サブスクリプションとは、定額で受けられる顧客視点のサービスの総称です。
百科事典など出版事業から始まりました。現代では「所有から利用へ」という消費者の価値観の変化にともない、ソフトウェア、音楽や動画のデジタル配信、飲食、自動車、ファッション、教育、など多様な分野で伸び続けています。
サブスクリプションの顧客視点のサービスの事例を考察します。
サブスクリプションの歴史・経緯
サブスクリプションは、17世紀のドイツで発祥されたといわれています。
当時ヨーロッパでは、書籍を出版する計画があると、購入予約によって資金回収の見通しがを立ててから、執筆・編集・印刷・配本と進めました。
ドイツの百科事典の出版社は、事前の顧客から資金を徴収し、分冊という形で百科事典を定期的に提供しました。これが、サブスクリプションの先駆けといわれています。
近年においては、電車やバスの定期券、新聞や牛乳の定期購読が、サブスクリプションの一種であると分類されます。
現代においては消費者の行動が「所有から利用」に変化しています。
理由の一つ目として、節約志向の中、購入ではなく必要な時だけ利用する考え方の広がりです。
二つ目は、モノよりサービスに価値を見出されるようになったことです。
三つめは、「物の豊かさ」より「心の豊かさ」への変化です。
「これからは心の豊かさか、まだ物の豊かさか」という質問に対して「心の豊かさ」と回答したのは62.0%、一方の「物の豊かさ」は29.6%となっています(2019年内閣府世論調査)
消費者意識の変革において、サブスクリプションビジネスは顧客志向で進化を続けています。
サブスクリプションは様々な分野で拡大し認知度も広がり、「2019ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたました。
市場は拡大しており、2019年の市場規模は約6,835億円でしたが、2022年には1兆円を超える規模になると見込まれています(参照:株式会社矢野経済研究所)
サブスクリプションの事例
セールスフォースドットコムの事例
セールスフォースドットコムは、オラクル史上最年少のヴァイスプレジデントであるマーク・ベニオフによって1999年設立されました。
SaaS(インターネット経由、ブラウザー上でアプリケーションを利用する)のタイプの本格的なクラウドコンピューティング・サービスの提供企業としては最初とされます。
契約期間中は商品やサービスを何度でも利用できる、月額定額制度を導入しサブスクリプションの事例にあげられています。
受動的なカスタマーサポートから進化した、能動的に顧客に関わるカスタマーサクセスを掲げています。顧客の事業における成長を後押しし、その成功を促進するために力を傾けています。
セールスフォースドットコムの業績は順調です。2021年1月期には、売上212億ドル、営業利益4億5百万ドルを計上しました。
Netflix(ネットフリックス) 動画視聴サービスの事例
Netflix, Inc.(ネットフリックス)は、1997年に設立された米国カリフォルニア州に本社を置く、動画配信サービス企業です。
オンラインでのDVD配達サービスとして始まり、2007年から動画ストリーミングサービスを開始しました。
無料のお試し期間があり、月額定額で動画見放題です。
全世界2億366万人の有料プラン利用者(2020年末同社発表)がいます。
ハイクオリティなオリジナル作品が特徴です。
コロナによる「巣ごもり」の影響もあり、業績は堅調です。
サブスクリプションの事例(飲食)
焼肉チェーン「牛角」(三軒茶屋店、花見川店、赤阪店限定)は、通常3,480円で90分食べ放題の「牛角コース」を11,000円で1日1回1ヶ月間利用できる「焼肉食べ放題PASS」を提供開始しました。
2019年11月29日に開始しましたが、人気がありすぎて一般客に支障が出るなどして2021年1月に終了しました。
サブスクリプションの事例(音楽)
スウェーデン発の「Spotify」は、世界92カ国でサービスを展開し、月間アクティブユーザー数約2億9900万人、有料会員数1億2,000万人と世界最大シェアを誇ります。
一か月無料体験で、5,000万曲にフルアクセスできます。競合はApple Musicです。
サブスクリプションの事例(車)
Honda マンスリーオーナー
所有しているように自由にクルマが使え、最短1ヵ月で乗り換え・返却ができるので、ライフステージの変化にも安心です。
リースは、長期利用を目的とし原則として契約途中の解約もできません。
サブスクリプションのメリット・デメリット
サブスクリプションの利用者メリット
入会、解約が簡単にできます。
無料のお試し期間などで、購入前にサービスを確認することができます。
月額定額制のため、一時に多額の現金が不要です。必要資金の計画が立てやすいです。
モノを所有することなく、必要な時に必要な分調達することができます。スペースを有効活用できます。
サブスクリプションの利用者デメリット
利用状況に関係なく、月額の料金がかかります。
長期間の月額利用料が累積すると、割高になる場合があります。
サブスクリプションの提供側のメリット
継続した安定的な売り上げが見込めます。
無料お試し期間などで幅広いユーザーの情報が収集できます。
入会のハードルが低く、新規開拓がネット経由などでも見込めます。
継続した顧客の関係づくりを行い、顧客視点での新商品開発やサービスの拡充が行えます。
サブスクリプションの提供側のデメリット
商品の販売と違い、投下設備投資の資金回収に時間がかかる場合があります。
ネットの場合幅広く集客ができる反面、協業の参入障壁が低く、競争が激しいことがあります。
まとめとウィズコロナ
サブスクリプションは、利用者側にとっても、提供側にとってもメリットあるビジネススキームです。
さらにウィズコロナによって、ネット経由の自宅と周辺で完結するサブスクリプションビジネスが伸びました。
使用期間中に無料で実際にサービスに加入し、事前にサービスを体験できるという点が、顧客視点に立脚しています。
ネットでグローバルで均一のサービスを提供できる特性もあり、時代の流れとして重要性が増すと思われます。
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