シナリオプランニングとは、起こりうる未来を予測して、適切な対応策をあらかじめ準備する方法です。VUCA時代におけるシナリオプランニングの事例、考え方、策定プロセスについて記載します。
人であれ、会社・組織であれ、事前準備を入念に行うことことは、行動の質とスピードをあげるために大きな効果があります。
想定される悪い事態を予測し備えておくことは、リスクマネジメントにも有効です。想定内の未来であっても、シナリオを描くことによってよりよい未来を切り開く戦略をたてることもできます。
シナリオプランニングの必要性
激動の現代において、シナリオプランニングが見直されています。例えば、コロナが変異して死亡率が激増し、流行が収まらず常態化した場合、世界はどうなるのでしょうか。14世紀のヨーロッパで流行したペストによって、中世ヨーロッパの人口の約3分の1の命を奪われました。
逆にコロナが思った以上に悪性化せずワクチンや対策によって収まり、抑えられていたイベント企画が次々とおこなわれ、旅行、外食、アパレルの需要が伸び、思いによらず好景気になる可能性も検討されます。
コロナで世界が一変したように現代は、VUCAの時代といわれています。VUCAは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語です。もともとはアメリカとソ連の冷戦が終結し、不透明な戦略へと変わったことを表している軍事用語でした。
VUCAの時代において、シナリオプランニングでしなやかに外部環境の変動に対応する準備が必要です。
シナリオプランニングの活用方法
シナリオプランニングは、楽観的な未来をだけを想像するものではありません。実際に起こりうる可能性のある現実的な内容を想定して、不都合なシナリオになったときに悪い状況に陥ることを回避することに役立てます。
事業継続のための未来適応型
組織化された継続事業体が、可能性のある様々な未来に適応し、継続することができる組織を目指すのが「未来適応型」のシナリオプランニングです。
有識者の見解を取り入れながら、市場リサーチを行い、定性面・定量面の分析により、シナリオを作成します。複数のシナリオの中には、現状ビジネスの変革を迫る破壊的なイノベーションが存在することがあります。想定される時間軸の中で、既存の組織を変革する準備を行います。
スタートアップの未来創造型
スタートアップ企業など既存のビジネスにこだわらない、破壊的イノベーションを創造する組織を目指すのが、「未来創造型」のシナリオプランニングです。組織のミッションやビジョンを未来へ価値を生み出す変革者とし、新たなビジネスモデルの構築をするためシナリオプランニングを活用します。
シナリオプランニングの注意点
長期的なシナリオを作成する
シナリオプランニングは大きな未来のトレンドを予測し、企業存続のための戦略を立案します。短期目標のため活用するのは不向きです。
業界、時間軸、地域軸の設定
業界によっては、影響のある外部要因が異なります。自社の属する業界の影響のある要因を選定します。
時間軸としては、企業の中期経営計画は通常3~5年スパンですが、シナリオプランニングは長期間といえ10年を目安とします。30年、50年となると具体的な根拠が乏しくなります。
都道府県、日本、アジア、世界と地域軸の範囲を決めます。想定されるマーケットと影響度合いをみて、情報収集の範囲を決めます。
不確実な未来を予測するために情報収集の優先順位をつけるために、業界軸、時間軸、地域軸を決定します。
経営計画と連動した定期的な見直し
シナリオプランニングは作成時点での、不確実な未来を予測します。時間がたつにつれて当初の想定外の環境の変動が起こったときに、シナリオに見直しが必要になります。シナリオプランニングは、経営計画とあわせ定期的にモニタリングしながら見直し、ブラッシュアップをしていきます。
シナリオプランニングのメリット
経営にとってインパクトのある環境変化への対応力が向上します。不確実な未来に対して戦略を立て、設備投資や組織人員体制を備えることができます。未来を予測した戦略による事前準備で、起こりえるリスク低減し、成果を得られる可能性が高まります。
シナリオプランニングの事例
シナリオプランニングでは、将来予想される重要な政治、経済のできごと、影響力のある組織、リーダーの意向から、世界を動かすロジックを組み立て、複数の将来像(シナリオ)を描きます。
ロイヤル・ダッチ・シェルの事例(シナリオプランニング)
シナリオプランニングは、1965年に、ロイヤル・ダッチ・シェル(ヨーロッパ最大のエネルギーグループ)がロンドンで開始した「長期研究」と呼ばれる取り組みがスタートであるといわれています。
1971年と1972年では、産油国の影響力の増大によって、石油の支配権が欧米の石油メジャーからOPEC諸国にシフトし、原油価格急騰の可能性をシナリオとして提出しています。
「遠くない将来に原油の大幅値上げが起こる。世界の経済活動が停滞し石油需要は下落する」当時のシェルのトップは、「オイルショックシナリオ」を想定した全社的な戦略検討を指示し、オイルショック影響を、具体的に各部門のリーダーに考えさせました。
実際そのシナリオは、1973年10月に起きた第1次石油危機で実現されました。 セブンシスターズ(国際石油資本)の他社は、石油の供給能力の継続的拡大によって供給過多になり利益を失いました。
シェルは、エネルギー需要を正確に他社に比べ低く見積もっていました。シェルは迅速に、OPEC諸国以外での油田開発に取り組む一方で、あらゆる原油でも処理できるように製油施設を設計しました。結果、1970年代において、セブンシスターズ(国際石油資本)の中で地位は逆転しました。
その後も「天然ガスの台頭」シナリオを予測し、セブンシスターズ(国際石油資本)に先駆けて、液化天然ガス(LNG)ビジネスに参入しました。
ロイヤル・ダッチ・シェルは現在でも 、セブンシスターズ(国際石油資本)の中で、トップレベルのポジションにいます。今後、石油需要の減少を予測して「電力とLNGの会社」になることを掲げています。
日本企業の例で見ます。
ユニ・チャーム株式会社の事例(シナリオプランニング)
事業分野:不織布・吸収体の加工・成形分野で培ってきた技術を活かしベビーケア、フェミニンケア、ヘルスケア、クリーン&フレッシュ、ペットケアの5つの事業を展開しています。
ユニ・チャーム株式会社は、気候変動に関するリスクと機会を、事業戦略における重要な要素として捉えています。特に、注力しているアジアは、仮に気候変動に対する緩和策と適応策を取らなかった場合に最も影響を受ける地域としています。
シナリオプランニングに際しては、
以上、ユニ・チャーム株式会社ホームページより引用
・国際協調が進む、または各国が自国を優先することで国際協調は進まないという「国家間の関係性」
・気候変動の影響に伴い人々の環境意識が高まり環境政策が推進される、または人々の意識や政策において環境よりも経済成長の方が優先されるという「政策・人々の意識」という不確実性が高い2軸を選び、4つの異なるシナリオを描きました。
・2℃シナリオ
森林由来の原料価格は緩やかに上昇し、エネルギー価格は急激に上昇する。アジア地域のGDPは緩やかに成長し、当社のROEは現状維持されCAGR7%を維持できる。超長期的にも市場が拡大し業績も拡大できる(持続的に成長しアジア以外に進出)。・2℃超シナリオ
森林由来の原料価格は速いピッチで上昇するが、エネルギー価格の上昇は抑えられる。相対的にコストは上昇するがアジア地域のGDP成長も加速して当社のROEも上昇し、CAGR7%は上振れする。超長期的には異常天候によって市場が縮小する。・エゴ経済ファーストシナリオ
以上、ユニ・チャーム株式会社ホームページより引用
さらに気候変動が増幅されることで、森林由来の原料調達に制限がかけられる。しかしながら経済発展は進み、販売価格も販売量も上昇する。超長期的には極端な異常気象によって事業戦略の大幅な修正が必要となる。
ユニ・チャームでは以上のシナリオを想定して、気候変動含むリスクマネジメントを推進しています。サステナビリティ(今後長期間にわたって地球環境を壊すことなく、資源も使い過ぎず、良好な経済活動を維持し続けること)経営を目指しています。
シナリオプランニングの事例(南アフリカ 変容型シナリオプランニング)
アパルトヘイト政策(南アフリカ政府が1910~91年に実施した人種差別政策)末期、多様な意見、利害関係者が違いを超え、ともに未来を描き創っていく必要性がありました。
1990年、当時のデ・クラーク大統領が27年間にわたる牢獄生活からネルソン・マンデラ氏を釈放し、反体制派グループの合法化を宣言したことで、南アフリカの状況は大きく変わりはじめました。少数派である白人与党と、多数派である黒人の反体制派が、血みどろの歴史を超えて、共に未来を創っていく入り口に立ちました。
カナダ人のアダム・カヘン氏(シンクタンク勤務の後、ロイヤル・ダッチ・シェルでシナリオ策定)が参画し、南アフリカ再建のための「モン・フレール・シナリオ」プロジェクトがスタートしました。メンバー22名は、黒人政党、白人のビジネスコミュニティ、大学関係者などです。参加者全員が自主的に解決策を検討し、実行していきました。
プロジェクトでは、今後10年間に南アフリカで起こりえる事象を、ブレーンストーミングしました。願望ではなく、起こりうる可能性を客観的に出し、出された未来のストーリーは最終的に4つのシナリオへ集約されました。「南アフリカの政権移行はどう進むのか、そして国は再出発することに成功するのか」について、3つの避けるべき未来と、1つの創り出したい未来を示しました。
シナリオ1.ダチョウ
国民の支持を得ていない白人政府が、多数派の黒人との交渉を避け続けます。
(ダチョウのように頭に穴を突っ込んで何も見ようとしません)
シナリオ2.レイムダック
憲法制定の過程で、政府があらゆる人の要望に応えようとして力が弱まり、政権移行が長引き、誰も満足できない状態に陥ります。
(レイムダック:足の悪いアヒル 政策遂行能力の欠いた、政権末期の任期が残っている大統領)
シナリオ3.イカロス
憲法の制定により自由を得た黒人政党が、多数の国民から支持され、高い理想をもって政権に就くものの、持続できない巨大な公共投資に乗り出し、経済を崩壊に導きます。
(イカロス:ギリシア神話に登場します。蜜蝋で固めた翼によって空に飛翔する能力を得るが、太陽に接近し過ぎたことで蝋が溶けて翼がなくなり、墜落して死を迎えます)
シナリオ4.フラミンゴの飛行
重要な基本要素が適切に配置され、社会全員がゆっくり、ともに立ち上がり政権移行を成功させます。
(フラミンゴの群れ:みんなで低く一緒に飛び立ち、大空へ舞い上がります)
シナリオの実現
4つシナリオは、各種媒体、多数のワークショップなどを通じて計画的に国民に周知され、あらゆるところで議論されました。デ・クラーク大統領は「私はダチョウではない」と発言しました。マンデラ氏率いる黒人政党も、「イカロス」シナリオによって思考を変化させ、経済的大惨事を回避する助けとなりました。南アフリカ政府は、望まれたフラミンゴの飛行を実現させていきました。
参考:アダム・カヘン著「手ごわい問題は、対話で解決する」
横河電機株式会社のシナリオプランニング事例
横河電機は、世界62カ国104社展開するグローバルカンパニーです。顧客からサスティナビリティ(持続可能性)や長期視点での考え方を問われているため、2035年の未来シナリオを作る組織横断型の「Project Lotus」が立ち上がりました。
縦軸の「デジタル基盤の構築」と横軸の「グリーン経済のパラダイム」切り口で、4つの象限に分け、「リジェネレーションの夜明け」「グリーン成長のジレンマ」「迷走と分断」そして「日々是イノベーション」という4つのシナリオを作成しました。
リジェネレーションの夜明け
社会が地球環境重視に向かい、デジタル基盤の構築が進みます。両者がデータ連携を起こし、循環型経済が進展します。
グリーン成長のジレンマ
ESG投資(環境・社会・ガバナンス要素を考慮した投資)などが経済の土台になりますが、データ活用が企業の競争力の源泉として囲い込まれるために、社会全体で連携ができず、コレクティブインパクト(様々なプレイヤーが共同して社会課題解決に取り組むための一つのスキーム)が阻害されてしまうジレンマを抱えます。
迷走と分断
環境規制が厳しく、事業継続が難しくなる企業もでるため、経済が停滞します。利益を追求する企業と、環境を保全したい企業の対立が進み、互いにビジョンを共有できず、同じ目標に向かって一緒に走れない世界です。
日々是イノベーション
テクノロジーがどんどんイノベーションを引き起こすような社会になりますが、それは環境を重視したものではない世界です。
横河電機のシナリオプランニングの特徴は、将来を担う若手・リーダーが、新たな事業機会を社外の経営者や有識者との対話を通して、社内外のステークホルダーと未来を共創しBeyond SDGz(持続可能な世界への国際目標)の世界観をシナリオを作成し、企業変革を推進したことです
引用参照:ProSharing Consulting ホームページ
オリジナルのシナリオプランニングの事例
VUCA時代において、未来社会に向かってしなやかに対応するために、独自でシナリオプランニングを考案しました。個別にケースごとに業界軸、時間軸、地域軸を決める前の汎用性の高いベースシナリオ用です。
縦軸には、AI(人工知能)などの技術開発の人類に対する影響度合いとしました。人類が主体的に技術を使いこなし、よりよい社会発展に活用できるか、もしくは人工知能によって、人類の主体性や仕事が奪われが、技術の悪影響がまん延するかのシナリオです。横軸は、地球環境と人口動向です。環境破壊を起こしながら、少子高齢化もあり、人口が減少を続けるか、環境と人口が最適化し、共栄共存の関係となるかです。
滅亡と衰退
先進国の少子高齢化に歯止めがかからず、人口が増加していた発展途上国も、環境破壊のための公害の影響や子育てコスト増から人口減に転じます。AIの発達により、人類の仕事が奪われて存在意義をなくした人類は、荒れ果てた地球環境の中で次第に滅亡の道を進むことになります。
少数精鋭
環境破壊と人口減少は進みますが、AIなどデジタル技術の設計や、開発、管理に長けた一部の人類が、他を支配する時代です。社会は管理され、恩恵はエリートに集中され、大衆は考える力を失い、または奪われ、娯楽にふけることとなります。
コンピューターの支配
AI・デジタル技術と環境が調和し、人口は増加します。AIがAIを設計することとなり、人類の技術開発の主体性が失われます。人類はコンピューターによって支配され、環境への影響を抑えながら多数生存することとなります。生きる意義は、趣味趣向、芸術分野、対人交流となり、技術はコンピューターが全て支配する世の中となります。
地球環境と人類の共栄共存
人類は主体的に技術開発を行い、AIを設計・管理します。環境破壊を人類コンセンサスとして相互監視と協調によって抑えます。個人の尊重と人類社会全体の調和が、一人ひとりの意識の高まりの中で実現し、繁栄と発展の道を歩みます。核技術なども、兵器目的でなく平和目的で活用されます。
以上のシナリオプランニングにおいては、AIに支配されないように、技術開発の主体性と地球環境の調和を一人一人が意識し、取り組むことの重要性が浮き彫りになります。このように、シナリオプランニングは、起こりえる未来を想定し、現在それぞれがどのような意識をもってよりよい社会を目指すのかを明らかにすることができます。
そのほかのシナリオプランニングの事例
1981年までに、フォーチュン1000社の46%の企業がシナリオ手法を採用しました。その中でトップ100社については、75%超えていました。また、72%の企業が10年以上先のシナリオを考察していました。多数は、航空宇宙、化学、石油精製などの資本集約型産業です。
1990年以降においても、東欧の計画経済の崩壊など中央集権型の計画は存在意義を失う中、シナリオプランニングの技法は、米国を中心に世界に広がりました。
シナリオプランニング策定のプロセス・やり方・フレームワーク
経営トップの参画 あるべき姿のデザイン(前提)
シナリオプランニングの前提として、組織のあるべき姿、ビジョンを描きます。
「CEOが引退されたときには、どんなことを成し遂げた経営者として、後進に記憶されたいですか」「2030年には、会社はどのような姿で社会貢献し事業を継続しているべきでしょうか」以上のような問いかけをおこないます。あるべき姿やビジョンを描くのです。あるべき姿、ビジョンの描き方については下記投稿もご参考ください。
シナリオテーマの設定
組織のあるべき姿、ビジョンを達成するために方向性を決めるシナリオテーマ(時間軸・地域軸・検討テーマ)を設定します。検討したい課題や論点を明確にし、シナリオアジェンダを作成します。
シナリオチームの結成
会社の将来ビジョンの達成に、影響を与えそうな重要な要素に関係するできごとを収集して、現状分析を行います。そのうえでテーマを抽出して将来の展開を予想します。有識者の知見も活用して、ワークショップ形式でおこないます。
ワークショップにおいては、事業に重大な影響の与えそうなテーマを抽出し、解釈できるモデルを作成します。特に不確実性の高いテーマについて、何がこの不確実性をもたらしているのかを構造的に研究し、外部環境変化要因を選定します。
自社の市場・顧客・提供価値の整理
自社や業界のビジネス合わせた外部環境分析を行うために、自社の市場、顧客、提供価値を整理してビジネスモデルを定義します。
外部環境変動要因の洗い出し
シナリオプランニングでは、自社にとってインパクトが大きく不確実性が高い外部環境変動要因について重点的にシナリオを検討します。
インパクト
市場に及ぼす影響力です。事業の認可などの法改正や、疫病の蔓延、AI・IoTなどの画期的な技術革新などが該当します。
不確実性
将来のトレンドを予測するうえで、変動の大きい要素を示します。予測した未来を決めつけず、複数のシナリオを策定します。
マクロ外部環境分析
自社にインパクトを与えるマクロ外部環境分析にはPEST分析もあります。PEST分析で行った外部環境を複数の将来を想定したストーリーで考えるのがシナリオプランニングです。PEST分析と、経営戦略策定方法については下記の投稿もご参考ください。
マクロ外部環境分析のPEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)ですが、Legal(法律)、Environmental(環境)も加えた、PESTLE分析が活用されることもあります。
ミクロ外部環境分析
一方、ミクロ外部環境分析には、ファイブフォース分析があります。業界動向や競合各社の状況と収益構造を明らかにし自社の利益の上げやすさを分析するフレームワークです。シナリオプランニングでは時間軸・地域軸・検討テーマによって範囲を明らかにし、ミクロ外部環境分析を活用します。
ファイブフォース分析については下記投稿もご参考ください。
ベースシナリオの設定
外部環境要因には、不確実性の低いもの(設定期間中の状態が特定できるもの)と不確実性が高いもの(設定期間の状態が複数想定されるもの)が残ります。シナリオテーマに影響が大きく不確実性の低いもの(例えば少子高齢化など避けがたいもの)を整理して「ベースシナリオ」を作成します。
複数シナリオ策定
外部環境要因の中でシナリオテーマに与える影響が大きく、不確実性が高いものをもとに、複数シナリオを作成します。時間軸と地域軸を使って複数シナリオを作成します。
例えば、「都市集中か地方分散か」と「平均年収が増加か、減少か」では、それぞれ2つの可能性が考えられます。組み合わせると、「都市集中×年収増加」「都市集中×年収減少」「地方分散×年収増加」「地方分散×年収減少」という4つのシナリオを描けます。
シナリオ詳細分析・戦略オプション検討
複数シナリオの中で、戦略オプション検討につながる観点を組むためにシナリオ詳細分析を行います。先ほどの例では「人口と年収」について、4シナリオが描けましたが、自社の業界・事業の将来性とを結びつけられるように、詳細分析を行います。例えば、ディスカウントスーパーであれば、それぞれの4つのシナリオに対して、消費者はどのような購買行動をとるのか問いを検討します。
戦略オプションでは、複数シナリオをもとに対応策の案を検討します。どのようなシナリオになっても、シナリオプランニングの目的に対して、大丈夫であるための体制準備を検討します。
アクションと見直し
シナリオプランニングは実際の経営戦略実行と合わせて、定期的に見直しと振り返りを行います。より有効に活用するために、中長期的なマネジメントサイクルに組み込むことが大切です。
まとめ
シナリオプランニングの考え方は大企業のみならず、中小企業や個人にとっても、よりよく事業を継続し、生きていくためには重要です。
特に現代においては、不確実性と技術革新にスピードが加速しています。複数の未来のシナリオに備えることが大事です。これから影響度が高いとおもわれる環境変化要因について、最後に記載します。個人や事業は環境変化要因を追加選定し、さらに特性に応じてブレークダウンして活用しましょう。
環境変化要因例(VUCA時代を見据えて)
・コロナなど疫病の蔓延の継続、ワクチンの開発、変異種の発生
・南海トラフ地震などの大震災の発生
・都市圏の相対的地位の低下、リモートワークの拡大
・大容量、高画質、3Dシミュレーション情報の全世界同時共有、ユーザーの情報発信
・働き方の多様化、会社と社員の関係性変動
・日本人口の減少、高齢化と生産年齢人口の減少
・グローバルでの日本経済の相対的地位の低下
・AI・IoT・自動運転電気自動車などテクノロジーの進展と浸透
・2000年以降に成人を迎えたY世代や、1990年代後半以降生まれのZ世代など、新たな価値観を持つ世代が総人口に占める割合の増加
・世界人口増加と高齢化
・アジア・東南アジアの経済成長による世界経済の重心シフト
・地球温暖化などの気候変動による自然災害リスクの高まり
・新興国の成長による国際政治の複雑化・結合の進展・紛争の勃発
・ウクライナ紛争の長期化、西側諸国と中国・ロシアとの対立
・エネルギー政策の多様化、再生可能エネルギー技術の発展
・核融合技術の実用化
アフタコロナのニューノーマル時代については、下記投稿もご参考ください。
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