AI(人工知能)とは AI経営 経営革新の事例とあるべき人材像

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AIとは、「人工知能」と訳されます。AIは人間の言葉の理解や認識、推論などの知的行動をコンピュータに行わせる技術のことです。AI経営は、ビジネススキームにおいて、AI(人工知能:artificial intelligence)を有効利用して競争優位を確立する経営です。AIが、ビジネスプロセスにおいてどのように活用されているのか、そして将来どのような範囲において、新たなる付加価値を生み出す可能性があるかについて事例を交えて見ていきます。また、AIが社会的にますます役割が増す中で、人の行う役割やあるべき姿についても考察します。

AI(人工知能)とは 

1943年にアメリカ合衆国の神経生理学者ウォーレン・マカロックと論理学者・数学者のウォルター・ピッツが「神経活動に内在するアイデアの論理計算」と題する論文で、脳機能に見られるいくつかの特性に類似した数理的モデルを発表しました。

これが、AIの柱となるニューラルネットワーク研究(注)の理論的な礎となりました。

以降、計算機能の制約がありながらも研究開発は進められました。2006年には、多層の人工ニューラルネットワークによる機械学習手法であるディープラーニング(深層学習)が発明されました。

インターネット情報などのビックデータ収集環境の整備され、画像描写を行う際に必要となる計算処理を行う半導体チップであるGPUの高性能化は、AIの進化を加速させました。

音声・画像・自然言語を対象とする諸課題に対し、高い性能を発揮できるようになり、現在は人工知能の第三次ブームを迎えています。

ニューラルネットワーク

ニューラルネットワークとは、脳機能に見られるいくつかの特性に類似した数理的モデルです。

脳内の情報の伝わりやすさは、ニューロン同士を結ぶ「シナプス」の結合強によって変化します。

ニューラルネットワークではこの強度を「重み」と表現し、正しい出力結果を得るためには入力されたデータに対して、重みを最適化し求める答えを導きます。

ニューラルネットワーク概念図
ニューラルネットワーク概念図

機械学習とは

機械学習とはAIの領域の一つで、経験からの学習により自動で改善する、コンピューターアルゴリズム(計算方法)です。「学習データ」を使って学習し、学習結果を使って何らかのタスクを行います。

機械学習の例としては、過去のスパムメールを学習データとして学習し、スパムフィルタリングというタスクを行うことができます。また、天候、価格、販促などの要因と過去の売上を学習データとして学習し、「将来の売上を予測する」といったタスクなどがあります。

教師あり学習

事前に与えられたデータを、例題(教師からの助言)とみなし、それをガイドに学習を行います。教師あり学習の典型例は以下の通りです。

  • 回帰問題:入力データから数値の予測します。
  • 分類問題:データが属するクラス(例:Yes・No)を予測します。

教師あり学習の活用事例としては、飲食店の来店予測によって適正な従業員のシフト調整ができ人件費コストの改善が見込めます。また、あらかじめ画像正解データ(例:女性・猫)を学習させ、新たな画像の判定(女性・猫)をAIにさせます。

教師なし学習

教師あり学習と違い、「出力すべきもの」があらかじめ決まっていません。活用方法は、データの背後にある本質的な構造の抽出です。例えば、ネットショッピングにおけるレコメンデーション(顧客のおすすめ情報)のロジックに活用されます。教師なし学習の典型例は以下の通りです。

  • 主成分分析:多くの量的な説明変数を、より少ない指標や合成変数に要約します。
  • ベクトル量子化:連続空間にあるベクトルを有限個の代表ベクトルへ離散化します。
  • 自己組織化マップ:高次元データを2次元平面上へ非線形写像するデータ解析方法です。
  • クラスター分析:異なるものが混合している集団から、類似したもの集めてクラスター(集落)を分類する方法です。

教師なし学習例として、アメリカのウォルマートで物品販売量と顧客の購買情報に関するデータを収集・分析した結果、おむつと同時に一番多く購入される商品がビールであることが判明しました。

またあらゆる化学物質におけるがん細胞の画像を分析する抗がん剤シミュレーションも、教師なし学習の例として挙げられrます。

強化学習

ある環境におけるコンピューター エージェントが、繰り返し試行錯誤のやりとりを重ねることによってタスクを実行できるようになる手法です。例えば、入力データから歩行距離を予測するのではなく、ロボットが歩行距離を伸ばしていくことをタスクとし、自ら新たな歩き方を試行錯誤し、その結果を学習しながら最適な歩き方のためのルールやアルゴリズムを発見する方法です。強化学習の典型は以下の通りです。

  • TD学習:時間的差分学習、環境の知識を必要とせず、経験だけを頼りにエピソードの終了まで待たずに状態価値関数や行動価値関数を更新します。

強化学習のその他の例として、Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラム「アルファ碁」が、2017年5月に、人類史上最強と言われた柯潔(かけつ)との三番勝負で3局全勝を挙げ、人間との対局から引退しました。アルファ碁は、100万回を超える自身との対局で、さらに強化されています。

ディープラーニング(深層学習)

全体像から細部までの粒度の概念を、階層構造として関連させて学習し、人が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつです。画像処理が得意としており例として、交通標識を認識したり、電柱と人を区別するのも、ディープラーニングを活用した技術です。また、ChatGPT(テキスト生成AI)やその他の生成AI(画像・動画・音声)はディープラーニングを活用しています。

深層強化学習といって、強化学習の中でもディープラーニングを取り入れ、さらに複雑なゲームや制御問題を解決できるようになりました。

AI技術概念図

AI経営の事例

株式会社メルカリの事例

ビジョン:新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る

AIの画像認証技術を活用しています。出品したい商品の写真を撮ると、AIが自動でブランドや商品名の候補をリストアップする機能と、違反出品物の検知機能をリリースしています。

参照:株式会社メルカリ ホームページ

株式会社ディー・エヌ・エーの事例

ビジョン:インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデイライトを届ける

お客様探索ナビ

走行中のタクシー⾞両から収集するプローブデータ(⾃動⾞が⾛⾏した位置や⾞速などの情報を⽤いて⽣成された道路交通情報)を解析し、カーナビゲーションのように乗務員をリアルタイムかつ個別にお客様が待つ通りまで誘導します。

特徴:乗務員が普段使い慣れているUI(ユーザーインターフェイス)に落とし込んだ点です。単にエリアの需要予測をするだけではなく、他のタクシーの供給量も加味しながら道路レベルで最適な経路を推薦します。

期待効果:乗務員は道に慣れない新人の方でもすぐに収益を上げることが期待され、歩合制でも安心して就労することができます。

参照:株式会社ディー・エヌ・エー ホームページ

業務プロセスにおけるAIの活用事例と可能性

人事・採用業務の事例

アマゾン・ドット・コム・インク

アマゾンでは、2014年に書類選考にAIを導入しました。人工知能を使用して、求職者に1つ星から5つ星までのスコアを与えました。しかし、新しい採用エンジンは女性に不利になることがわかり、AI採用を運用取りやめを決定しました。

原因は、10年間にわたって会社に提出された履歴書のパターンをAIが観察することにより、応募者を精査するように訓練されていましたが、ほとんどが男性からのものであったことから、システムは男性を採用するのが好ましいと認識したためです。

参照:ロイター記事 2018年10月11日

一方、ゴールドマン・サックスは独自の履歴書分析システムによる最適人事配置に取り組んでいます。人事業務において、面接時の言動や表情を分析するシステムも実用されてますが、 人の最終判断の、補助資料の位置づけが現状です

サッポロビール株式会社

サッポロビールでは、新卒採用のエントリーシート選考において過去のデータを学習させたAIに応募者のエントリーシートを読み込ませて、合格基準を満たす評価になった応募者を選考通過とし、それ以外は従来通り、人事担当者がすべて内容を確認し、最終的な合否を行うことにしました。

参照:サッポロビール 2018年3月1日 ニュースリリース

両者の事例から、AIの親和性の高い書類選考においても、まだ人の手を介す必要性が浮き彫りになっています。

今後の人事分野のAI活用として(一部は実現)、離職者予防、優れた社員の行動特性分析、人事評価の補助指標としてのデータ解析などが期待されます。

営業・販売の事例

株式会社 ジンズ(アイウエア及び服飾雑貨の企画、製造、販売及び輸出入)

ジンズでは、独自のAIによるメガネの似合い度判定サービス「JINS BRAIN」を搭載した通称”ブレインミラー”を店内に3台設置しました。

気になるメガネを掛けて鏡の前に立つだけで、そのメガネが似合っているかを男性目線・女性目線それぞれから瞬時に判定できるので、自分のペースで、気軽に似合うメガネ選びをお楽しみいただけます。

参照:株式会社 ジンズ ホームページ

SREホールディングス(ソニーグループの不動産販売会社)

SREホールディングスでは、AIを活用しているMA(マーケティングオートメーション)のPardotの導入(セールスフォース社)により、メールマーケティングの実施、キャンペーン業務の効率化、問い合わせ数の増加(6ヵ月で2.5倍)といった成果を上げています。

参照:株式会社セールスフォース・ドットコム ホームページ

注:MA(マーケティングオートメーション):収益向上を目的としてマーケティング活動を自動化するツール

営業・販売分野においては、集客から購入の意思決定に至るプロセスの効率化がAIの得意分野です。また、チャットボット(「chat(対話)」と「bot(ロボット)」という2つの単語を組み合わせ)による顧客対応も活用分野として広がりつつあります。

AIによるチャットボット体験したのですが、現段階では人のように、きめ細かい対応はできません。顧客一時対応、例えばコールセンター業務のフロント部分においては、AIの活用範囲を広げていくでしょう。

生産・製造の事例

AIがすでに実績のある分野は、サプライチェーン(供給連鎖)における需要予測と検査機能です。特にAIの画像認証の機能が発揮できる商品検査の分野では、多くの成功事例があります。(下記サイト参照)

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需要予測の情報は、在庫の最適化、経営計画にも有効活用できます。ビックデータを扱うことが得意なAIの活躍が期待できる分野です。

AI経営とは

AIを経営のプロセスに取り入れ、経営の変革を実現します。企業活動のバリューチェーンにAIを組み込み、新たなるビジネスモデルの構築し、現状把握から意思決定・実行までの高速し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現します。

DXについては、下記投稿もご参考ください。

デジタルトランスフォーメーションとは

AI活用の留意点

AIをはじめとするデジタル技術は、2進法(0、1)が基本です。あいまいな状況判断は得意ではありません。

例えばAIの自動運転においては、事故不可避時における倫理的な選択判断が、きめられない問題が指摘されています。

例①:道路上に5人、ハンドルを切ればその5人は避けられますが、近くにいた他の人を1人轢いてしまいます。このときAIはどうハンドルをきればよいのでしょうか。

例②:前に穴がありハンドルを切れば、自分の車は助かるが歩行者を轢く、ハンドルを切らなければ、自分の車が事故にあいます(同乗者数も加味する)

法律上は、功利主義(数と社会的影響)をとっています。

プログラミングオーダーの方向性は国民性にも影響します。

日本では、他人を犠牲にしない、アメリカでは、自分の命と自分の自動車の資産価値を優先したいなどです。

AI経営時代における人の役割・あるべき姿

マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、AI(人工知能)が人間の雇用の一部を奪おうとしているが、それを食い止める術は少ないと述べました。AIの進化は、人のあるべき姿を再考する機会です。

囲碁を例にとってみましょう。チェスならば盤面のパターンは10の120乗、将棋ならば10の220乗です。囲碁は19路盤、10の360乗以上という膨大な場面のパターンがあり、人類対AIの(ゲーム分野のおける)最後の牙城といわれていました。

しかし、2017年5月グーグル・ディープマインド社が開発した、AI「アルファ碁」が、人類最強棋士との呼び声高い中国の柯潔(カ・ケツ)=世界レーティング1位(当時)と対決し、アルファ碁が3連勝で柯潔にストレート勝ちしました。

アルファ碁は、何千万回にも及ぶアルファ碁同士の対決で、最善の一手を追求し学んでいます。人類は本当にAIに敗北したのでしょうか。

AI「アルファ碁」は、囲碁というルールの中で、最強を究めることはできました。しかし、囲碁というゲームを生み出すことや、ルールそのものを決めることはできません。

同様なことは数学の問題にも言えます。定められたルールの中で、最適解を発見することについては、AIは得意です。しかし、人類がまだ未解決の数学の命題はたくさんあります。AIにそのような命題そのものの創造は、今のところできません。

アマゾンの例を見ても、業務におけるAIはまだ、判断、決定という意思決定は人によらなければなりません。判断、決定には責任がつきものですが、AIは責任を取ることができないからです。AI経営と表題を付けましたが、AIが経営するわけではありません。AI(を活用する)経営です。

AIは手段であり、目的ではありません。ここに人の役割の方向が見えます。人のあるべき姿とは、仕事自体の目的やビジョン、価値観を定め、判断・決定し、責任を取ることではないでしょうか。

あるべき姿については、下記投稿もご参考ください。

あるべき姿とは

AIは、データを収集すること、データを解析すること、解析結果をもってさらに仮説を立てて、分析を進化させることまでは、画期的な働きを見せています。しかしAIをもってしても、人類の脳の機能はまだまだ解明されていません。AIは人を愛することもできません。幸せを感じることも今のところできません。

人の役割とは、AIに対して、「社会や人の生活をよりよくする」という命題を具体的・個別に設定することではないでしょうか。また人のあるべき姿は、AIを活用するための環境を企画・整備し、よくなった生活を享受し、幸せになることとだと考えます。

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