の事例をいうと、法人もしくは個人事業主は、新設されて2期の間、課税売上が1000万以下の場合、消費税が免除になります。これは、国税庁の通達に明記されており、税法が予定している節税といえます。

No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき|国税庁

退職金は、勤務年数応じて加算される退職所得控除があり上、1/2が課税所得となります。また分離課税であるためその他の所得と分けて税率が決められます。税率は22.5%を超えることがありません。(ただしその他、所得に対し住民税が課税されます)給与や役員報酬などに比べ、非常に優遇されています。退職金の優遇についても、下記国税庁のサイトに明記されています。退職金を使って法人から個人の所得移転を行うのも合法的な節税といえます。

退職金と税については、以下の投稿をご参考ください。

租税回避と事例

租税回避は、税法が想定していない会計処理で税負担を減少させることです。節税と租税回避の違いは明確に区分があるわけではありません。節税は税法が想定している範囲であり、租税回避とは、税法が想定していないが故意に計算処理を行い、税金を軽減することといえます。

脱税は、課税される要件でもあるのにかかわらず、偽りその他不正の行為によって税を逃れることであるのに対し、租税回避は、法の抜け穴をついて。通常ではありえない不自然、不合理な処理を行い、課税を逃れようとする行うことを言います。

租税回避は、例えば「同族会社の行為または計算の否認(法人税法132条)」など否認する規定も存在します。

租税回避の事例としてはスターバックスがあります。スイスにある関連企業との取引で、仕入れにかかる移転価格を高く設定することで、イギリスからスイスなどの他国に利益を移転して、イギリスでの税金を逃れました。

節税の事例で上げました退職金ですが、不当に高い役員退職金は、租税回避とみなされ、損金を否認されるリスクがあります。役員退職金の損金算入範囲(否認されない額)については、最終月額報酬と、勤務年数が目安となります。通達は現在ありませんが、判例はあります。

創業以来の代表取締役の功績倍率について(国税不服審判所 平成19年11月15日)

創業以来の代表取締役であること、Hは創業者の妻であり創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3~3.6倍。

税は「租税法律主義」をとっています。税は、税法に定められて徴収されることが前提です。

税法では定めていないが、不自然だったり、非合理な処理である租税回避行為については、納税者と国税庁で、様々な争い裁判が行われてきました。

租税回避行為を疑われる会計処理について裁判所の判例があれば、その処理についての法的な見解になります。(国税不服審判所)

公表裁決事例集 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所

脱税と事例

所得税法 第238条、法人税法 第159条によると、脱税は、偽りその他、不正の行為”により税を免れ又は税の還付を受ける行為と定義されています。

売り上げを虚偽により計上しない。

領収書を偽造して、架空の仕入れや経費を計上する。

などが、偽りその他不正によって所得(課税要件)を少なくする行為であり、脱税に該当します。

脱税の事例をあげます。

FX(外国為替証拠金取引)で4億の利益を上げた主婦が、FXはもうかることもあれば、損することがある、もうかった時にだけ税金を納めるのは不公平だと考ました。

主婦は、利益で得たお金を遊興費に使い、申告しなかったため、約1億3900万円にも上る脱税の罪で起訴されました。

2007年の東京地裁での判決で、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年、罰金3400万円の判決を言い渡されました。

2008年には大阪府で不動産賃貸会社社長とその妹による、28億6,000万円の脱税事件がありました。隠ぺいした相続財産は59億3,000万円で、相続税額28億6,000万円を脱税した疑いです。手口としては、預金口座を解約して相続財産から申告しませんでした。

相続税の調査は、被相続人、親族の預貯金通帳のチェックを行います。現金化して隠ぺいしても、発覚する恐れは高いといえます。

脱税の罰則(延滞税)

脱税は不法行為であり、延滞税、加算税、刑事罰の罰則があります。

延滞税は延滞金のようなものです。納めるべき税金の期限を超えた後で、脱税を指摘された場合、修正申告して本来納めるべき税金を支払います。その際かかる割合が延滞税です。

延滞税は2か月以内(~7.3%)と2か月を超える場合(~14.6%)とに分かれます。

参照:国税庁ホームページ

延滞税の割合|国税庁

これとは別に、一括して支払えない時などに手続きを踏んで、延納したときにかかる利子税があります。利子税は、令和2年で1.6%です。

脱税の罰則(加算税)

加算税には、4つ種類があります。

「過少申告加算税」は、申告期限内に申告したものの実際に納税すべき額より過少申告だった場合に課されます。納付税額に対して10%~15%で50万までとなっています。

「無申告加算税」は申告期限までに申告しなかった場合に課されます。納付税額に対して15%~20%で50万までとなっています。

「不納付加算税」は源泉徴収税額を納付期限までに納付しなかった場合に課されます。納付税額に対して10%です。

「重加算税」は事実を意図的に仮装・隠ぺいした上で、納税額を無申告、過少申告を行い悪質な脱税と判断された場合に、他の加算税に代わり課税されます。追徴税の35%~40%が課税されます。

加算税によって、適時に適切な申告・納税をしなければ、多くの税金が課されることになります。

脱税の罰則(刑事罰)

脱税の刑事罰は、確定申告書などを提出期限までに提出して納税しない場合において、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金です。もしくは、この両方となります。

偽りその他不正の行為により課税を免れ、または還付を受けた場合には、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金となります。もしくは、この両方となります。

刑事罰は、行政上のペナルティである加算税と、別途科されます。つまり脱税が発覚した場合は、刑事罰と加算税の双方かかるということです。

脱税の刑事罰の基準についても、判例などが参考になります。金額の多寡や社会的影響、行為の悪質性によって、個別に国税庁、検察、裁判所などよって判断されることになります。

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