転職面接の際、志望動機を考えます。志望動機とはいいかえるとどの会社を選択するかです。転職活動における会社選びのポイントについて記載します。就職先を選定することは、人生にとって極めて重要です。まず、40年勤務するとすれば、寿命が80歳として、人生の半分の期間(しかも元気な現役時代)を職場で過ごすこととなります。
時間に直しても、8時間勤務したとすれば睡眠を除くと、一日の三分の一を勤務先で過ごすことになります。勤務先の環境がいかに大事かは時間だけでは無論ありません。
社会人になって出会う人の層は多くは、勤務先によって決まります。常識的で、そして話題豊かで、気の合う、同僚や取引先、上司に恵まれたいと思いませんか。
非常識な人や乱暴な人が上司や同僚だと、やっかいです。人生の幸福度をさげたり、心の病の原因にもなったりもします。
転職面接前の待遇面の会社選び
まず、給与などの待遇面です。給与は、ほかの人を差し置いて急激には昇給しません。それは社内の他の人とのバランスがあるからです。人事評価制度の中核に一つは、従業員の納得性や公平性です。
勤務先の給与体系が非常に大事になります。業界にもよりますし、業界の中でのポジションによってや経営者の考え方によっても給与体系は様々です。事前に、給与体系についての情報収集は必須です。
賃金体系について
では、賃金体系の情報収集はどのように進めていったらよいでしょうか。上場企業であれば「有価証券報告書」に開示していますので、EDINETで検索するとよいでしょう。会社四季報や就職四季報などにも記載されています。
ただ注意しなければならないのは、平均賃金では、職種別や学歴別の賃金体系は把握しにくいということです。例えば、製造業であれば高卒や期間工などの工場勤務者と、大学院卒の研究開発者では、同じ企業であっても賃金体系に格差がある場合があります
転職の場合は、募集要項にあるモデル賃金が参考になります。転職サイトの募集要項の年収ですが、下限年収から書かれている場合、採用オファーは下限年収スタートと考えておいた方が無難です。
転職サイトによる会社選び
転職サイトの活用は、便利です。募集されている業種、募集地域や、募集職種、募集条件によってあなたにあいそうな人材募集企業を検索することができます。
書類選考のための履歴書や職務経歴書などのデータも保管することができますので、再利用することができます。
当然ですが、転職サイトだけで募集企業を判断するべきではありません
転職サイトのクライアントは、募集企業です。転職サイトは、募集企業から採用広告出稿費用を得て、運営費用としています。
したがって、転職サイトは募集企業に不利な情報は基本的には載せません。
むしろブラック企業は頻繁に募集をかける傾向があるために、転職サイトにとっては得意先であります。クライアントに不利にならないようにするコンテンツとなるのはやむ得ないでしょう。
転職サイトで魅力的なコンテンツや大きな枠を掲載している企業は、よい転職先というより単に採用募集に多額の予算をかけている企業であるということを認識する必要があります。
もちろんブラック企業ばかりだけでなく、成長企業で人材の需要がある場合もありますので、募集の背景を把握することは非常に重要です。
企業のホームページによる会社選び
対象となる企業のホームページを見るのは当然ですが、その見方についての説明です。
経営者の人となり
企業にとって最も影響力があるのが、創業者であり、現経営者です。
社長のあいさつ文があれば、熟読すべきです。また、経営理念やビジョン、行動指針がある場合は、その企業の存在理由、目的、文化、目指している方向を知ることが出来ます。
読んでみて素直に自分が感じたことを大事にすべきです。違和感があればその理由を突き詰めてください。企業と応募者にも相性があります。
共感できるところがあれば、それが自然で受け入れられやすい志望理由になります。
ボタンの掛け違いがあっては、転職先にとっても、あなたにとっても不幸なことにつながりかねません。
先輩社員の声
先輩社員の声があれば、業務のイメージがつきます。いきいきとした活躍している社員を載せるのが普通です。採用に熱心な会社であれば、職場やイベントの写真を多く載せています。
ただこのあたりは、その会社が見せたい姿であることが前提ですので、充実した内容に、きれいで動きのある写真が多いのが普通です。実際の職場のイメージとの乖離がある場合も考えられます。
企業の沿革
企業の沿革もチェックしましょう。沿革を見ることで、その企業のおかれてきた環境と歴史をうかがい知ることが出来ます。
歴史ある企業にも、ベンチャー企業にもメリット・デメリットがあります。一般的には歴史ある企業は安定したビジネスモデルがあり、教育制度などが整っている傾向にあります。
一方ベンチャー企業は、早い段階で大きな仕事や重要なポジションにつける可能性が高い傾向があります。その企業の沿革によって、その企業の成り立ちを知ることができます。
業界やその他情報
企業研究のおいて業界を調べるのは必須ですが、意外と難しいのは業界の定義です。企業の所属する業界といっても、企業には多様な姿があります。
まったく同業種である企業を見つけ出すのは困難です。同じに見えても、取扱製品のカテゴリーが微妙に異なったり、販売エリアが違ったりします。企業研究において把握しなければならないのは、業界における企業のポジションです。
トップシェアを持っている企業なのか、差別化になる要素はどこにあるか、どの方向を強化していきたいと考えているのかを理解することで、その企業が継続して発展するポテンシャルがあるのかどうか、自分の将来を託せるのかどうかを検討していきます。
業界研究としては、経済産業省など公的機関が出している業界市場データ、業界紙などを研究するべきです。
第13次業種別審査辞典をみると、業界情報が詳しく記載されています。ただし、10巻からなり、大きな図書館に行く必要がありますが、かなり充実した内容です。
会社四季報も見るべきでしょう。転職者にとって気になる「新卒3年後の離職率が低い会社」「賞与支給額」「残業時間の少ない会社」「有給休暇取得日数」などが記載されています。
新卒3年後の離職率の高い会社は、その理由を考えてみるべきです。かなり高い目標を求められたり、職場環境に問題があったりする場合があります。
財務情報
せっかく転職しても、転職先が破綻してしまえば意味がありません。企業の安定性と永続性を評価するのはまず財務情報からです。
上場企業であれば、決算情報を開示しています。非上場企業であっても、会社四季報非上場版はチェックしましょう。建設業であれば、ネットや役所で財務情報が見れる場合があります。
財務情報が公開されていない場合は、調査会社の情報を取得するやりかたがあります。
大手信用調査会社は法人向けですが、個人であっても、ネットサイトで企業の財務、信用情報が取得できる場合があります。
財務の見るべきポイントとしては、まず自己資本額と営業利益です。
自己資本額は企業の清算価値です。負債を全部返済した時の残る価値です。
自己資本額が充実していると、長年の利益を留保していることを示し、長期的に見て企業が安定している基盤があるといえます。
営業利益は本業のもうけを示します。例えば3期連続で営業赤字の場合は、融資銀行の審査姿勢も厳しくなります。
株主資本関係も注目すべきです。大手企業の資本傘下の場合、安定しているというプラス面もあれば、幹部社員が親会社から天下りしてくることも考えられます。
そのほか、取引先チェックしましょう。優良企業の取引先がある場合はプラスの評価になります。優良企業ともなると、取引先に対しての与信審査があるためです。
口コミサイトでの情報収集
口コミサイトにのっている企業であれば、チェックしましょう。
多くの口コミサイトと同様に、口コミ件数が多ければ比較的信頼性があるといえます。
注意点としては、退職者のネガティブな意見は参考にすべきではありますが、そもそも退職者はネガティブなものだという割り切りも必要です。
同じような悪い意見が多い場合は、実際にそのような悪い点がある企業である可能性が高いです。
職種によってかなり違いが出る企業もありますので、できれば同じ系統の職種の口コミがより参考になります。
転職サイトの口コミだけでなく、その企業の販売している商品の口コミがあれば、参照しましょう。あまりにもクレームが多い場合は、品質に問題がある企業であると考えらえます。
同業他社との顧客層や価格の比較から、業界におけるポジションが確認できる場合もあります。
取引先、先輩社員
ネットの情報だけでなく、生の声を聞けるのであれば是非そうすべきです。人事に社員を紹介してもらう方法がありますが、本音の部分が聞けない可能性もあります。
できれば選考には関係のない、大学などの知人の紹介で先輩社員の話が聞けると良いです。
経営者のこと、社風、給与、福利厚生、人間関係、業務内容など本音の部分が聞き出せれば有益な情報になります。
対象企業の関係する取引先の社員の声も貴重です。企業の商品力、所属する社員の質、教育、評判などを聞き出すと良いでしょう。こうした生の声は、企業研究の重要な裏付けになります。
企業のホームページは、その企業が閲覧者に見せたい姿です。ネットの口コミも、何か意図があって、良い情報、悪い評判を流している場合もあります。ネット情報は読み解く情報リテラシーが不十分だと、逆に惑わされることもあります。
企業訪問
先輩社員や取引先の生の声を聞く機会が難しくても、自身で足を運んで、会社の雰囲気を感じ取ることは大事です。もちろん、立派な社屋であるから立派な会社であるとは限りません。
また、面接官とのコミュニケーションの中で、社風を感じ取ることもできます。
面接は選考の場であると同時に、あなた自身が会社のことをよく知る機会でもあります。自分自身の生の体験は、企業研究の最も重要なやりかたの一つです。
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