人材の育成は、企業経営にとっては根幹です。社員の成長が企業の成長に直結しています。一方では社会人の教育は、本人の自覚次第で大きく成果が異なります。本原稿では、企業における人材育成と、社会人としてのキャリアアップのための成長の双方の側面から、人材育成のポイントについて記載します。
対象者別研修
新入社員教育
特に、新卒社員には会社がカリキュラムを用意する必要があります。
ビジネスマナー研修で、社会人として立ち居振る舞いを習得します。名刺交換の仕方、電話の取り方、接客の仕方、メールの書き方、返信の方法、ビジネス文書の書き方などです。
社会人としての姿勢を教えることも重要です。課題への取り組み方、報告・連絡・相談など上司や他部署、同僚への接し方と姿勢です。
そのほか、業界のことであったり、会社の歴史、商品などの実務に必要な知識の研修が必要です。この場合は近しい存在である、上司や先輩社員が講師になる場合があります。
キャリア研修
役職や社歴に応じて行う研修です。管理職研修なども該当します。社員のステージに応じた研修内容が実施されます。
職務等級制度や職能資格制度などの人事制度(処遇制度)と連動して整備する必要があります。
人事制度(処遇制度)については、別の投稿で詳しく触れることにします。
キャリア研修については、管理職の心構えなど、基本的な技能、知識の習得も必要です。より、踏み込んでいうと、経営戦略と密接に関係した、実践的な研修内容行うと、研修効果によってが経営に貢献することができます。

研修の方法論
集合研修
集合研修は、選定した受講生に対して、同じテーマで集中して行うことができます。一方的に講師の話を聞くスタイルよりも、受講生参加型の形式が主流になっています。
講師の話を聞くだけよりも、自分で考え、手を動かし、受講生同士が会話する方が、研修内容の定着化がよいからでしょう。
ディスカッション
研修内容に沿ったテーマで、受講生同士で行います。いろいろな考え方に触れることができます。自分の考えをほかの受講生に聞いてもらうことで、テーマについて頭が整理され、客観視することができます。
ディスカッションの方法論については、KJ法やワールドカフェなどさまざまな技法があります。詳しくは、別の機会で解説します。
発表
ディスカッションした内容を、グループごとに発表を行います。時間を設定することで、役割分担やタイムマネジメントも学ぶことができます。受講生同士の共同作業は、交流を深めることができます。
合宿形式にすることで、受講生同士の連帯を深め、意識の統一化を行うことができます。
実務への展開
発表した内容をブラッシュアップして、実際の実務に導入します。テーマとしては経営改善、業務改善、新規事業開発などが適しています。発表内容を実務までブレークダウンするために、優れたファシリテーターとプロジェクトリーダーが必要になります。
集合研修の効果を目に見える成果にするためには、実務への展開は欠かせないカリキュラムです。現在の部署と業務内容との調整を行います。経営トップの理解と推進が必要です。
OJT
通常の業務を通じて、社員教育を行います。教育の主体は上司になります。部下の教育は上司の重要な責務です。
その他、先輩社員やベテランの技術者が、OJTの教育者となります。
通常業務の補助者としてスタートし、次第に独り立ちを促進する方法がとられます。
毎日、業務日誌を書かせて、教育する方のチェックを行うのも有効です。
OJTの肝心なポイントは、人事制度との融合です。
教育する方がやる気がないと、OJTはうまく機能しません。教育を行う側が、教育される側の成長を評価対象にすることが、OJTをうまくい機能させるために潤滑油となります。
例えば、定年退職をまじかにしたベテラン社員の技術の伝承であれば、若手の育成の実績を退職金上乗せの対象にしてもよいでしょう。
自己啓発
業務に関連する資格を取ったり、業界紙を定期購読します。語学やコミュニケーション研修など、社会人としてキャリアップを図るための自主的な学習です。
自主的に行いますので、最もモチベーション高く成長につながります。経営側としては、自己啓発を触発する仕組みの整備は、社員教育にとって非常に重要です。
業務に直結する資格であれば、資格取得の報奨金や、手当の支給も検討すべきでしょう。

個人の成長意欲と、組織のビジョンの融合
会社から強制されるのではなく、自発的なキャリアップの動機付けが社員にとって重要です。経営戦略から導き出された会社組織のビジョンと社員の成長意欲の融合が、会社経営にとって極めて大事なミッションです。
キャリアプラン
そのための仕組みとしてはまず、社員ごとのキャリアプランの対話があげられます。社員との面談を通じて、社員が目指す姿と、会社が期待する人材像のすり合わせを行うのです。
上司との評価面談で行うのが通常です。例外として、人事部や外部のコンサルタントが行う場合もあります。
キャリアプランの面談は、上司にも高い人間性と、深い経営戦略や業務についての理解が求められます。人事制度運用において最も重要なことに一つに、評価者の教育があげられる理由の一つです。
コース別人事制度
個人の目指す姿と、会社の望む人材像のギャップで起こりがちなのが、管理職と専門職の志向性です。
高度な技術を保有したり、優れた業務遂行能力をもつ社員に対し、会社としては管理職としてより広範囲の責任範囲を持たせ、部下の育成に努めてほしいと考えるのが当然です。
しかしながら社員によっては、自分の技術や業務遂行能力を磨き上げることに集中したいという希望を持ち、管理職になりたがらないケースがあります。
この場合、無理に管理職につかせたり、または、管理職にならないと給与が上がらない人事制度でだと、優秀な社員の離職やモチベーションの低下を招きかねません。
コース別人事制度はこの問題に対処するために、設計されています。
専門職の給与バンドを管理職と同様に設けています。

まとめ
本原稿では、人材育成の具体的な方法と、人事制度との関りについて記載してきました。人材育成に特効薬はありません。個人との価値観と、会社の経営戦略や人事戦略との整合を、対話を通じてすり合わせていかなければなりません。人事制度は、経営戦略と人材育成に適した形で整備していく必要があります。
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