働き方改革とアフターコロナ(具体的事例と進め方)

人事 キャリア

2019年働き方改革関連法が施行され、大企業から中小企業に至るまで重要な経営課題として働き方改革は周知されています。厚生労働省によると働き方改革とは働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革とされています。日本国は生産年齢人口は減少しています。多様な働き方を受容する必要がある時代背景と、アフターコロナを見据えたリモートワークの導入など、根本的な生産性向上の取り組みの見直しが必要となっています。本原稿では、働き方改革について、事例を交えてご紹介いたします。

働き方改革の必要性・背景

生産年齢人口は、国の成長の源です。発展途上国が高成長である理由は、生産年齢人口が増加しているからです。一方では日本国内の生産年齢人口は減少を続けています。

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29 年推計

GDP世界一のアメリカは、いまだ人口が増え続けています。日本の人口は、2008年1億2208万人をピークに減少を続けています。それに先立ち、バブル経済崩壊1991年ごろから、生産年齢人口はピークに達し増加から減少に転じています。国際社会における経済的な日本国の地位は、以降低下していっています。

日本国の最も大きな課題である、生産年齢人口確保に対する対策が働き方改革なのです。働ける時間に制限がある人、女性や高齢者が活躍して就労できる場を、現在以上に提供していかなければなりません。働き方の多様化を受容する社会改革が必要なのです。

50年後も人口を維持する地域で誰しも活躍可能な社会を一億総活躍社会といいますが、働き方改革は、一億総活躍社会を実現するための改革なのです。

日本国の生産性

日本では、「労働時間を増やして頑張れば頑張るほど企業の業績が向上する」と信じられ、長時間労働をすれば「頑張っている」と認められる文化がありました。

長時間労働の残業の問題に、待機児童の問題などもあり、子育て世代の社会進出の障害になっていました。結果としてますます少子高齢化が進む要因になります。

上の左の図によると、欧米各国に比べ、日本の年平均労働時間は長い傾向にあります。 右上の図より、時間外労働(40時間/週以上)者の構成割合が高く、特に49時間/週以上働いている労働者の割合が高いです。アメリカは日本よりも年平均労働時間は長いですが、一人当たりのGDP(注)は下の図によると、アメリカは日本に1.5倍であり、日本にはまだまだ生産性向上の余地があることがわかります。

出典:IMF – World Economic Outlook Databases (2018年4月版)

注:GDP:国内で産み出された付加価値の総額

生産力・国力の向上

生産力・国力を向上するためには以下の3つの策があげられます。

  • 女性や高齢者などの働き手を増やす。
  • 出生率を増やして将来の働き手を確保する。
  • 労働生産性を向上させる。

以上の課題解決ために、働き方改革は国策として以下の課題解決を進めています。

長期労働時間の解消

長期時間外労働の上限規制の導入法改正や、健康で働きやすい職場環境の整備が実施されています。

非正規社員と正社員との格差是正

育児や介護の負担がある女性や高齢者が、制限なしの正社員を選択できず、力を発揮する機会を損失しています。

そので同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度の整備と、非正規労働者の正社員化などのキャリアアップ支援が行われています。

高齢者の就労促進

65歳以降の継続雇用延長、65歳までの定年延長の推進がされています。

また高齢者の職のマッチング支援が行われています。

その他働き方改革の課題

  • 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
  • テレワーク、副業・兼業などの柔軟な働き方
  • 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
  • 病気の治療や子育て・介護と仕事の両立
  • 外国人材の受入れの問題

働き方改革の事例研究

リクルートグループ リクルートマーケティングパートナーズ

参照資料:日経BPマーケティング60の先進事例で学ぶ本当の働き方改革

リクルートホールディングス:連結売上2兆3994億円(2020年3月期)

社内の評価=社外の評価という式が成り立つ数少ない人材先進企業です。リクルートで活躍できれば、どのような組織に移っても同様に活躍できると言われています。

リクルートマーケティングパートナーズ:従業員数1250人(2020年6月1日現在)

「出版ゼクシィ」 「教育スタディサプリ」などの婚活・結婚・出産育児情報、自動車関連情報、まなびコンテンツ、高校生の進学情報サービスなどを事業展開しています。

課題

課題としては、既存事業の拡大は見込めず、新規事業の提案が乏しい状況でした。現場は既存事業の維持で多忙でした。既存・新規事業を両立するため時間創出が重要であり、現場に影響力を及ぼすミドル層の意識改革スタートしたのです。

業務目標の達成は必須、就業時間は月200時間迄としたうえで、以下の取り組みを実施しました。

取り組み

朝会などの対面ミーティングを削減しました。社員個人の仕事に専念できる時間の割合を増やすようにしました。

手当たり次第に行動しても、成果はあがらない状況の回避するために、上司の業務指示の事前検討を充分に行うようにしました。

資料作成時間の削減するために、資料の簡素化と標準化を行いました。

事業所帰社回数と時間の削減するために、テレワークの導入、チャットツールの活用をおこないました。

プロジェクトの成果

このプロジェクトの実施期間中、業績が伸びる一方、新規提案件数は大幅増することになりました。

仕事量の増加と対策

どのような事業でも、時間の経過ともに仕事が増加する傾向にあります。仕事が仕事を生む状況です。様々な環境の変化に応じて、仕事は増える一方で、過去の経営から、現場の判断で仕事をなくすことは難しいからです。今までやってきたことだから、とりあえずやっておこうという判断がされてしまうのです。

業務量と業務改革
業務改革

無駄な仕事を削減するためには、経営トップが参画して業務の目的をもう一度再検討する、業務改革が行われる必要があります。

伊藤忠商事株式会社

参考資料:・伊藤忠商事株式会社 ホームページ ・企業が生まれ変わるための「働き方改革」実践ガイド 山崎紅著 ・働き方改革に向けたミドルマネージャーの役割と将来像に関する調査研究報告書 一般財団法人企業活力研究所

伊藤忠商事株式会社は従業員:4,319名 連結売上高10兆9829億(2020年3月期)の5大総合商社の一角です。

課題

課題としては、長時間労働や残業の日常化がありました。

取り組み

社長への説明でも箇条書きにするなど、部下に無駄な資料を作らせないようにしました。

社内における会議の回数、時間、会議資料を半減させました。

現場で適切な仕事の割振りを行い、残業が集中している人の仕事の見直しをおこないました。人員の手配について、迅速、適切な現場での対応を可能にしました。

朝方(8:00~)勤務の推奨をおこないました。

20:00以降の残業禁止し、社内(一次会)飲み会22:00までとしました。

プロジェクトの成果

朝方勤務の取組:

20:00以降の退館 約30%(2012年)→約5%(2016年)

22:00以降の退館 約10%(2012年)→ほぼゼロ(2016年)

8:00以前の入館  約20%(2012年)→約5%(2016年)

残業時間 12%削減

一方ではプロジェクトに取り組んだ2012年→2016年にかけ、売上総利益、当期純利益、一人当たりの純利益は向上しています。

社員の声

「頭がすっきりしている午前中のほうが、仕事がはかどる」

「家族とすごす時間が増えた」

「習い事をはじめた」

まとめ

本原稿では、働き方改革と事例についてみてきました。事例の通り、長期労働が業績に寄与するわけではないのは明らかです。むしろ働き方改革によって業務の目的に立ち返り、無駄を削減することで生産性が向上し、業績は良くなることが可能となります。

アフターコロナ時代を見据えて、ますます、リモートワークなどの働き方の多様性の受容と、無駄の削減による生産性向上が、企業の勝ち残りの条件になってくるといえるでしょう。

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