素晴らしい会社のしくみとは(経営理念、経営戦略、業績評価、人事制度)

営業 事業企画

素晴らしい会社の仕組みの考察を通じて、経営の目的、経営戦略、業績評価、人事制度を見ていきます。

現実にすべて素晴らしい会社は、なかなか存在しません。人と同じように、会社もそれぞれよい点、悪い点があります。

さまざまな経営者や会社を見てきた中で、素晴らしい会社に存在する共通項はあります。この記事は、多くの素晴らしい会社にある仕組み面について紹介します。

事例企業として名前を挙げませんが、私が経営者や役職員の方と接してきた中の実体験に基づきます。

経営の目的

言葉はさまざまです。経営理念、ビジョン、行動規範、ミッション、クレド、使命、創業の精神と表現されています。

組織の目的が浸透している会社は、事業継続性があります。組織の永続性の根元は、時代が進んでも変わらない価値観を持つことです。

従業員のエンゲージメント(忠誠心)を構成する要素の一つとして、経営の目的の理解があります。言葉を読むだけではありません。腑に落ちて共感し、行動に現れることです。そのために、採用のプロセスから意識するべきでしょう。

事業承継においても、先代社長の経営の目的をどのようの継承するかは問われます。すべて同じである必要はありませんが、根底に流れる価値観は共通であるべきです。

M&Aの難しい点の一つはここにあります。長年先代社長と寄り添ってきた幹部が経営者として昇格する場合と、外部から買収によって派遣されてきた経営者では、経営の目的の共有度の温度差があるからです。ギャップがあるときは社内融和か強権発動か、いずれかの選択肢になります。

経営戦略

経営戦略とは、経営の目的を実現するための方策全般を指します。

経営の目的は、普遍的であるため頻繁に変わるようなものではありません。一方、経営戦略は企業の取り巻く環境に応じて、機動的に見直していく必要があります。

選択と集中という言葉があります。経営の資源(人、もの、カネ)には限りがあります。資源の投下する計画である経営戦略は、やりきる決意と柔軟に変更するバランスがリスク管理上求められます。P(計画)→D(行動)→C(チェック)→A(改善アクション)のマネジメントサイクルを機能させていくべきです。

市場において、勝ち残るパターンは大きく分類して3つあります。

規模の経済(経営戦略)

価格競争の激しい同一性の高い市場においては、レッドオーシャンといって血で血を洗うような激しい価格競争が行われています。

トップ企業は、高い認知度、ブランド力、規模の経済による効率化によって、市場の利益の多くを獲得します。利益を社員に還元することによって優秀な社員の確保を行うことができます。

2番手企業以下は、ローコストオペレーションやトップ企業の弱みを突く戦略で生き残らなければなりません、

ニッチ戦略(経営戦略)

地域や分野を定めて営業力、技術力などの強みを磨き上げる戦略です。個別の顧客に合わせて製品をカスタマイズする受注生産、サービスも該当します。トップ以外の多くの企業にとって、極めて有効な戦略です。市場の定義が大事です。

ブルーオーシャン戦略(経営戦略)

市場自体を創造する戦略です。未来の顧客提供価値への強い思いによって実現します。グーグルの検索事業、アップルのスマートフォンなどが該当します。

素晴らしい会社は、以上の3つの戦略の中から、自社に適合した経営資源の集中と選択を行います。

その他の経営戦略手法については下記投稿もご参考ください。

マネジメントサイクル(重要業績評価指標)

経営戦略をマネジメントサイクルで行うため、重要業績評価指標(KPI)を運用する必要があります。業績評価は売上利益だけではありません。売上利益につながるようなプロセスの活動も評価指標として運用する必要があります。ここでは一例として、サウスウェスト航空をあげます。

バランススコアカード

サウスウエスト航空は1972年創業以来、優れた業績を残しています。1991年以降、年平均売上利益率は5%以上と米国航空業界をけん引しているプレイヤーです。サウスウェスト航空は、バランススコアカードを採用し、財務指標(売上利益)を達成するために、顧客満足度のプロセス指標を重視したのです。

※バランススコアカード:ハーバード・ビジネス・スクール教授のロバート・S・キャプランとコンサルタント会社社長デビッド・ノートンが1992年にハーバードビジネスレビュー誌上で発表した業績評価システムです。

サウスウェスト航空の戦略マップ(バランススコアカード)

出典:吉川武男「バランス・スコアカードの構築ー基礎から運用までのパーフェクト・ガイド」生産性出版

例えば売上拡大のため、「顧客の視点」の定刻の離着率を高める。そのため「業務プロセスの視点」である、各部門の実稼働時間をアップさせスケジュールを守る。「学習と成長の視点」である地上クルーのチームワークを良好なものにするために、持ち株比率を上げる。といった形で業績につながる因果関係を明らかにして、KPI(重要業績指標)に落とし込んでいきます。因果関係の寄与率が高い要因の見解が違う場合には、図のように代替案が用意されます。

従業員満足度経営

顧客満足度を与えるような教育と動機付けを従業員業員に行うことを、インターナルマーケティングといいます。

インターナルマーケティング(一般的概念を一部改変)

顧客満足度を向上するためには、顧客にサービスを提供する従業員満足度が重視されます。従業員満足度経営については、下記投稿もご参考ください

知的資産経営

もう一つの近年の動きとしては、経済産業省は知的資産経営を推奨しています。時代の要請として営業利益、純資産などの財務指標のみならず、事業そのものを評価する(事業性評価)必要性の高まりがあるためです。

出典:経済産業省 近畿経済産業局のホームページ

知的資産経営報告書は、私も作成経験があります。基本はこれまでの経営分析ツールと本質はそれほど変わりがありません。

自社の強みを抽出するヒアリングの技術としては、経営者だけでなくグループワークで実施するとよいでしょう。ファシリテーターは、なぜという問いかけを繰り返すことにより、強みの因果関係の本質に迫ります。

洗い出した強みと収益のつながりで、価値創造ストーリーというマップを作成します。顧客提供価値につながるKPI(重要業績指標)を特定します。

素晴らしい会社とは、重要業績評価指標をファシリテーターの導きによって、経営幹部によって合意と納得感を得たうえで作成します。会社や部門の目標として重要業績評価指標が設定され、マネジメントサイクルによって実行されます。

人事制度

人事制度の目的は、大まかに言って2つあります。

基準の設定

不公平な人事はモチベーションの低下につながります。客観的に人の評価を行うことは難しいですが、基準を設定することによって、不公平感の是正をはかります。

評価者には、高度なバランス感覚が要求されます。人事調整会議や二次、三次評価で偏りを是正するのが一般的です。

業績評価は数値化していきますが、人の評価は、一部の営業職を除き数値化にこだわりすぎない方が良いでしょう。ポジションに応じた姿勢や役割について、実際の行動に基づく記録を取り評価します。

あるべき人材像の提示

従業員に成長するべきストーリーと、望まれる能力、行動、役割の提示を行います。キャリアプランの中で、会社として望ましい人材像の成長のステップを描きます。その中で自覚をもって従業員に成長をうながすのです。経営者や管理職自身が腑に落ちて、心からそうなってほしい姿をレベル別、職種別に描くのが大事です。

素晴らしい会社とは、人事制度の二つの目的が短期的にも、中長期的にも仕組みとして機能しています。そして組織の評価である重要業績評価指標と連動しており、人材の成長と行動が企業の競争力強化につながるシナリオとなっています。

人事制度については、下記投稿もご参加下さい。

まとめ

素晴らしい会社のキーワードが3つ出ました。顧客の視点(バランススコアカード)、従業員満足度、顧客提供価値(知的資産経営)です。素晴らしい会社の経営の本質とは、顧客満足度向上と顧客提供価値を支える従業員にあるといえるでしょう。

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