ロジカルシンキングとは、矛盾なく物事を整理して、論理的に理解する思考方法です。ビジネスにおいても説得力のある資料作成や、話し方にもロジカルシンキングが活用されます。本投稿ではロジカルシンキングのフレームワークと活用事例、例題、習得について説明します。
ロジカルシンキングについて
ロジカル(logical)は、「理にかなった、論理的な、筋道の通った、合理的な」です。シンキング(Thinking)は、「思考、考える」です。すなわち、ロジカルシンキングは「論理的思考」です。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違い
ロジカルシンキングが「論理的思考」に対してクリティカルシンキングは、「批判的思考」と訳されます。クリティカルシンキングは「論理性だけでなく、物事の妥当性を検証して、本質を見極める目的思考」です。
クリティカルシンキングについては下記投稿もご参考ください。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違い
ラテラル(lateral)は「横に広がる・水平」です。ラテラルシンキング(水平思考)は、既存の固定概念や論理にとらわれず、新しい発想や多角的に考察する思考法です。
水平(新しく、多角的)に思考するという点が、ロジカルシンキング(論理的思考)との概念的な違いです。
ロジカルシンキングの経緯・背景
ロジカルシンキングは、2001年5月に出版された、「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」著者:照屋 華子、岡田 恵子 著 によって世の中に広がりました。
「ロジカル・シンキング」著作の中では、2つのロジカルコミュニケーションが提唱されています。
MECE(ミーシー)
MECE(ミーシー)はMutually(お互いに) Exclusive(重複せず) Collectively(全体に) Exhaustive(モレがない)の略語です。「モレなく、ダブりなく」と訳されます。フレームワーク(枠組み)を活用し、会話や話題の重複、漏れをなくします。
MECEには、全体像から構成要素を分類するトップダウンアプローチと、要素を洗い出してからグループ化してボトムアップアプローチがあります。
「Why So?」「So What?」
「Why So?」(それはなぜ?)と問い続けることによって、要素の中から結論を導き、「So What?」(だから何)と検証することによって根拠を提示します。結論と根拠を論理的に説明する手法です。
ロジカルシンキングのメリット
ロジカルシンキング活用によるメリットは、5つあげられます
分析力の向上(メリット①)
ロジカルシンキングで、分析力の向上が期待できます。
問題点に対して、「問題を分類する」「因果関係、相関関係を明らかにする」「分析から解決策を導き出す」プロセスを行います。
あいまいにならず、問題の関係性を理解したうえで、課題を考えていくことができます。
問題解決策の向上(メリット②)
問題解決に必要な、「どこに問題点があるのかの特定」「発生原因の追究」を行います。
ロジカルシンキングのフレームワーク(枠組み)である、ロジックツリーやMECEを使うことによって、場当たり的ではない根本的な問題解決を考案します。
提案力の向上(メリット③)
ビジネスにおいても、取引先や他部門、上司部下などの立場の違いが生じます。利害関係を調整し、スムーズに物事を進めるために「客観性のある論理」によって「筋道を立てた説明」ができるロジカルシンキングによって提案力が高まります。
コミュニケーション力の向上(メリット④)
ロジカルシンキングによって、自分や相手の考え方の論点のズレや、事実と意見の違いを抑えます。相互理解を深めることができ、コミュニケーション能力を高めます。
生産性の向上(メリット⑤)
ロジカルシンキングは、フレームワーク(イッシューツリー)になどよって、問題点の本質の追求を行います。論理的な仮説により出戻りを抑え、本質の理解から無駄なプロセスをなくすことによって、生産性の向上を行います。
ロジカルシンキングのフレームワーク(具体的手法)
帰納法(ロジカルシンキングフレームワーク)
帰納法とは、複数の具体例から導き出される共通点(抽象)をまとめ、結論を導き出す方法(フレームワーク)です。なるべく偏りのない複数の実例を挙げることによって、納得感を高め本質的な一般論にします。
例えば、「日本の8月は、一年間の中で暑い月である」「イギリスの8月は一年間の中で暑い月である」「フランスの8月は一年間の中で暑い月である」という具体例から「8月は一年間の中で暑い月である」という一般論を導き出したとします。これは北半球に偏った実例なので、南半球には当てはまりません。偏りなく具体例あげるこがが帰納法のポイントです。
ピラミッドストラクチャー
帰納法では、結論が「論理的に正しい」ことを証明するためには、複数の根拠が必要になります。図で表現すると、結論を頂点として複数の根拠が下部に配置されるため、ピラミッド構造になります。これをピラミッドストラクチャーと呼びます。
演繹法(ロジカルシンキングフレームワーク)
演繹法は、一般論や普遍的な事実を前提として結論を導きだす方法(フレームワーク)です。
前提の一般論や普遍的事実に主観や思い込みが入ると、論理的に成り立たないのが注意点です。例えば天動説が事実と信じられていた時代による天文学の結論では、地球が太陽の周りをまわっていることを裏付ける観測データ等)説明のつかない事象が観測されます。
ロジックツリー(ロジカルシンキングフレームワーク)と例題
ロジックツリーは、様々な問題を分解し原因や解決法を発見する場合に活用する、ロジカルシンキングのフレームワークの一つです。ロジックツリーには以下の種類があります。
Whatツリー(要素分解ツリー)と例題
Whatツリーは、問題や課題の要素を分解し、選択肢を検討する際に活用する分解型ロジックツリーです。問題や課題を「全体」として捉えた後、「部分」や「要素」に分解して物事を整理します。以下は購入する車の選択肢を分解していく要素分解ツリー例です。
全体から、個別の問題や課題を整理するときに要素分解ツリーは有効です。
Whyツリー(原因究明ツリー)と例題
問題や課題について、生み出している原因を究明することを目的にしたロジックツリーの一種です。例えば、売上が減少しているという問題に対しての原因追及を以下のように行います。
原因追及ツリーでは、「全体と部分」の関係だけでなく、問題や原因の「量と質」もとらえます。
イッシューツリー(KPIツリー)
イシューツリーとは、企業や組織の目標に対して取り組むべき論点を整理するため有効なロジックツリーです。イッシューツリーの代表例として、KPI(Key Performance Indicator)ツリーがあります。
KPIやKPIツリーについては下記投稿をご参考ください。
ロジカルシンキングの習得方法
ロジカルシンキングの習得には、基本的なフレームワークを理解したうえで演習することが有効です。実務において自然にロジカルシンキングが使えるようになれば、強力なビジネスの武器になります。
フェルミ推定
フェルミ推定とは、実際に調査することが極めて難しい数字を、論理的思考能力をもって、手がかりをもとに推定することです。
例題としては、「日本にピアノの調律師の人数は?」「世界中に採用担当者は?」「日本にはマンホールの数は?」「日本にあるワイパーの本数は?」などがあります。
フェルミ推定の例題
「日本に電柱は何本あるか?」は代表的なフェルミ推定の例です。
日常において道端の電柱をみると、50m四方(2500m²)に1本は電柱があると仮定します。
1km²(1,000,000m²)あたりは400本となります。電柱は平地に多く、山地にはほとんどありません。日本の平地は国土の15%程度であり、電柱のある地帯は20%程度とします。
日本の国土面積は約40万平方kmの中、電柱のある広さは20%の8万km²となります。
日本の電柱数は、8万(km²)×400(本) = 3,200万(本)と推定できます。
フェルミ推論では、正確な答えを求めているわけではありません。答えに至るまでの根拠と論理性が問われます。
数学が得意であることよりも、不明部分は割り切った仮説をもとに答えを導き出す論理思考力なのです。
ロジカルシンキングの活用事例
プレゼンテーション・提案(ロジカルシンキングの活用事例)
企画や取引先への提案活動において、ロジカルシンキングは幅広く活用されています。事実関係や論拠をロジカルに説明していくことで、自分の考えを相手に伝え、同意を得ていきます。論点を整理していくことでわかりやすい説明を行うことができます。
課題解決(ロジカルシンキングの活用事例)
あるべき姿に対してギャップを埋めるために行う課題解決に、ロジカルシンキングは活用できます。特に複雑な課題は、ロジカルシンキングで順序だてて矛盾がないように道筋を立てる必要があります。
ボトルネックの特定(ロジカルシンキングの活用事例)
ロジカルシンキングを活用して、事象の相関関係・因果関係を整理することで、起きた原因を見つけることができます。原因を把握することで、ボトルネックを特定し、解消のための方法論を検討することができます。ボトルネックの解消については、下記投稿もご参考ください。
まとめ
ロジカルシンキングは、ビジネスの世界でも汎用性が高くきわめて重要です。ビジネスレポート(報告書)、提案書作成、社内外の折衝と実践していくうえで、鍛えていくのが望ましいですが、体系的に学ぶ機会があればより、スキルとして習得できます。
ビジネス研修全般については下記もご参考ください。
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