ソリューション営業とは提案プロセス・事例とRFP提案

営業 事業企画

ソリューション営業の提案プロセスとは、お客様の課題解決を提案する方法論です。お客様との長期信頼関係を結ぶことができ、営業活動スキルの中で最上級の一つです。ソリューション(提案)営業の事例を紹介します。

お客様に喜んでもらい、かつ自分の売上にもなるというWin-Winの関係です。営業活動において、もっともお客様に喜んでいただく方法論の一つはソリューション営業(提案営業)のプロセスです。

ソリューション営業とは(お客様の課題解決)

お客様の現状がスタートです。それに対して、お客様が思い描いた将来像(あるべき姿)があります。現状とあるべき姿には、当然ギャップがあります。

ギャップを埋め、お客様をあるべき姿に導くのが課題解決の基本的な考え方です。お客様の課題解決を支援するのが、ソリューション営業(提案営業)です。

提案型(ソリューション)営業プロセスとは 筆者作成

あるべき姿の描き方は下記投稿もご参考ください。

ビジョン・あるべき姿を思い描く方法

ソリューション営業に必要な能力・心構え

ソリューション営業に必要な能力と心構えは、ハイレベルなビジネスパーソンスキルと共通しています。

コミュニケーション能力

顧客の課題をヒアリングし、あるべき姿をともに描く、共創型のコミュニケーション能力が重要です。とくに顧客の話をあるがままに、素直に聴くことが大事です。

聴く力である傾聴のスキルについては下記投稿もご参考ください。

傾聴のスキルとは

仮説構築力

ソリューション営業には顧客のニーズを探る必要があります。顧客の状況を把握して仮説を立てて質問するために必要なのは仮説構築力です。

仮説構築力は、顧客視点(顧客の立場に立つ)からの創造力が源泉となります。

ソリューション営業の心構え

ソリューション営業への以下の姿勢・心構えは顧客信頼獲得につながります。

  • 一期一会の精神(相手の貴重な時間を頂戴していることに対する感謝の気持ち)
  • 誠意を尽くす心構え
  • 初回訪問と提案訪問は特に重要
  • 訪問の性質によって、優先順位をつける
  • 初回訪問時は、余裕をもって到着するスケジュール
  • ビジネス訪問の成否は、事前準備で8割決まる

営業スキルについては下記投稿もご参考ください。

ソリューション営業・提案プロセスの事前準備

事前準備によって、訪問をより有意義なものにします。また、訪問先にも準備段取りの状況が伝わり、信頼獲得の要素となります。

事前準備で収集する情報項目例

訪問先の業界情報
  • 業界の特性
  • 業界の共通課題
  • 業界における相手企業のポジション
  • 業界団体など
訪問先の会社概要

 訪問先の情報を収集するのは、ホームページ、帝国データーバンク等、取引先における評判などです。

  • 事業概要、ビジネスフロー、取引先
  • 売上、営業利益、従業員数
  • 拠点、関連会社等
訪問先の沿革

企業の歴史である沿革は、訪問先への理解を深めるために重要です。

  • 業歴(信用力に影響)事業の変遷
  • 経営者交代時期
  • 経営者挨拶、経営理念、ビジョン、行動規範
  • 組織図、訪問先の部署、役職の確認

ソリューション営業・提案プロセスのシナリオ策定(仮説構築)

ソリューション営業には、仮説を立ててニーズを探る能力が求められます。事前リサーチをベースに、「顧客の視点でどのような商品・サービスが必要か」をイメージして、訪問時の質問や提案に盛り込むことが重要です。

商談のゴール設定

  • 伝えたいメッセージのポイント
  • 先方の要望事項、ニーズ把握の仮説
  • 先方の情報(内部資料や条件等)
  • 案内資料、質問事項準備
  • 臨機応変に対応することが大事
  • 自社会社案内と自己紹介の重要性(初回訪問では特に)
  • 次回予定、アポイント

あるべき姿のヒアリングとRFP(Request For Proposal:提案依頼書

お客様のあるべき姿は様々です。法人も個人にも当てはまる考え方です。ソリューション営業の最初の大事なプロセスが、お客様のあるべき姿のヒアリングです。ヒアリング技術にも段階があります。

一つ目はすでにお客様が要望として、明確になっている場合です。RFP(Request For Proposal :提案依頼書)という言葉があります。お客様が提案を依頼したい項目を文書にまとめています。

ニーズが顕在化しているために、営業にはお客様のニーズを正確に把握することが求められています。すでにお客様のニーズが顕在化しているため、お客様は課題解決に役立ちそうなパートナーの情報収集を進めており、何社かに声をかけている状態がほとんどです。

コンペが通常であり、決定要因としては、価格およびお客様課題にたいする提案内容の適合性です。

二つ目はお客様のニーズが顕在化していない場合です。お客様へ定期訪問を行い、お客様のニーズを会話や情報提供を通じて具現化させていきます。

あるべき姿をお客様と一緒に考えていくスタンスです。そのために、お客様の関心ごとを察知して、継続して情報提供を行います。

時間はかかりますが、一緒にあるべき姿を考えていく中で、お客様との信頼関係が構築されます。コンペにならなくて独占契約を結べるケースがあります。

コンペになったとしても、心情的にお客様は長年自分の思いに寄り添ってくれた営業担当に便宜を図ろうとします。また、営業もお客様のニーズや実情をよく把握しているので、コンペの勝率は高いはずなのです。

法人営業
法人提案営業のプロセス 筆者作成

あるべき姿は法人であれば、経営者の思いです。窓口が担当者であれば、担当者通じて、会社の考え方を調査しなければなりません。

よくあるのが、会社の意思決定に影響力がない担当者と、あるべき姿と解決策を時間をかけて作成したところ、投資の意思決定で否認されるケースです。

法人の場合は、窓口の担当者から情報収集を行うことは大事ですが、上層部や会社としての方向性を察知しなければ、無駄足になりかねません。

担当者通じて決定権者にアプローチする必要があるのが、法人営業の難しさなのです。

現状分析

あるべき姿の共有ができれば、それに対する現状を調査分析します。

調査は、お客様が行わなければならない場合もあります。営業は現状調査を促したり、ヒアリングを行います。経営コンサルティングや、IT導入の場合は、現状分析は提供サービスの一環として有料で行うこともあります。

個人の話であれば、お客様本人やご家族の状況といったところになりますので、面会とヒアリングで十分でしょう。

課題解決策の検討

現状とあるべき姿のギャップが把握できれば、課題解決策の検討を行います。課題解決策の提供が自社だけで対応が難しい場合は、信頼できるネットワークがあり、他社の協力を仰ぐことができればより、深みのある提案活動が行えます。

信頼を積み重ねていくうえで大事なのは、解決策として提供サービスが支援できる内容を明確にしておくことです。提案サービスですべての課題が解決して、あるべき姿にを実現することはほとんどありません。

提案サービスを活用する社内の体制であったり、経営者の意思の継続にもかかってくることが多くあります。個人であっても、提案サービスを継続運用するモチベーションや心の持ち方にも左右されます。

また、提案サービスの機能にも限界あり、そのこともお客様に誤解を与えずに明確にしておくことが、長期的な信頼関係構築には大事なポイントです。

悩ましいのは、明らかに競合他社のほうが優れていて、お客様にとってより良い選択肢であることがあきらかな場合です。

難しい問題で答えは人によって様々ですが、筆者の場合はそもそもそのような土壌で勝負しないことにしています。他社の優位性を隠して販売する方法もあります。

しかし後で分かった時には、信頼関係にひびが入る可能性があります。劣っていることがわかったうえで購入していただけるお客様もあります。よほど営業と強い結びつきがある場合で、そのスタイルの営業も存在します。

ソリューションの提示(提案プレゼンテーション)

解決策を立案したら、お客様のところに提案に行きます。提案書に決まったフォームはありません。

お客様が意思決定に必要な項目を文書化するとよいでしょう。提案の目的、あるべき姿、解決策であるソリューション、期待される効果、実施体制、スケジュール、販売金額や条件などです。

個人であれば、配偶者などに説明できる資料です。法人であれば上司や経営者への説明資料です。意思決定にかかわる人にできれば同席してもらい直接説明した方が、成約率が上がります。

提案書には稟議用の添付資料としての機能が要求されることもあります。したがって、だれが見てもわかりやすい資料作りが必要です。

提案後のフォロー

成約し契約に結び付いた後は、営業はサービス導入まで案件のマネジメントします。受注後のフォローがお客様満足度に大きく影響します。

お客様満足度がリピートオーダーや、紹介につながります。トラブルやクレームは、お客様の関心が高い証拠なので、誠実に対応することでより一層の信頼関係構築やサービス向上に役に立つ機会です。

ソリューション営業の事例

事例(素材加工製造業)の現状分析

A社は、従業員が数十名規模の素材加工製造業です。数十年来、地元の大手製造業と取引しており、周辺の製造業に取引を拡大しました。

新興国の発展に伴い大量生産の汎用品は海外で生産されることになり、顧客の製造拠点が海外に流出するに伴って、受注量が長期的に低迷することになりました。

価格競争が厳しい汎用品から撤退し、受注生産や特殊加工を扱うことで難局は乗り切りました。図面は顧客とFAXでやり取りしており、受発注業務や加工に手間やロスが発生していました。

超特急案件や、工程ごとの処理能力を勘案せず、顧客の言われた通り業務を続けた結果、通常納期に大きな障害が生じ、納期遅れが多発することになりました。外注や自社工場加工品の品質管理を行う時間がなく、品質に関するクレームが多発しました。

大手企業はQ:品質C:コストD:納期で協力会社を常に評価しており、評価が悪化したA社への大手企業の発注は減っていきました。納期遵守を現場に強いるだけで、顧客との調整を行わなかったため、現場の負担が過多になり、ベテランを中心に体調を崩すものがあらわれ、離職率は高止まりしました。

顧客の納期を回答することによって、納期遵守の責任を負うことを嫌った現場は、納期回答を回避するようになり、納期回答さえも行えない状況で、顧客との関係は悪化しました。離職率が高い結果、社員にノウハウがたまらず、業務はますます非効率なものになりました。

3Dイメージ

事例(素材加工製造業)のあるべき姿

  • 受発注業務の自動化・加工の効率化
  • 品質と顧客満足の向上
  • 特殊加工技術の伝承と人材育成
  • 現場負担低減による離職率の改善

事例(素材加工製造業)のソリューション(提案)営業

  • CADデータを顧客と共有化することによる受発注の自動化
  • 加工を効率化するITプラットフォームの構築
  • 案件の優先順位と納期の一元管理する仕組み
  • 品質管理責任者と技術者の評価・研修制度の導入による人材育成

まとめ

提案営業プロセスの実践についてみてきましたが、本質は、お客様に寄り添い、お役に立つ姿勢です。これはすべての事業や営業に通じる考え方です。お客様の信頼や満足の見返りとして、売上利益があることがビジネスの原点です。

ソリューション営業研修と営業研修体系については、下記投稿もご参考ください。

営業戦略・スキル・マネジメント、あらゆる業種や階層について営業力強化、課題ついての情報や方法論については、下記投稿にまとめています。

基礎からの提案型営業プロセスの実践研修について、株式会社アプロッシェ代表取締役 荻野容子様とのコラボレーション企画です。社員教育ご担当者などご関心ある方は下記サイトをご参考ください。

中小企業診断士とのコラボレーション「基礎からの提案型 営業プロセス実践研修」 | 株式会社アプロッシェ
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