交渉術の事例・心理学の活用 ビジネス成功への具体論

営業 事業企画

交渉術は、利害関係が複雑な現代社会において必須のスキルです。バランスの取れた交渉力は、ビジネス成功のため重要です。交渉術における方法論を、心理学やビジネスにおける事例(ケーススタディ)を通じて実践的な解説を行います。

交渉術の事例(ケーススタディ)、活用シーン、効果

交渉術は、様々なシーンで活用することができます。

中途採用時の処遇(交渉術事例)

中途採用においては、採用前の条件交渉が重要です。

ポイントとしては、条件を引き上げるだけが交渉ではないということです。自らの経験、前職年収、入社後のポテンシャルを冷静に評価し、適正な評価を得ることが重要です。

候補者側から見ると過大な期待や条件では、入社後苦労したり続かなくなる原因になります。また周囲の失望でやりにくくなります。

会社側としては、一度決めた処遇を引き下げることは難しいです。人事制度上可能だとしてもモチベーションが著しく損なわれます。

人材価値に対して安すぎる年収も問題です。会社員の年収については、一部の外資系や、成果報酬割合が高い営業職を除くと、急激に上昇することは難しいのが現状です。

悪い条件では続けることが難しくなります。もっと条件の良い企業に転職してしまうことにもつながります。

採用面接においては、事実を多少誇張したり飾ることくらいまでとして、過大な期待を抱かせるような虚偽は避けるべきです。熱意でポテンシャルを評価してもらうことは良いでしょう。

我慢してまで悪条件をのむ必要はなく、そのことについては、明確に伝えることが今後、互いのためになります。

販売価格、仕入れ価格、納期などの条件交渉(交渉術事例)

販売価格の引き下げは、直接利益を押し下げます。一方では、市場競争力を上昇させます。仕入れ価格の押し下げは利益を上昇させます。一方では、購入力を引き下げることにつながります。

適切な販売価格、仕入れ価格の設定はビジネスの継続の重要な要素です。買い方、売り方双方が場面に応じ持続可能な条件交渉を行うことが重要です。

買い方、売り方の力関係によって交渉の容態は変化します。力関係は商材の需要と供給のバランスによって決まります。

一般的には購入力(量)が強ければ、仕入れ価格の引き下げ圧力をかけることができます。つまり需要と供給のバランスに応じた、強気、妥協の使い分けが交渉術です。

仕事の割り振りや配属について(交渉術事例)

自身のキャリアプランにあったり好きな仕事をするのが理想です。情熱が結果につながり、スキルも伸びます。ただし企業や組織では、様々な仕事が存在し、誰しも希望の仕事ができるわけではありません。

また、結果が出やすく評価されやすい仕事があるのも事実です。企業によっては、出世のルートといわれる花形部署があります。

希望の仕事への交渉は、採用面接と人事面接、日ごろのアピールです。ジョブチェンジ制度など会社として制度がある時は、要件をチェックします。希望の職種に役立つ資格取得も有力な材料となります。

上司や周囲へは、差支えない範囲で目指す姿やそのための日常の鍛錬を見せます。希望のキャリアプラン実現には、積み重ねと時間が必要です。

アサインされる同僚・部下について(交渉術事例)

組織におけるポジションが昇進すると、役割や権限が幅広くなります。一人ではなく複数のスタッフのリーダーとして職務を遂行することになります。

リーダーとして同僚や部下を割り当てられる際は、当然協働しやすい有能な人材が望ましいです。

自分にアサインされる人事に影響を及ぼすために、目を付けた人材に対して本人や意思決定者に対して働きかけるのも交渉術です。

協働によって能力を引き出し、うまくいくことをアピールするのです。

一緒に働く同僚や部下に対しては、ビジョンや目標を共有化するために、話し合う場を設けます。

トラブルやクレーム処理において(交渉術事例)

トラブル処理には交渉術が欠かせません。顧客やビジネスパートナーに対して、いち早く報告を行い、対処策を提案します。誠実さと素早い対応です。

ピンチはチャンスです。困難な時ほど地力が試され、信頼を得る機会です。

交渉術といえば打算的にみられるかもしれません。しかし特にビジネスのシーンにおいて、利用されるだけの損な役割の便利屋にならないために、一定水準の交渉術を駆使することは重要です。

人対人のみならず、組織対組織においても、相互尊重の上に成り立つ交渉術は、中長期的な良好な関係のため大切です。

営業の折衝について(交渉術事例)

営業折衝において、交渉術は重要なスキルです。顧客の要望を把握したうえで、自社のサービス・製品を販売していく、各プロセスにおいて交渉術を活用していきます。

一方的に商品を紹介して販売する過去のマスマーケティングの時代から、顧客要望に寄り添い、提案している交渉術が求められる時代になりました。

交渉術を活用した提案営業については、下記投稿もご参考ください。

交渉術の心理学

心理学の側面から交渉術(テクニック)を見ます。まず断りと承諾を活用したテクニックです。場面応じて使い分けます。

イーブンアペニー・テクニック(交渉術の心理学)

イーブンアペニー とは、「1ペニーだけ」と訳されます。ペニーはイギリスの通貨単位で、およそ「1.3~1.6円」です。

著作「影響力の武器」で著名なアリゾナ州立大学のマーケティング・心理学のロバート・チャルディー二教授が検証実験をしました。

「募金をお願いできませんか」と中流家庭に訪問したところ、募金してくれたのは32.2%で平均額20.74ドルでした。

「1ペニーだけでも結構なので募金をお願いできませんか?」 と訪問した場合は、 58.1%で平均額が32.3ドルでした。

受け入れやすい要求で心理的ハードルを下げ、要求を上回る結果を引き出すテクニックです。

イーブンアペニー・テクニック のビジネス事例

飛び込みやテレアポで「1分だけお時間いただけませんか」「1点だけお伺いしてよろしいでしょうか」とハードルを下げて、断られずに商談を継続します。

無料の商材試用期間を設けます。

ドアインザフェイス・テクニック(交渉術の心理学)

ドアインザフェイスの由来は「門前払いする」と言われています。

前掲のロバート・チャルディー二教授は、大学生を対象に検証実験を行いました。

「ある日の午後、1日だけ子供たちを動物園に連れていってくれないか?」という要求をいきなり求めた場合は、17%の学生しか承諾しませんでした。

要求を出す前に、ほとんどの学生が断るもっと大きな要求「これから2年間、毎週2時間ずつ、青年カウンセリング・プログラムに参加してくれないか?」とした場合は50%の学生が承諾しました。

ハードルの高い要求を断った罪悪感から、次の要求を承諾したくなるという人間心理に基づいています。

ドアインザフェイス・テクニック のビジネス事例

不動産販売において、最初は想定条件を超えた物件を案内します。断られた後、本命の物件を提示して契約に至ります。

ドアインザフェイス・テクニックについて詳しくは、下記投稿もご参考ください。

ハロー効果(交渉術の心理学)

ハロー効果とは、光の輪があらわれる後光の現象です。対象による評価が、見た目や顕著な特徴によって歪められる現象です。

清潔そうな身なりだと、仕事や人格もきちんとしていると思われがちなこともハロー効果の一つです。

人事評価におけるハロー効果については、下記投稿もご参考ください。

寛大化・厳格化傾向(事例と人の評価・選択、評価面談、評価の罠)
人の評価には、寛大化・厳格化傾向といった評価の罠があります。寛大化・厳格化傾向に代表されるような、人の評価の実務について、事例を交えながら記載します。何をやるかよりも、だれとやるかが大事であるという言葉があります。こちらが選択すると同時に、相手からも評価選択されています。

イエスセット(交渉術の心理学)

イエスセットは、一度「イエス」を引き出すと次も「イエス」を引き出しやすいというテクニックです。

行動、信念、態度を一貫させたい心理「一貫性の法則」を活用しています。

イエスセット のビジネス事例

営業「新型コロナウィルスで飲食店は大変ですね」

店長「ほんと大変だよ」←イエス

営業「お客様に安心して来店していただける環境が必要ですね」

店長「その通りだ」←イエス

営業「コロナウィルスに有効な空気清浄機があれば、お客様は安心ではないでしょうか」←本命の質問

店長「その空気清浄機のカタログを見せてくれないか」

ローボールテクニック(交渉術の心理学)

ローボールテクニックも「一貫性の法則」を利用しています。一度承諾を得た好条件から、後で不利な条件を付けたしても、承諾されやすい心理を利用しています。

ローボールテクニックのビジネス事例

好条件で就職内定の承諾を得ます。承諾後に、昇給条件や配属など実態を伝えます。

ローボールテクニックは承諾を得るために有効ですが、入社後の早期退職や、サービスであれば早期解約などのリスクがあります。

両面提示

両面提示は、事前にメリットだけでなくデメリットも伝えることで、信頼を得るテクニックです。

両面提示のビジネス事例

内定提示の際に、メリットだけでなく職場の実態を事前に伝えることで、内定者の信頼を得ます。

両面提示は、単にテクニックというだけでなく、交渉の本質である双方のWin- Win 関係構築のため大切な考え方です。

バルコニーからみなさい(交渉術の心理学)

バルコニーから交渉の舞台を見下ろしているかのように、交渉を第三者的視点で見ます。全体を俯瞰し、相手の感情に過剰に反応しないことです。冷静かつ理知的に交渉を行うことができ、過剰な譲歩や対立を防止することができます。

交渉術のまとめ

交渉術のポイントは以下の通りです。

好印象の効果を活用する

ハロー効果やイエスセットでみたように、最初は好印象が大事です。交渉相手と対立するよりは味方につけた方が、交渉は円滑です。恫喝を交えて有利な条件を引き出す手もありますが、関係は長続きはしません。

WINーWINの関係性を構築する

交渉術の基本は、WINーWINの関係づくりです。双方の利益の拡大を目指します。互いにメリットがない場合は、取引しないこと(NO DEAL)も視野に入れます。

ビジネスを長い目で見たときには、一時的なこちら側の好条件よりも、相互に持続可能な関係づくりがが良いでしょう。例えば、先方の決裁権限の下限まで値引きを要求する代わりに、継続した取引を申し出るなどです。

事前準備と状況把握

交渉にあたっては、事前準備が大切です。相手の事前情報やこちらが交渉で得たい結果を想定したシナリオ作りです。

交渉の場においては、適切なタイミングと適切な質問によって、相手のポジションや役割、関心のあること、感情や状況をしっかり把握します。相手が望むこととこちらが求めていることベクトルを合わせることができれば、交渉は成功したといえます。

質問力については下記投稿もご参考ください。

交渉術とは、一時的なテクニックとみるよりは、対人関係のコミュニケーション能力とみるべきでしょう。

ビジネスコミュニケーションについては下記投稿もご参考ください。

ビジネスコミュニケーションとは(スキルと研修)
ビジネスコミュニケーションとは、ビジネスを円滑に進めるための必須のスキルです。 ビジネスを動かしていくためには、人と協調したり、調整したり、折衝する必要があります。 仕事を円滑に進めるためのビジネスコミュニケーションの事前準備やスキル向上について、記載します。

コミュニケーションでも同様ですが、交渉術は情報が大事です。交渉相手の情報、競合他社の情報、市場価格などです。

情報を駆使して、良好なコミュニケーションをとることが交渉術のかなめです。

当社では、交渉術向上のための社員研修講師派遣を行っています。相談、提案は無料です。くわしくはお問い合わせください。

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