IoT(Internet of Things)とは、モノのインターネットをさします。IoT(アイオーティと読む)は、さまざまなモノ(家電製品、センサー、電子機器、生産機械、住宅、建物、車など)が通信機能をもってネットワークに接続されます。
モノ、機械、人間の行動、自然現象は膨大な情報を生み出しています。IoTは膨大な様々な情報(デジタル化された映像、音楽、音声、写真、文字)を収集して、可視化、分析することで様々な課題解決を行います。
IoTが行えること
モノは、インターネットにつながることによって、次の4つのことが行えます。
「モノを操作する」
リモコンで家電(テレビ・エアコン・冷蔵庫・給湯器等)を遠隔操作を行います。
「モノの状態を知る」
環境(湿度、温度、気温、濃度、照度、騒音)を、センサー、無線タグ(ICチップとアンテナの組合せ)で遠隔監視します。
「モノの動きを検知する」
バス、タクシーの運行状況や、製造機器の運転状況をリアルタイムにモニタリングします。
「モノ同士が対話する」
モノ同士でデータの受送信を行います。人の出入りで、照明・ドア・空調を制御します。
IoTの歴史
もともとインターネットは、コンピューター同士(ホスト、サーバー、クライアントPC等)が接続通信するための仕組みでした。
IoTという言葉を最初に使ったのは、イギリスの技術者でマサチューセッツ工科大学Auto-IDラボ共同設立者のケビン・アシュトン氏です。
RFID(電波を用いて、RFタグのデータを非接触で読み書きする自動認識技術)を用いた商品管理システムをIoTと呼びました。
当時からモノとモノがいつでもどこでもインターネットでつながる概念はありましたが、実現するための技術とコストがかかるため、現代のように普及するには至りませんでした。
2000年頃には、機械間の通信を意味するM2M(Machine to Machine)という言葉が広がりました。機械が人を介さずにコミュニケーションし、自動動作する仕組みです。
M2Mの概念を機械からモノに拡大したのがIoTです。
世界のインターネットユーザーは、2001年には、5億人であったものが、2016年には34億人を超え、2022年には50億人になりました。
急速に拡大しているインターネットの利用の背景には、Industry4.0(第四次産業革命)、クラウド、ビックデータ分析技術と技術革新があります。IoTの概念が世の中に広まる土壌ができました。
IoTの通信手段
インターネットは、TCP/IP(ティーシーピー・アイピー)という標準規格で通信しています。通信で使用されるデータは、IPパケット(データを入れる箱)に変換されインターネットに接続されます。
無線は大容量化が実現しています。WiFi(無線LAN)や4G、5G、WiMAXといった様々な無線方式で、インターネットに接続されています。
IoTで新たに接続されるモノは、小さなデータであったり、電源を持っていないため電池の交換が頻繁に起こると非実用的です。電池で長期間利用できる、低消費電力のナローバンド(低速)通信を利用します。
データ形式を変換するゲートウェイもしくはアクセスポイントで、ナローバンド無線(低速)をブロードバンド無線(高速)やイーサネット(有線LANケーブルの規格)に変換して、インターネット接続を行います。
総務省の情報通信白書(令和2年版)によると世界のIoTデバイス数は、2019年には253.5億台に達し、2022年には、348.3億台に達すると予測されています。
IoTの業種別活用事例
IoTの活用事例(工場)
- 正常に運転できているか、異常がないか検知します。
- 設備稼働状態の見える化を行います
- エネルギー使用量の把握し、省エネを進めます。
- 機器/設備の稼働データ、PLCやセンサーデータ、温湿度データ、電力使用量などの工場でも収集データを基にした工場業務最適化を行います。
- 遠隔作業支援による遠隔作業指示、研修・トレーニング支援、技能研修サポート、働き方改革支援します。
- 工程の進捗管理をモニタリングします。
- 故障や異常の予知を行います。(予知保全)
- 在庫や補充品の残量や位置を管理します。
IoTの活用事例(農業)
- ビニルハウス内の湿度と温度を管理します。
- 土壌の水分を確認します。
- 日照時間、照度をはかります。
- 水やり・肥料の最適なタイミングや量を自動算出します。
- 遠隔操作でハウス内の温度調節・空調調節を行います。
- 動作センサーや赤外線機能による盗難や鳥害獣被害防止します。
- データを活用して、品質や収穫効率を上げます。
- 機械や設備の遠隔操作します。
- 生育状況のモニタリングや、農薬散布を自動化を行います。
IoT活用事例(介護)
- 見守りサービス 遠隔地から高齢者の安否や健康状態をモニタリングします。
- 接触型:センサーマット等により施設利用者のバイタルサイン(生命徴候)を検知します。 「脈拍」「呼吸」「体温」「血圧」「意識レベル」基本の5つから、健康状態をチェックします。
- 非接触のサービス:センサー(人感・ドア開閉)やIoT家電等を使用し、遠隔地から高齢者の安否を確認します。
- ベットからの離床をリアルタイムに確認します。
- 要介護者の転倒や落下を確認します
- 要介護者の排泄タイミングを予知します。
- ルームセンサー内蔵エアコンで、居室内にいる要介護者の安否と体調と室内環境を可視化します。
- 介護業務(プラン作成、カルテ記録)を電子化して、負担を低減します。
IoT活用事例(交通)
- 自動車・道路事情においては、高速道路の渋滞状況や電車の遅延状況がリアルタイムでわかるので、最適なルートを選択して移動できます。
- 交通機関については、ICカードを利用することによって交通手段間における決済の利便性向上と、利用状況の把握による高齢者パスなどの行政サービスにも活用されています。
データ分析・可視化で都市交通の未来を変革する「交通データ利活用サービス」
自動車のIT化やネットワーク化の進展により、移動軌跡を記録したプローブ情報、バスの乗降に関する統計情報などの交通系IoTデータの収集・活用が進んでいます。そこで日立は、これらのデータを多面的に分析・可視化することで、利用者の利便性向上や交通事業者やバス事業者などの経営効率化、新事業創出などに貢献する「交通データ利活用サービス」を提供しています。
引用:株式会社日立製作所 ホームページ
IoTの実例
IoT活用事例(飯山精器株式会社)
飯山精器株式会社は、創業から 70 年余りの会社です。旋削や研磨を強みとし、NC 旋盤、センタレス研磨機等を用いて、丸物部品の加工を専業で行っています。
課題
量産品の生産が多かった時代には、ひと月に 1,000 ロット単位で発注を行う顧客が多かったです。現在では 100 ロット程度での発注を複数回にわたって行う顧客が主となっています。さらに、近年、顧客から見積回答の迅速化、短納期対応が強く求められています。このような環境変化もあり、社内の生産管理が煩雑になり、管理作業の負担が高まっていました。
解決
独自生産管理システム「i-PRO」を開発しました。これにより、現場作業員がタブレット端末を使って作業の着手・完了状況を入力することで、工程進捗状況が可視化され、事務作業員が管理用 PC から工程進捗を簡単に確認できる環境を構築しました。 さらに、工程進捗状況に加えて、工作機械等の稼働状況を可視化したいという現場ニーズを踏まえ、2016 年に IoT システム「i-Look」を開発しました。「i-Look」は、三色灯の光をセンサで読み取り、工作機械等の稼働状況を取得し、管理 PC 上に稼働中の工作機械は緑色、電源が入っているが止まっている場合は黄色、アラームが出ている場合は赤色等と可視化する仕組みです。
効果
「i-PRO」ではリアルタイムに工程の状況(遅延等)が可視化されるため、作業遅延への早期の対応が行えることや、在庫管理も適切に行うことができ、無駄な材料等の購入を抑えることができるなど効果がありました。設備の稼働状況の確認についても、従来は作業現場まで行って確認する必要がありました。「i-Look」により、工作機械の稼働状況を簡単に PC で確認できるようになり、確認作業の効率化につながりました。
引用参照:中小ものづくり企業 IoT 等活用 事例集 経済産業省 関東経済産業局
IoT活用事例(千代田化工建設株式会社)
千代田化工建設では、大型のプラント建設会社です。以前は、同社内の敷地に置かれた100万点以上の資材を管理するために約300人の人員を配置していました。
資材管理の省力化のために、「資材のIoT化」と「ドローンの活用」を行いました。100万点以上にのぼる各資材に、インターネットとつながるICタグ(RFID)を取り付けました。上空からドローンでICタグから発せられる資材の情報を監視するようにしました。
以上の省力化により人員を3分の1程度に圧縮することができました。
参照:日本経済新聞「現場にドローン」
また千代田化工建設株式会社は、IoT センサーデータと運転データの融合 AI を活用した運転支援システム構築し、これまで定期的に検査・補修することで確認していた機器・計器の健全性を、IoT センサーとプロセスデータ融合 AI により常時監視し、異常の発生を予測・通知することで、その時々の状態に応じた最適な検査・補修の実現を可能とした
引用:経済産業省 中国経済産業局 「中国地域におけるデジタル技術を活用した環境管理可能性調査」
まとめ
IoTの発展は、省力化を進めます。今後は、IoTが支援することの範囲が拡大し、高度化する一方では、人の在り方や業務の再考を促します。よりクリエイティブに、より個性が輝くことが未来社会への道筋であるといえます。
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