経営コンサルタントとは、クライアント企業の課題を洗い出し、客観的な観点から解決策を提案する職業です。公的なオープンデータや社内データ、インタビューから調査分析し、課題と改善点を経営者にプレゼンします。求められるアウトプット(成果)と給与水準が高いことでも知られており、活躍の場は多様です。専門分野も経営戦略、業務改善、IT導入と幅広くあります。本原稿では、経営コンサルタントの仕事内容と、コンサルティングファームの種類についてみていきます。
経営コンサルタントの仕事内容
事業企画支援、新規事業開発
ヒト・モノ・カネの配分計画である経営戦略策定支援をおこなったり、中期経営計画などの事業計画の策定支援を行います。
新規事業開発では、プロジェクトを立ち上げて、アイディアだしから、計画のブラッシュアップ、実行支援のセッションを行います。
プロジェクトのメンバーは、主に次世代の経営幹部候補を選抜されることがよく見られます。
経営診断
財務諸表分析やヒヤリングを通じて、企業の課題について報告書を作成します。銀行の融資方針参考資料として活用します。方法論としては以下の投稿をご参考ください。
事業再生
事業再生は経営不振に陥っている企業を、倒産から救済するという政策の一環として行われています。
各地域に中小企業再生支援協議会が設置され、経営危機に瀕した企業の事業再生計画の策定を行います。
銀行債務の返済に行き詰った企業は、経営コンサルタントが作成支援する経営改善計画によって、取引先の銀行債務の返済猶予の交渉ができます。取引銀行は、基本的には返済猶予の交渉に応じなければなりません。
経営改善計画は、バンクミーティングによって銀行に説明されます。バンクミーティングではすべての取引銀行に集まってもらい、経営難に陥った原因の追究と、経営を改善していく方法が示されます。今後の事業計画を提示して、債務返済猶予などの銀行支援策に対して理解を求め合意を得ます。
銀行は個別での調整は基本的には応じません。メイン行をはじめとした各銀行のすべて合意が必要です。各銀行は平等な返済猶予条件によって本部承認を得て、融資返済を延期が決定されます。
経営コンサルタントは、返済猶予が成立すれば成功報酬で行政の補助を:補助率3分の2(上限200万円)受けることができます。
人事制度改革、IT導入支援、業務改善
各テーマに従って、社内プロジェクトを立ち上げます。経営コンサルタントは、セッションリーダーをつとめ、プロジェクトの実行支援を行います。社内外資料の分析、インタビュー、資料の作成は経営コンサルタントがメインで行いますが、意思決定及び実行は、クライアント企業自身が行わなければなりません。
経営コンサルタントは、テーマに沿った専門性と経験を企業に提供します。
社員教育
新入社員研修、階層別研修は研修会社に社員を派遣する場合があります。講師に研修会社に登録された経営コンサルタントが採用される場合があります。
階層別研修例
社員研修は、研修会社が決まったコンテンツを提供する場合と、企業が独自に企画する場合があります。また個別企業の人事戦略に即した形にデザインした研修を、経営コンサルタントが設計支援することもあります。
個別企業オリジナルの研修は、手間やコストがかかる反面、経営戦略実行に有効です。
社員教育については、下記投稿もご参考ください。
経営コンサルタントになるには
経営コンサルタントになるためには、まず経営コンサルティングファーム入社することが近道です。経営コンサルティングファームに入社するのは、一般的に有名大学卒もしくは、MBA(経営学修士)をとれば有利になります。資格は必須ではありませんが、公認会計士や中小企業診断士の資格が評価されます。中小企業診断士については下記投稿もご参考ください。
経営コンサルティングファームの分類
外資系戦略コンサルティングファーム
主に、大企業、中堅企業の経営戦略策定支援を行っています。マッキンゼーやボストンコンサルティンググループなどが該当します。
経営の立て直しの実績をかわれ、大企業のCEOを輩出したりします。出身者としては評論家の大前研一やDeNAの創業者南場智子が有名です。アメリカでは、IBMを立て直したルイスガースナーも出身者です。
報酬体系が高い反面、アップオアアウトという、一定の期限内に昇格しなければ、解雇という厳しいルールも存在します。
ブラント力があり、採用選考も難関です。海外の有力大学のMBAなどが採用に有利です。
国内系コンサルティングファーム
銀行系や、証券系、会計事務所系などクライアントの紹介ルート別のコンサルティングファームがあります。会計系は経理業務改善や、税務、事業再生なとを手がけます。
そのほか、流通に強かったり、人事だったりと各種の専門系のコンサルティングファームがあります。
IT系コンサルティングファーム
ITを使った業務改革がメインです。コンサルティングの範囲は、IT導入の基本構想がメインになります。基幹システムのプロジェクトは大規模なものになりますので、コンサルタントやSEも多数在籍するファームもあります。
経営コンサルティングの対象クライアント
創業支援
公的支援機関(中小企業支援機構など)の主要な業務として、創業支援があります。
相談窓口には、各士業(税理士、中小企業診断士、社労士)は比較的採用されやすいです。
創業希望者の助言業務ですが、融資のための事業計画作成支援や、競合との差別化、税金面のアドバイスなどがメインになります。
公的支援期間の創業支援は、窓口によってある程度役割分担が決まっています。
相談件数をこなせば、相談内容について知見が蓄積され、ケースによる応用がきくようになります。
窓口相談は、社内のヒアリングや、資料の分析まで行わないことが多く、必要に応じて専門家派遣を斡旋します。
中小企業支援
中小企業の支援といっても千差万別ですが、トップにアプローチしやすく、意思決定が速い反面、さほど高い顧問料になりにくいのが実態です。
オーナー企業の場合、オーナーの相談役の役割を果たします。
専門家派遣、事業再生など行政の補助との組み合わせが良く見られます。
上場支援
自社株式の新規上場の際には、上場審査基準があります。上場支援は、株主の情報開示要求に耐えられる透明性の高い経営の仕組みや業績管理の在り方を支援します。諸規程の整備、組織の設計、株主対策、業績管理など、社内制度の整備を行います。
中堅企業
中堅企業(従業員数100名以上)ともなると、経営コンサルタントの市場単価も上昇します。経営者の顧問というよりも、人事制度改革、IT導入、営業力強化PJといった形でテーマごとの専門系の経営コンサルティングが多くみられます。
PJ形式になると、個人単体では仕事を行うのは難しくなります。コンサルティング会社は法人組織の中で、チームを組んでコンサルティングを行います。
大企業、上場企業
ひとくくりにはにはできないのですが、大まかなところで言うと、歴史があったり、新卒の人気企業で高学歴層が多くいる企業ほど、経営コンサルティングの要求基準が高くなります。
コンサルティングファームのブランド力が必要になってきます。経営戦略であれば外資系コンサルティングファームが強いです。彼らは高いフィーをとり、高い給与を支払う代わりに、いわゆる経歴もハイスペックでないとなかなかファームに採用されません。
グローバルで通用するメソロジーと事例、ブランド力をもって、コンサルティングを行います。
まとめ
経営コンサルタントの業務範囲は広範囲に及びます。経営コンサルタントの専門性と経験(IT、人事、業務改革など)を活用して、社内での変革を行います。もう一つ経営コンサルタントの重要な役割があります。それは、社外の客観的視点で、企業経営の課題を抽出し、変革を促進するということです。
質が高い組織であれば、経営コンサルタントと同等レベルの報告書を作成する社員は在籍しています。社員は業界や社内の知識を持っています。
しかしながら、人事権を握られている社員では指摘しにくい経営トップ、幹部、組織の問題点に対処するのは、優れた経営コンサルタントの価値です。
経営コンサルタントは、時には憎まれ役を演じなければなりません。そのために、経営コンサルタントには、論理性と人間力が必要なのです。
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