ティール組織 事例と失敗しないポイント 目的へ進化する組織

営業 事業企画

ティール組織とは、目的のために進化を続ける組織のことです。

意思決定に関する権限や責任は、個々のメンバーにあり、上司や部下といった概念はありません。本投稿では、ティール組織の進化のプロセスと、導入事例と失敗しないポイントについて考察します。

フレデリック・ラルー(1969年ベルギー生まれ マッキンゼーを経て独立)が、2014年に17か国40万部のベストセラーになった著書「Reinventing Organizations」で紹介した概念です。

ティール組織
ティール組織 筆者作成

ティール組織への5段階プロセス

Red(レッド)組織

個人の力に依存した組織です。リーダーの力によって支えられています。したがって再現性はありません。

短絡的な目先の利益を優先しており、群狼(オオカミの群れ)とも表現されます。

小集団の犯罪組織にみられ、力を持つリーダーが恐怖で支配する組織です。他のメンバーの思いは重視されず、力で役割が与えられます。

リーダー個人が引退したり力を失うと、レッド組織は崩壊します。

Amber(琥珀)組織

階層的な組織図が明示され、指揮命令系統が整然としており、リーダー個人への依存度を減らしています。

支配する階層の役割分担を行うことによって、レッド組織よりも多くのメンバーを安定的に継続して統率することが出来ます。

決定は階層の上位で行われ、下位は指示に従います。厳格な階級によって成り立つ組織です。

「軍隊」と表現され、現在でも多く見られる組織です。

世界は本質的に不変であるという前提で、最上層部によって戦略が立てられます。秩序と安定したプロセスで構築されています。メンバーへの意見の聴収や配慮はなされません。

世界や現場の状況を見誤って、世界大戦によって敗北した軍国主義はこの組織の典型といえます。

Orange(オレンジ)組織

階層構造による指揮命令系統はありますが、組織横断型のプロジェクトチームが結成されるなど、より柔軟性のある組織形態です。

社員の主体性や裁量認められ、能力の持った個人の力が発揮しやすくイノベーションも起こりやすい土壌があります。

数値管理よるマネジメントがなされ、成果を出したと評価された社員は出世の機会が与えられます。

反面、社員は絶えず数字で競争をしており、結果、「機械」のように働くことを強いられます。

会社組織の大半は、オレンジ型組織に分類されると考えられています。特に営業主体の会社によく見られます。

Green(グリーン)組織

組織のとしての目標達成のみならず、個人に焦点が当てられ、多様性が重視される組織です。

機械的で人間らしさを喪失しかねない、オレンジ組織の反省点を踏まえ生み出さた組織形態です。

互いに個人を尊重しあい、多様な意見が出る風通しのよい組織である反面、合意形成に時間がかかる場合には、社長が最終決定を行うなど組織構造は残ります。

人間らしい働き方ができる組織形態として、継続事業体の多くがグリーン組織へと改革を行っています。

Teal(青緑)組織

組織が一つの「生命体」として、組織の目的をメンバーが共鳴しながら進化していきます。

上司、部下といった階層構造がなく「組織の目的」を実現するために、メンバーが相互に関わりながら行動する組織です。

組織運営は、メンバー間の信頼関係の中で、状況に応じたルールや仕組みが考案されます。

組織全体の総意によることなく、メンバー個々が意思決定権を持ちます。

現代の組織の課題を解決する、次世代型の組織形態として注目されています。

ティール組織が注目される背景

生産性人口の減少によって、国内の経済の活力が失われつつあります。日本の企業に多く見られた、オレンジ型組織は、社員が主体的に活動し成果を出してきましたが、一方では過剰な労働を続けることも見られています。

働き方改革と多様化が求められている時代背景もあり、「人間らしさ」「個々の人生の充実」といった側面からも、ディール組織が注目されています。

働き方改革については、下記投稿もご参考ください。

働き方改革とアフターコロナ

オレンジの組織からティール組織への進化は、階層的構造からフラットな組織への変化です。それぞれ対等なメンバーが、協力しながら社会的価値を提供することで、企業価値を高めていきます。

ティール組織への進化モデル

進化する目的

経営理念などの組織の目的は、固定したものと考えられていました。

ティール組織では、組織の目的自体がメンバーの可能性を追求し続け、日々変化して進化します。

自主経営(セルフマネジメント)

意思決定に関する権限と責任はメンバー自身にあります。メンバー個々が自主的に設定した、目標や動機によって生まれる行動力を組織運営に活用します。

ホールネス

従来の組織では、人に評価される立場であるため、「期待されている役割」を演じるために、本来の自分自身の能力や個性を閉ざすことがあります。

組織のメンバーに「ありのまま、あるがまま」の自分でいられる環境を整備します。

心理的安全性の中で、メンバーの能力や個性を最大限に引き出すという組織運営の在り方です。

ティール組織の事例

ティール組織の生みの親、フレデリック・ラルーは「ティール組織を実現している真に先進的な企業はほとんどいない」と言っています。著作で触れられているのは、「ザ・モーニング・スター・カンパニー」や「パタゴニア」、「ビュートゾルフ」です。

ザ・モーニング・スター・カンパニー(ティール組織事例)

ザ・モーニング・スター・カンパニーは、1970年に創業されました。

現在「トマトソース」「ケチャップ」などの加工生産で、年商7億ドル(全米シェア25%~30%)売り上げる世界最大級のトマト加工会社です。

業界全体では平均の年成長率が1%であるのに対して、20年間、売上、利益ともに2桁増を続けています。

「ザ・モーニング・スター・カンパニー」では、部課長といった役職や昇進はありません。

全社員がマネージャーとして、仕事に必要であると自分で判断したことは、承認を得ることなく行動に移せます。

社員は報酬に関する選択権を持っています。

社員各自がミッションを設定し行動計画を作成します。ミッションと行動計画は、合意書として全社員に共有されます。

関わる他の社員が、合意者の内容や達成度を評価して、社員の報酬は決定されます。

パタゴニア(ティール組織事例)

パタゴニアは、1973年にイヴォン・シュイナードによって創業された、登山用品、サーフィン用品、アウトドア用品、軍用品、衣料品の製造販売のメーカーです。

有名な経営方針として、「社員をサーフィンに行かせよう」があります。

パタゴニアの支店のほとんどは海沿いにあります。(カルフォルニア東海岸沿い 日本支店は戸塚)

彼らが、サーフィンなど自分自身の人生を楽しむことができるような仕組みを整えていことを目指しています。

パタゴニアの組織構造は、リーダー層、マネージャー層、プレイヤーと大きく3つあります。

リーダーはメンバーを選び、ビジョンを設定します。登るべき山を設定して、身を引きます。

マネージャーはリーダーの後を受けて、どのように山を登るかをメンバー示します。チームに対してはコーチングを提供します。

チームのメンバーは、自律性をもっています。各自責任をもって考えながら行動します。

株式会社ネットプロテクションズ(ティール組織事例)

株式会社ネットプロテクションズは2001年1月に創業されました。「NP後払い」「ポイントプログラム」などのテクノロジーを活用して信用を創造するパイオニア企業です。

ネットプロテクションズでは、ティール組織を目指し、マネージャー職を廃止し、人事評価制度「Nstura」を導入しました。

「情報」「人材」「予算」の采配権限として、「カスタリスト」という役割を設置しまいた。

「カスタリスト」は、各期で流動的に交代することが可能で、ミッションとしては権利の行使ではなく、最大限に権限を移譲、共有化することとしています。

対外的には目的に応じた肩書を使用しています。

参照:株式会社ネットプロテクションズ プレスリリース

Buurtzorg(ビュートゾルフ)(ティール組織事例)

オランダで地域密着型の在宅ケアサービスを提供す非営利団体ビュートゾルフは、2006年に設立されました。

在宅介護支援のモデルとして提供する組織として、10年間で24か国、数百チーム、数万人の介護士が働く組織に成長しました。

最大12名のチームは、ビュートゾルフの6つの目標に沿って、自由に行動します。

マネージャーを持たない数百ものチームが、ビュートゾルフが進化するという目的のために独立して運営されています。独自の教育予算を設定しています。

チームには、コーチとバックオフィスがいて、補助と支援を行います。

チームはBuurtzorg Web(ITツール)を活用し、チーム内やチーム間のコミュニケーションを行います。コミュニティ機能があり、情報、ノウハウ、アドバイスが共有されます

Buurtzorg Webには、そのほか、顧客管理、生産性やスケジュールの記録、チームの状況把握などの機能があり、ティール組織運営をサポートしています。

失敗しないポイントと課題

ティール組織は、次世代型の進化する組織として提言されています。実際の導入には以下の失敗しないポイントと課題が考えられます。

ティール組織のメリット

  • 時間を大切にする
  • 裁量を与える

ティール組織の失敗しないポイント

  • 管理(人事・業績)する仕組みが必要
  • 目的の明確化

組織のメンバーが個人の価値観や人生を尊重することがティール組織の在り方です。一方では、自由奔放さが無責任にならないように、組織体を維持するための組織目的を明確にしたり管理の仕組みも必要になります。

会社の歴史と段階への配慮

組織には歴史があり、創業者や利害関係者の思いがあります。人材の意識レベルにおいても、差があります。個別の事情に応じて段階的にティール組織を目指していくべきでしょう。

責任と権限

法人であれば、代表取締役が債務の連帯責任を負うケースがほとんどです。ティール組織の場合、最終的な責任の所在をどこにするかの問題が残ります。

個々の社員に報酬の決定などの権限がある一方、最終的な債務などの経営責任を一人の社員に集中させるのは、不公平です。

現実問題としては、全社員が株主として、出資に応じた責任を負うことが考えられます。

利害関係の調整

会社組織においては、事業を継続するために利益を確保する必要があります。競合との差別化によって生み出された利益は、社員や株主に分配されます。

ティール組織においては、個々の社員に役割と報酬に対するコミットメントによる決定権があるとされています。

個々の社員の報酬の配分については、高度な調整力が必要です。

ティール組織については、非営利団体の方が導入しやすいとされている理由の一つです。

オランダの非営利団体Buurtzorg(ビュートゾルフ)です。

社会性への対応

ティール組織は個々の社員の主体性と目的の進化に焦点があてらています。

一方世界は、SDGsによって「全世界一人も取り残さない」持続性可能な社会を目指しています。

SDGsについては、下記投稿もご参考ください。

組織論を語るとき、社会調和軸も取り入れるべきでしょう。

ソーシャル組織
ソーシャル組織 筆者作成

まとめ

個々社員の個性や主体性を重視しながら、環境変動に応じて柔軟に進化を行い、社会調和を実現する組織こそが、次世代にわたって繁栄する組織です。

ティール組織は、成長する組織の一つの方法論です。会社のステージや業種、会社のあるべき姿によっては、別の組織形態を選択することも視野に入れます。

社会と調和し成長を続ける組織とは、会社のあるべき姿に向かって、組織の目的とメンバーが最適な形を追究し続けるによって生み出されます。

会社のあるべき姿については下記投稿もご参考ください。

あるべき姿とは

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