シナリオプランニングの技法、事例とアフターコロナ時代の活用方法

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シナリオプランニングの技法とは、起こりうる未来を予測して、適切な対応策をあらかじめ準備する方法です。事例研究で明らかなとおり、人であれ、会社・組織であれ、事前準備を入念に行うことことは、行動の質とスピードをあげるために大きな効果があります。

想定される悪い事態を予測し備えておくことは、リスクマネジメントにも有効です。想定内の未来であっても、シナリオを描くことによってよりよい未来を切り開く戦略をたてることもできます。本投稿では、シナリオプランニングの技法や事例、考え方について記載します。

シナリオプランニングの技法の必要性

ウィズコロナの現代において、シナリオプランニングの技法が見直されています。例えば、コロナが変異して死亡率が激増し、流行が収まらず常態化した場合、世界はどうなるのでしょうか。14世紀のヨーロッパで流行したペストによって、中世ヨーロッパ人口の約3分の1の命を奪われました。

逆にコロナが思った以上に悪性化せずワクチンや対策によって収まり、抑えられていたイベント企画が次々とおこなわれ、旅行、外食、アパレルの需要が伸び、思いによらず好景気になる可能性も残されています。

シナリオプランニングの技法と事例

シナリオプランニングの技法では、将来予想される重要な政治、経済のできごと、影響力のある組織、リーダーの意向から、世界を動かすロジックを組み立て、複数の将来像(シナリオ)を描きます。

ロイヤル・ダッチ・シェルの事例

シナリオプランニングの技法は、1965年に、ロイヤル・ダッチ・シェル(ヨーロッパ最大のエネルギーグループ)がロンドンで開始した「長期研究」と呼ばれる取り組みがスタートであるといわれています。

1971年と1972年では、産油国の影響力の増大によって、石油の支配権が欧米の石油メジャーからOPEC諸国にシフトし、原油価格急騰の可能性をシナリオとして提出しています。

「遠くない将来に原油の大幅値上げが起こる。世界の経済活動が停滞し石油需要は下落する」当時のシェルのトップは、「オイルショックシナリオ」を想定した全社的な戦略検討を指示し、オイルショック影響を、具体的に各部門のリーダーに考えさせました。

実際そのシナリオは、1973年10月に起きた第1次石油危機で実現されました。 セブンシスターズ(国際石油資本)の他社は、石油の供給能力の継続的拡大によって供給過多になり利益を失いました。

シェルは、エネルギー需要を正確に他社に比べ低く見積もっていました。シェルは迅速に、OPEC諸国以外での油田開発に取り組む一方で、あらゆる原油でも処理できるように製油施設を設計しました。結果、1970年代において、セブンシスターズ(国際石油資本)の中で地位は逆転しました。

その後も「天然ガスの台頭」シナリオを予測し、セブンシスターズ(国際石油資本)に先駆けて、液化天然ガス(LNG)ビジネスに参入しました。

ロイヤル・ダッチ・シェルは現在でも 、セブンシスターズ(国際石油資本)の中で、トップレベルのポジションにいます。今後、石油需要の減少を予測して「電力とLNGの会社」になることを掲げています。

日本企業の例で見ます。

ユニ・チャーム株式会社の事例

事業分野:不織布・吸収体の加工・成形分野で培ってきた技術を活かしベビーケア、フェミニンケア、ヘルスケア、クリーン&フレッシュ、ペットケアの5つの事業を展開しています。

ユニ・チャーム株式会社は、気候変動に関するリスクと機会を、事業戦略における重要な要素として捉えています。特に、注力しているアジアは、仮に気候変動に対する緩和策と適応策を取らなかった場合に最も影響を受ける地域としています。

シナリオプランニングに際しては、
・国際協調が進む、または各国が自国を優先することで国際協調は進まないという「国家間の関係性」
・気候変動の影響に伴い人々の環境意識が高まり環境政策が推進される、または人々の意識や政策において環境よりも経済成長の方が優先されるという「政策・人々の意識」という不確実性が高い2軸を選び、4つの異なるシナリオを描きました。

以上、ユニ・チャーム株式会社ホームページより引用
引用:ユニ・チャーム株式会社のホームページ

・2℃シナリオ
森林由来の原料価格は緩やかに上昇し、エネルギー価格は急激に上昇する。アジア地域のGDPは緩やかに成長し、当社のROEは現状維持されCAGR7%を維持できる。超長期的にも市場が拡大し業績も拡大できる(持続的に成長しアジア以外に進出)。

・2℃超シナリオ
森林由来の原料価格は速いピッチで上昇するが、エネルギー価格の上昇は抑えられる。相対的にコストは上昇するがアジア地域のGDP成長も加速して当社のROEも上昇し、CAGR7%は上振れする。超長期的には異常天候によって市場が縮小する。

・エゴ経済ファーストシナリオ
さらに気候変動が増幅されることで、森林由来の原料調達に制限がかけられる。しかしながら経済発展は進み、販売価格も販売量も上昇する。超長期的には極端な異常気象によって事業戦略の大幅な修正が必要となる。

以上、ユニ・チャーム株式会社ホームページより引用

シナリオプランニングの技法の進め方

経営トップの参画 あるべき姿のデザイン

「CEOが引退されたときには、どんなことを成し遂げた経営者として、後進に記憶されたいですか」「2030年には、会社はどのような姿で社会貢献し事業を継続しているべきでしょうか」以上のような問いかけをおこないます。あるべき姿やビジョンを描くのです。

あるべき姿、ビジョンの描き方については下記投稿もご参考ください。

シナリオチームの結成

会社の将来ビジョンの達成に、影響を与えそうな重要な要素に関係するできごとを収集して、現状分析を行います。そのうえでテーマを抽出して将来の展開を予想します。有識者の知見も活用して、ワークショップ形式でおこないます。

ワークショップにおいては、事業に重大な影響の与えそうなテーマを抽出し、解釈できるモデルを作成します。特に不確実性の高いテーマについて、何がこの不確実性をもたらしているのかを構造的に研究し、環境変化要因を選定します。

経営戦略の策定

環境変化要因から仮説を立てて、あるべき姿、ビジョンの達成戦略・計画に関係してくる未来世界を、複数にかき分けます。時間軸を使ってシナリオを作成し、ビジネス環境の変化と対応策のアクションプランを、時間を追って順序だてて作成します。

出典:ローランド・ベルガー「環境変化要因の選定」

まとめ

情報が公開されている有名な大企業を中心に、シナリオプランニングの技法を見てきました。しかし、この考え方は、中小企業や個人にとっても、よりよく事業を継続し、生きていくためには重要です。

特に現代においては、不確実性と技術革新にスピードが加速しています。複数の未来のシナリオに備えることが大事です。これから影響度が高いとおもわれる環境変化要因について、最後に記載します。個人や事業は環境変化要因を追加選定し、さらに特性に応じてブレークダウンして活用しましょう。

環境変化要因例

・コロナなど疫病の蔓延の継続、南海トラフ地震などの大震災の発生

・都市圏の相対的地位の低下、リモートワークの拡大

・働き方の多様化、会社と社員の関係性変動

・日本人口の減少、高齢化と生産年齢人口の減少

・グローバルでの日本経済の相対的地位の低下

・AI・IoT・自動運転電気自動車などテクノロジーの進展と浸透

・2000年以降に成人を迎えたY世代や、1990年代後半以降生まれのZ世代など、新たな価値観を持つ世代が総人口に占める割合の増加

・世界人口増加と高齢化

・アジア・東南アジアの経済成長による世界経済の重心シフト

・地球温暖化などの気候変動による自然災害リスクの高まり

・新興国の成長による国際政治の複雑化・結合の進展・紛争の勃発

・エネルギー政策の多様化、再生可能エネルギー技術の発展

プロフィール
顧客志向研究所
顧客志向経営研究所

経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士です。
上場企業経営者から、中小企業、個人事業主に至るまで、数百の経営者の相談業務、ファシリテーション、社員教育の実績があります。
中立的な立場で、課題解決に役に立つ情報提供を行うことを理念としてます。

そのほかの主な経歴
・外資系生命保険株式会社に在籍し、顧客課題のヒアリングから法人契約営業近畿地区2位(キングオブキングス賞)

・MDRT(全世界74か国生命保険営業上位1%の成績基準達成)

・上場直前ベンチャー企業にて採用人事企画の経験

・上場コンサルティング会社での営業経験

・経営改善計画の策定経験(信用保証協会 バンクミーティング)

営業人材育成・人事分野から事業計画策定を得意としています。

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