SDGsの企業取組例:未来へ持続可能な国際社会・経営・人材へ

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SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」は2015年9月の国連サミットで策定された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年まで国際目標です。

地球規模で行われるこの目標には、年間の投資機会は途上国で1~2兆ドル、先進国でも最低1.2兆ドルとも試算されています。(2017年のダボス会議では、SDGsに関連する市場が12兆ドル、創出される雇用の規模が3億8000万人との推計が出されました)

ビジネスチャンスであるととも、会社にとって、人材にとって今後対応することが、未来を切り開くうえで重要な基本的な取り組みになります。本投稿では、SDGsの企業の取組事例という切り口で、未来へのあるべき目標と姿の描き方について記載します。

SDGs経営と世界
SDGs経営と世界(筆者作成)

SDZs(持続可能な開発目標)とは

背景

1980年代、開発手法として市場経済メカニズムに依拠する構造調整政策が多く開発途上国でとられてきました。格差が広がるなど思うような成果が上がらなかったため、1990 年代から経済から、人間中心の社会開発にシフトしました。

個別に設定されてきた国際開発目標や開発への考え方・アプローチを、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)は重要な要素として取り込んでいます。

SDZs(持続可能な開発目標)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継です。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

SDZs(持続可能な開発目標)の17の目標

出典:外務省パンフレット

ミレニアム開発目標(MDGs)が、先進国主導で決められたことで開発途上国の反発があったことを踏まえ、SDGsの特徴としては、誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標となっていることです。

SDGsに取り組む企業活動とは

SDZsとあるべき姿

SDGsは、2030年における世界のあるべき姿を描いています。国際社会や国の政策そして投資(注:ESG投資)が、SDGs実現に向かいます。

社会を構成する会社などの組織や私たち一人ひとりも、SDGsを意識して、現状の延長上に未来があるのではなくて、あるべき姿から逆算して今どうするかを考える発想が求められます。

注:ESG投資 過去の結果である財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資です。投資家は、企業が示す「これから何をしようとしているのか」というビジョンを評価の対象にします。

自らのあるべき姿における社会へ役割の中に、全世界すべての人を対象としたSDGsを取り込むことで、結果として国際社会や国の政策と調和し、社会のより良きメンバーとなる未来が開かれるでしょう。

あるべき姿の描き方については、下記投稿もご参考ください

SDGsにおける経営と個人の自覚

SDGs自体は、国際目標です。企業の経営者や社員にとっては、当事者意識が持ちにくい側面があります。しかし、上の図のように2030年あるべき世界は、地球上のだれにとっても望ましい姿へのアプローチです。実現に向けては、一人一人の自覚と行動が欠かせません。

日本企業にとってSDGs経営は、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」の精神や「CSR経営」(社会的責任経営)、「道徳経済合一」ですでに取り組んできたことの延長にあることも多いでしょう。従来の考え方に加えて、地球規模であるべき姿を共有するという観点で、社会の動きはよりダイナミックになります。

注:「道徳経済合一」日本資本主義の父である渋沢栄一が説いた、企業の目的が利潤の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、国ないしは人類全体の繁栄に対して責任を持たなければならないという考え

経営者にとっても、例えば人口減少と高齢化によって労働力不足は深刻です。社員が心身ともに健康で長く働き、付加価値を磨き上げることが重要です。SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉」の健康経営(注)は、一つの目指すべき姿となるでしょう。

注:「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

引用:経済産業省ホームページ

SDGsに取り組む企業のメリット

世界が共有する目標であるがSDGsを無視して事業活動を行うことは、企業の持続可能性にとってのリスクになります。

企業がビジネス活動において、SDGsに取り組むことは、持続可能な存続基盤を強化することにつながります。SDGsによる未開拓の巨大な市場を獲得する機会ともなりえます。

価値創造ストーリー(SDGs経営推進)

SDGs企業活動において、社会課題を解決し持続可能なあるべき姿につながる、会社・組織や個人の価値創造ストーリーが重要です。社会や顧客、組織に提供する価値が、持続可能な存在意義といえるからです。

価値創造ストーリーは、「会社・組織が、部門が、個人が」行う業務プロセス、スキル、知識が、顧客や社会に対して課題を解決し、SDGs目標に貢献するシナリオを描きます。

売上・利益などの短期財務目標との整合性が課題になるかもしれません。しかし、顧客、社会のへの提供価値が中長期的な会社・組織・個人の繁栄につながることは歴史が証明しています。価値創造ストーリとKPI(重要業績評価指標)との因果関係を明らかにすることが、効果的な進め方です。

KPIについては下記投稿もご参考ください。

中小企業におけるSDGsの取組課題

大同生命の2021年10月に行った調査によると、中小企業におけるSDGsの取組における課題のトップは、SDGsに詳しい人材の不足があげられました。設備投資などの資金確保が続いています。

中小企業の活動において、SDGsの教育研修の必要性が浮き彫りになりました。

引用:中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」2021年10月

SDGs企業の事例、取り組み

ウォータースタンド株式会社

ウォータースタンド株式会社は水道直結ウォーターサーバー「ウォータースタンド」レンタル、空気清浄機販売・レンタルなどの物品賃貸業です。 

設立年 1969年資本金 5000万円 売上88億5719万円 従業員647名(内社員371名):2021年6月期

水道直結である「ウォータースタン ド」のプラスチックボトルを不要とする環境面での優位性から、2018年7月にコア事業を「ウォータースタンド事業」に転換しました。

2019年から地方自治体と使い捨てプラスチック削減に向けた連携協定を締結し、マイボトルに給水を呼び掛ける「ボトルフリープロジェクト」を推進しています。

取り組んだ成果・効果

ウォータースタンド設置台数から使い捨てプラボトル削減本数・CO2排出抑制量を推計し、使い捨てプラボトル削減本数は5,701万本、CO2排出抑制量は5991.86t-CO2(2020年6月度)となりました。

社内では座学形式の研修だけでなく、SDGsカードゲームを使用した体験型ワークショップ研修を233名に実施しました。日常業務とSDGs貢献の関連 性について従業員の意識が向上し、お客様とのコミュニケーション深化により3期連続ウォータースタンド設置台数が35%以上増加しました

経済産業省 関東経済産業局 SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介

その他多くの事例が経済産業省 関東経済産業局のホームページに掲載されています。参考になりそうな業種を選んでみるとよいでしょう。

SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介 (METI/経済産業省関東経済産業局)

SDGs経営の事例をみますと、経営トップからマネジメント層、社員に至るまで実際のアクションに結び付ける計画の策定と、仕組みの整備、社員研修などによる意識の改革が今後の課題といえます。

まとめ

SDGs経営を見てきました。多くの読者の方がお気づきの通り、実は目新しい取り組みではありません。これまで継続してきた長寿企業や、優良企業が自然に取り組んできたことの延長にあります。

違いがあるとすれば、地球規模で誰ひとり取り残さないこととを目指し、官民合わせた大規模な投資、政策、決意があることです。

私たち一人ひとりが、他人事でなく普段の意識や行動において、SDGsを理解し、あるべき姿を思い描いて明日のアクションに結び付けることが、個から全体につなぐ繁栄の道筋です。

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