人材採用とは 考え方と離職防止について

人事 キャリア

人材採用とは、企業にとっては成長発展に欠かすことができない重要な要素です。多くの企業にとってみれば、人材は企業競争力の源泉です。

一方では、想定していない人材の離職は、企業経営に想像以上に悪影響を及ぼします。この投稿では、人材採用の考え方と離職防止策について、記載します。

人材採用の基本的な考え方

人材市場は、好景気の場合は売り手市場です。不景気の場合は買い手市場です。良い人材は、不景気の際に採用しやすいです。

人材は採用したからと言って即座に活躍できるとは限りません。採用された会社の個別の業務内容や、職場になれる必要があります。

最も合理的な人材採用戦略は、不景気時に採用を行います。景気にはサイクルがありますので、人材が戦力化したころに、好景気の多忙時期に備えるというものです。

好景気で多忙のためや、離職者が出たからあわてて人材募集を行うというのは、よく見られがちです。人材の教育するゆとりもないため、業務の混乱を招いたりして実は合理的ではありません。

採用のサイクル

新卒採用

定期的な新卒採用は、企業の年齢構成のバランスをとる上で重要です。一般的なビジネスマナー研修も必要ですが、学生の意識から、社会人への意識には隔たりがあります

それは、「お金を払って教育を受けていた身」から、「お金をもらって会社に貢献していかなければならない身」の違いです。

プロのビジネスパーソンとしての意識改革が必要です。その意識を変えるのは、上司や先輩社員の役割が大きく、組織だった体制が必要とされます。

新卒採用にはインターンから囲い込み、アルバイトからの採用、学校や部活動、研究室推薦、媒体による募集、リクルーターによる勧誘と選考があります。

新卒採用はポテンシャル重視です。ポテンンシャルの定義は様々なものがあります。

将来像を具体的に描いている。

すなおで、即座に実行することができる。

自身の向上のための努力を、習慣として行っている。

コミュニケーション能力が高く、調整力がある。

技術が好きで、探求心が旺盛である。

学業、スポーツ、趣味において突き抜けた実績を持っている。

面接においては、具体的なエピソードで以上のポテンシャルをはかるとよいでしょう。学生のうちの成果には、大きく差が出ないかもしれません。成果を出そうとしたプロセスにおける取り組み姿勢を聴くことによって、ポテンシャルが垣間見えるはずです。

採用のポイント

すべての採用業務に共通して言えるのですが、採用選考は、こちらが選ぶと同時に、候補者からも選ばれています。応募がなければ、採用することはできません。

内定を出しても入社してもらわなければ、意味がありません。入社してもらっても、戦力化して定着してもらわないと、採用にかかわるコストと手間が無駄になってしまいます。

人材採用は、応募者から選んでもらう意識がまず必要です。

応募者はまずホームページで応募企業の情報を得ようとします。ホームページには、経営者の理念、従業員、取引先、社会への想いを書くべきです。

業歴は企業の安定をはかる一つの目安になるので、企業の沿革はしっかり記載するとよいでしょう。

出資先や取引先に優良企業があれば、信用力になります。入社後の業務イメージがわかるように、先輩社員の紹介やエピソードを書きます。選考のプロセスや退職金制度などの人事制度、福利厚生制度もポイントになります。

インターンやリクルーターを活用するのであれば、事前に会社の雰囲気や良さを、直接応募者に伝えることができます。

面接時には、面接者によっての評価のむらを防止し、次のステップへの申し送りのために評価シートを利用するとよいでしょう。評価シートについては、別の投稿でサンプルを提示します。

採用面接の際の注意点

志望動機、自己PRはもちろん大事です。しかし、候補者は事前準備をしている場合が多いです。準備された内容を聞いても、候補者の評価を十分に行えるとは言えません。

お勧めしている手法があります。模造紙プレゼンです。この方法は事前の準備ができないため、候補者の素顔を見ることができます。

候補者が入室したら、模造紙と色ペンを渡します。時間を決めます。5分~10分で、生まれてきてから人生で頑張ったことを項目にして書いてもらいます。

アドバイスとしては、最初にできるだけたくさん書くように依頼します。

数を書こうと候補者は一生懸命になりますので、ありのままの頑張ったことが模造紙に書かれます。

書き終わったら、模造紙を壁かホワイトボードに張り出します。候補者に模造紙を使って自分のこれまでの人生の紹介をしてもらいます。

事前に用意した作られた自己PRと違い、候補者の人生の歩みと人となりが良く出る方法です。模造紙を用意するなど多少手間がかかりますがお勧めです。

模造紙の項目に従って、質疑応答の時間をたっぷりとります。候補者の考え方や人となりが、かなり理解できるはずです。

そのほか、候補者の本来の姿を見るためには、課題を与えて、グループワークも有効な手立てです。

採用面接のプロセス

面接のプロセスは、会社の方針次第です。可能な範囲で、現場の管理職の方に選定させるべきです。そのうえで、経営者、役員級で最終面接を行います。

中小企業でよくあるのが、経営者のみが面談して、現場に配属するケースです。現場の責任者としては、自分で選んでいないので、育成に身が入らなかったり、責任を回避する場合が見られます。

経営者、役員級の最終面接も行うべきです。現場だけで決めると責任が取り切れないためです。

中途採用

新卒採用と違う点は、基本的なビジネスマナーができていることが前提である点です。また、業務経験があるために、育成に時間がかからないのがメリットです。

中途採用の方法には、ハローワーク、採用エージェント、縁故採用、採用媒体などがあります。

中小企業で特におすすめなのは、従業員の満足度を高め、従業員から知り合いを紹介してもらうことです。従業員は紹介した手前、知り合いの入社後も相談役になってくれたり、育成で協力的になってくれるはずです。

中途採用面接の際の留意点は以下の通りです。

離職理由の質問

中途採用のデメリットは、早期の退職リスクです。会社に対する忠誠心については、新卒よりもない方と考えた方が良いでしょう。そこで大事なのが、前の職場でなぜ辞めたかの確認です。

多くの候補者はネガティブなことを言わないように対策をしています。差支えない範囲で突っ込んで聞いてみることです。

不満があっての離職は、繰り返す性質があります。転職は一般的には35歳、3回までといわれている理由の一つです。ただし要求水準の高い、マネジメント職、高度な専門職、外資系は除きます。

業務内容についての質問

関係する業務内容については、具体的に深く質問するべきです。

業務全般、自分の役割、実績などです。業務への精通度合いは、業務の話を詳しくきくことによって、把握することができます。

採用調査について

中途採用の場合調査会社に依頼して、人物調査を行うことがあります。個人情報保護法施行以降、前職に問い合わせてもなかなか情報開示を行ってくれないケースがありますが、慎重な会社ではまだ人物調査を行うことがあるようです。

調査会社を使わない場合も、人事部独自でインターネットで名前で検索したり、SNSの投稿などをチェックする場合もあります。

候補者によっては前職給与を高めに申告して、入社時の条件を良くしようとすることがあります。入社条件交渉時に源泉徴収(前年度所得が会社にわかる)について触れれば、うそをついているのがわかります。

口コミサイト

採用の現場では常識ですが、候補者は採用や会社の口コミサイトを見てきます。採用のプロセスにおいて、十分に気を付けるべきです。従業員満足度を高め、ネガティブな情報が流れないようにしましょう。

中途採用と新卒採用については下記投稿もご参考ください。

人材の定着化による離職率低減

早期の離職の理由の一つに人材のミスマッチがあります。採用側としても、採用される側としてもこんなはずではなかったという離職を防ぐには、採用時の相互理解をすすめることです。

人材採用において理想なのは、採用に至るまで十分な時間と回数を重ねることです。ただし多くの企業では、なかなかそのゆとりを持つことは難しいのは実情です。また、候補者側としても早く内定をもらいたいので、他社への流出を招きかねません。

内定は早期に出し、入社に至るまで時間と回数を重ねることによって、会社のことをよく知ってもらい、入社後にこんなはずではなかったとギャップがないようにすることはできます。

新卒の場合は同期のつながりを利用します。同期が仲が良いと、内定辞退や離職の抑止力(離職率低減)になります。早い段階で交流を持たせるように配慮するとよいでしょう。ただし同期のつながりが強いと、連鎖的に離職する場合もありますので注意が必要です。中途採用であっても、研修を一緒に行うなど、採用時期が近い仲間を作るようにするとよいでしょう。

離職を防ぐ方策は、本質的には経営・マネジメントの手腕と職場の雰囲気です。経営者や上司は、社員の声に耳を傾けることが離職率低下にとって大事です。

もちろん社員の声にすべて言いなりになる必要はありません。しかし、幅広く公平に社員の声を拾い上げることは、職場の風通しを良くし、組織の生産性向上に役に立ちます。

従業員満足度を高める方法については下記投稿もご参考ください。

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人材採用(会社の視点)

ゼネラリスト志向

製造業を中心に日本企業の伝統的な強みの源泉になってきました。新卒採用など定期採用で年齢、社歴のバランスを取ります。3年スパンで人材を教育育成します。

業界や、業務知識、会社の文化に慣れたうえで戦力化します。ここでの採用の視点は、素直さ、地頭の良さなどポテンシャルが重視されました。

加えてリクルーターの先輩社員の通じて判断される、一緒に働きたいかどうかという人柄です。

スペシャリスト志向

新興国の躍進のよるグローバル市場の競争激化や、ITをはじめとする産業構造の変革のスピードアップから、業界によっては、以前とは異なった人材採用の考え方が浸透しています。

一例として社内外から、職務・役割に対して人財を割り当てるジョブ型雇用です。ポスト(役割)一つに対して、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)が用意されていることが前提です。

ここでの採用の視点は、業務知識、実績と経験などの即戦力が優先されます。

ジョブ型雇用の進化が、業務委託などのジョブ単位での外注化です。

リモートワークが普及し、少子高齢化によって社会保障制度が揺らいでる現在においては、今後ジョブ単位で仕事をする個人事業主の増加が予想されます。

M&A

人材採用の手段としては、M&Aもあります。会社の強みである、ノウハウ、商圏、技術力は人財が源泉になっています。

組織ごと買収すれば、育成の時間が短縮できます。M&Aにおける留意点は、買収会社と被買収会社の融和です。

成功のコツとしては、決して買収会社が自分たちの文化、やり方を押し付けないことです。被買収会社に寄り添って、一緒に価値観を共有化する姿勢が大事です。

人材採用(応募者の視点)

私自身、転職の経験から応募企業についての見るべきポイントについて学んできました。以下の通りです。

経営者の人柄と考え方

同じような価値観の人は、集まる性質があります。会社組織においても同様のことが見られます。

会社の価値観でもっとも影響力のあるのが経営者です。経営理念や経営者挨拶をホームページで確認することも大事ですが、よい面・伝えたい面しか見れないことが多いです。

近年においては、フェイスブックやTwitter で発言する経営者も増えてきました。SNSでのやり取りは、本来の姿が出やすいです。

直接経営者と面談の機会があるならば、気後れせずに、経営者の人となりを感じましょう。ここで違和感があると、後々問題になることが実際にありました。

上司、人事担当、面接者、先輩社員

採用プロセスで直接話をする機会があります。もちろん選考の場なので、先方の質問にしっかり答える準備は行うべきですが、一方で、大事な人生の選択なので、面接官の人柄をよく見るようにしましょう。

これも経験上なのですが、面接官のことをしっかり知ろうとした方が、自己PRに一生懸命になるよりも意外と評価されたり、良い面接になる場合が多いものです。

面接はコミュニケーションの場です。新商品のプレゼンテーションの場ではありません。応募者自身をよく知ってもらうことはもちろん大事ですが、応募者が面接官の人となりを知ることもまた大事なのです。

先輩社員については、リクルーターや大学の先輩、インターンなどを積極的に活用するとよいでしょう。

会社の沿革、業界、強み、弱み

志望動機の重要なポイントなので、可能な限り情報を収集します。重要なのは、自分が興味をもって続けていけるかどうかです。

消費者向けの製品があれば使ってみることです。自分の価値観や生きる目的である使命に立ちかえります。自分の在りたい姿、あるべき姿へ積み重ねができる職場を選ぶべきです。

年齢、職務経歴や経済状況によっては、なかなかこちらから選択することが難しい場合もあります。妥協も必要ですが、わかって入るのと、入ってから気づくのでは心の準備と対応が異なります。

逆に言うと、あわてて職を探す局面にならないような日ごろの心がけが、転職の成功要因です。

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人材マッチング

会社と応募者、それぞれの視点を見てきました。会社にとっても、応募者にとってもよい人材マッチングとは、互いに理解したうえで方向を合わせて入社するです。

価値観が共有化できると、所属意識が高まり、自然に長く活躍することが期待できます。近年においては、SNSによって、個人が容易に発信できる時代になりました。

書類やホームページ、面接などの従来のコミュニケーション手段に加え、ファイスブックやツイッター、インスタグラムなどで経営者や人事担当者、人材エージェントがアカウントをもって活発に発信しています。

個人の発信から様々なことがわかります。価値観、物事に対する姿勢、夢中になって取り組んできたことなどです。

ウィズコロナの時代で、ZOOMやLINEなども加え、ますますリモートコミュニケーションの活用が、人材マッチングの重要な要素となりました。

入社後の成長と人材育成

入社後は、お互いすでに選択し意思決定したことです。話が違うなどど考えても何事も生み出すことはありません。

選んだ選択肢を正解にするべく、お互いに歩み寄る気持ちが大事です。ネット社会が発達し、よいことも悪いことも全世界に拡散される時代です。

いまだに試用期間中の解雇や離職が行われていることを知っていますが、そのような心構えでは、これからの時代は生き抜いていくことは難しいでしょう。

決めた以上は、会社は、人材を戦力にすべく、応募者は、戦力になるべくお互いに心を一つにして、成長と教育を行うべきです。意見や提案は良いのですが、単なる不平や不満は負の結果を招きよせることを知りましょう。

人材育成については下記投稿もご参考ください。

人材育成とは

人材採用のまとめ

人材の採用と定着化は、企業経営にとって根幹をなすものです。離職による潜在的な損失は、ノウハウの流失だけではありません。連鎖的な離職や職場の雰囲気の悪化による生産性の低下を招く結果になります。不満があっての離職者は、口コミサイトで悪評を流すことも考えられます。

そうなれば、新規採用の大きな障害になります。社員との普段の関係づくりは、経営にとって常に課題であり続けます。人材採用と離職防止は、経営におけるかなめです。

最後に一番の処方箋を書きます。それは、経営者自身が心の底から従業員の成長としあわせを願うことです。

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