DESC法とは、Describe(描写する)、Express(説明する)、Suggest(提案する)、Choose(選択する)の順に会話を展開するアサーション(相互尊重)スキルです。納得感の高い結果へ導いていきます。本投稿ではDESC法の、ビジネスにおいての例、例文、具体例、研修と習得について記載します。
DESC法とは
DESC法(デスク法)とは、相手を思いやりながら、自分の言いたいことを伝え、納得感を持たせる会話技法です。心理学者ゴードン・バウアースタンフォード大学名誉教授らによって提唱されました。Describe(描写する)→Express(説明する)→Suggest(提案する)→Choose(選択する)の順で展開し、納得の高い結果を導き出すアサーション(相互尊重)スキルです。
アサーティブコミュニケーションについては下記投稿もご参照ください。
Describe(描写する)
Describe(描写する)は、現在の状況や相手の行動を客観的に事実のみを相手に伝えます。自分自身の感情や思い込み、推測で話さないことがポイントとなります。
冒頭に事実関係をもってくることから、聞き手には受け入れやすい導入になります。
Describe(描写する)の具体例
・報告書の指定期限は2月末だよ(上司が部下に報告書作成の納期について尋ねるシーン)
・お客様の資産の時価評価は、ここ数年間ほとんど変動がありませんね。(資産運用相談シーン①)
・過去に購入された株式は、トータルで含み損ですね。(資産運用相談シーン②)
・経理業務には、2重入力の箇所が見受けられます。(システム提案シーン)
Express(説明する)
Express(説明する)では、Describe(描写する)した内容に対し、意見や感想を伝えます。Empathize(共感する)やExpose(表現する)、Explain(説明する)と置き換えて表現することもあります。自分の気持ちや感情を素直に伝えることがポイントとなります。攻撃的になったり、感情を押し付けないように注意します。
Express(説明する)の具体例
・今の進捗だと、報告書提出期限に間に合わないかもしれないね。(上司が部下に報告書作成の納期について尋ねるシーン)
・これからインフレになると、資産が目減りするのではないでしょうか。(資産運用相談シーン①)
・個別株式は、リスクが高いと思います。(資産運用相談シーン②)
・2重入力は、間違いや業務効率の低下につながると思います。(システム提案シーン)
Suggest(提案する)
Suggest(提案する)は、課題を解決するためのソリューションやサービス・商品を提案し、相手に購入してほしいこと、承諾して欲しいことを伝えます。Specify(特定する)と表すこともあります。提案であり強制しないようにします。
Suggest(提案する)の具体例
・報告書のグローバル調査のパートを、留学経験もあるB君に協力を仰いだらどうだろうか。(上司が部下に報告書作成の納期について尋ねるシーン)
・グローバル分散投資をしてインフレに備えませんか。(資産運用相談シーン①)
・VTI(CRSP USトータル・マーケット・インデックス)投資で、長期的な資産成長を期待しませんか。(資産運用相談シーン②)
・ERP(統合業務パッケージ)で、2重入力をなくしませんか。(システム提案シーン)
Choose(選択する)
Choose(選択する)で、相手が提案を受け入れた場合と受け入れなかった場合に対して、選択肢や結果を提示します。Consequences(結果)と表されることもあります。提案や結果がそのまま受け入れられるとは限らないときに、再度提案や代替案を提示します。
Choose(選択する)の具体例
・報告書の納入期限が延ばせないか関係部署に調整してみる。(上司が部下に報告書作成の納期について尋ねるシーン)
・海外投資に抵抗があるのであれば、劣後債など利率の良い国内投資を検討されてはいかがでしょうか?(資産運用相談シーン①)
・VTI(CRSP USトータル・マーケット・インデックス)以外のEFT(上場投資信託)やリスクの低い投資信託をご案内しましょうか?(資産運用相談シーン②)
・投資金額の大きいERPでなく、データ連携ミドルウェアで業務効率化を図りませんか?(システム提案シーン)
提案について回答に対してどうするか、選択肢を用意しておきましょう。
DESC法のメリット
信頼関係の構築
DESC法は、相互尊重のアサーション話法です。相手の返答や態度にあわせて話を進め、選択肢を提示します。相手との信頼関係構築につながる話法です。
生産性の向上
DESC法はテーマにあわせて意見交換しながら、合意をとっていくプロセスです。
上司部下とのコミュニケーションや、取引先との折衝に活用することによって、ビジネスの生産性が向上します。
提案力の向上
事実関係から話をし、説明を加えて、提案し、選択肢を示す会話の流れは、提案の標準プロセスといえます。提案を行うときに、DESC法を意識することによって、提案力が向上します。
組織力向上
DESC法は、相手を尊重しながら、しっかり自己主張をする話法です。現場の意見を取り入れたり、経営方針を浸透させるシーンや、上司部下の円滑なコミュニケーションを通じて組織力が向上します。
上司と部下のコミュニケーションを活性化する1 on 1については下記投稿もご参考ください。
DESC法の注意点
相手の反応に柔軟に対応する
DESC法では、結論ありきではないことに、注意します。お互いの意見を尊重しながら、合意につなげるアサーションスキルであることを念頭において、活用します。
DESC法の利用シーン
例えば電話や、立ち話などでは、DESC法は不向きだと言えます。しっかり互いにコミュニケーションをとれる場で使用するのがよいでしょう。
DESC法は選択肢を与えながら、主張したり、提案するアサーションスキルです。相手を尊重しながら自己主張できるので、上司と部下、他部門との調整において有効です。
また、営業提案や商談においては、選択肢を提供している点で、関係性を継続することができる話法です。
その他の話法との違い
SDS法
一方、SDS法(「Summary(要点)」→「Details(詳細)」→「Summary(要点)」で伝え、事実を簡潔に伝えるのに優れています。
SDS法について詳しくは、下記投稿もご参考ください。
PREP法
PREP話法(「Point(結論)」→「Reason(理由)」→「Example(具体例)」→「Point(結論)」は、結論を論理的に説明する話法です。
PREP法について詳しくは、下記投稿もご参考ください。
SPIN話法
SPIN話法は、顧客の潜在ニーズを洗い出す質問の技法です。
場面に応じて使い分けましょう。SPIN話法については、下記投稿もご参考ください。
DESC法の話法例文
業務システムを提供しているA社の営業担当のBさんは、クライアントC社の情報システム部長Dさんに、情報システム関係の提案を行います。
Bさん「この度はお時間を頂戴して有難うございます」
D部長「こちらこそ、システムの現状分析をお願いしたのですがどうでしたか」
Bさん「御社のシステムは、会計システムを中心に機能が後付けで追加されたため、各システムのデータ連携がとれていません。人の手で2重入力が必要な場面が、業務フローの中でも5か所あります。」Describe(描写する)
D部長「5か所もあるのか」
Bさん「2重入力は間違いのもとになったり、業務負担を生み出します。非効率な業務は御社の競争力が失う原因になるのではないでしょうか」Express(説明する)
D部長「うすうすは気づいていたが、外部の意見でもそうなのか」
Bさん「ERP(統合業務パッケージ)を導入して、各データを統合してみませんか」Suggest(提案する)
D部長「しかしERPはとても高額になるし、当社のような複雑な業務プロセスには現場の導入に多大な労力が必要なので、過去に見送ったことがあるのだよ」
B「では、各システムのデータをシームレスにつなぐ、データ連携ミドルウェアの導入はいかがでしょうか」Choose(選択する)
D部長「おもしろそうだね。具体的な話をきこうか」
まとめ
DESC法はビジネスにおいては、営業提案や社内調整の事前シナリオに向いています。特に、相手に選択肢を提示しながら自己主張するアサーティブコミュニケーションの話法です。活用して、ビジネススキル向上させましょう。
DESC法の研修による習得
DESC法をはじめとするコミュニケーション話法は、研修を通じて習得することが有効です。受講生の業種や職種に応じた例文を演習を作成して、具体的なシーンに応じた習得を支援します。ご相談とお問い合わせは無料です。ご関心ある方は気軽にお問い合わせください。
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